お友達
カーテンでのみ仕切られた部屋で、ある晩、僕に新しいお友達ができた。 彼はもじゃもじゃの金髪に赤い鼻、派手な水玉模様のサロペットに虹色のチョッキを着ていた。終始、楽しそうに笑顔を浮かべていた。 名前を知らないので、仮に「暗…
カーテンでのみ仕切られた部屋で、ある晩、僕に新しいお友達ができた。 彼はもじゃもじゃの金髪に赤い鼻、派手な水玉模様のサロペットに虹色のチョッキを着ていた。終始、楽しそうに笑顔を浮かべていた。 名前を知らないので、仮に「暗…
隣の部屋から、パチンパチンと爪切りの音が聞こえる。今の私にはそれすら疎ましく感じられた。毛布を体に巻きつけて、ふてくされて横になって、私は長いため息をついた。 喧嘩した。ことの発端は情けないほど些細なことで、犬どころかき…
五時半に渋谷で、と彼からラインが届いた。金曜日の夜の渋谷なんて、人混みがすごくてうるさいに決まっている。気が重かったが、断るわけにもいかなかった。彼から借りた傘を、今日こそ返さなければならなかったのだ。 黒のコウモリ傘。…
うずくまる影に隠れる彼岸花 ときめきは割れた栗たち破顔する 秋薔薇も僕も笑っていいですか かりがねを見送るだけの独り道 デートには死者に梔子の香水
しわくちゃの笑顔に結ぶななかまど 誰もみな孤独であるとカラス鳴く 蜘蛛の糸 夫婦の意味を問いかける ラグビーのルールを知らず酌み交わす 命日は忌念日らしい彼岸花
しっかりと暑さを惜しむ棒アイス 古本の隅に見つけた私の名 肉筆がむかしむかしのひとの癖 オルゴール僕を彼岸に導けよ プラタナス並木に落とす影ふたつ
1 こめかみがなんか痛むと思ったら背後で君が微笑んでいた 2 低気圧のせいにしようかなにもかも しばらく歩き出せそうにない 3 黒猫が忌み嫌われているように私が居ると薔薇も枯れます 4 苦しみをほどくことだけ考えて…
僕には夢がある この口からもうこれ以上 クロアゲハが溢れませんように 家に帰ってきた君に 「おかえり」を言えるように この口からもう二度と クロアゲハが溢れませんように 私には願いがある あなたがもうそれ以上 白い妄想に…
私が誰のことも笑わないのは 心優しいわけではなくて 誰かをあざ笑うときの自分の醜さを 思い知っているから きれいな言葉や 正しい行動ばかり求めていたら 臆病な自分だけが 水底に残ってしまいました 嘘つき。 嘘つき。 みん…
1 番号の中に私の誕生日が隠れてるからスマホごと好き 2 「嫌いだ」と口に出せれば大丈夫 その素直さで生きのびてゆけ 3 石ころは磨けば光るわけじゃない 輝きなんてただの傷あと 4 行列のできる店です みんなして腹…