洋燈
洋燈を持ってきてくれた人 優しすぎて傷の数え方すら わからなくなってしまった あなたを心から誇りに思う 失くすものなどなにもない そう微笑って火を灯した夜 失くすものを探そうとして 探すものがないと気づいた 気づかなけれ…
洋燈を持ってきてくれた人 優しすぎて傷の数え方すら わからなくなってしまった あなたを心から誇りに思う 失くすものなどなにもない そう微笑って火を灯した夜 失くすものを探そうとして 探すものがないと気づいた 気づかなけれ…
傷つくくらいなら 優しくなんてなくていいよと 伝えてくれた人が 襤褸を纏って笑っている 手垢のついた選民思想を 青い炎で燃やすと 楽譜が生まれる 傷つけるくらいなら 黙っていたほうがいいよと 教えてくれた人が 正気の狭間…
もぐら、その姿実にもぐもぐしい 穴掘って掘って埋もれて 夕暮れいつだかわからない 漢字で書けば土竜 強そうでしょう 強そうなだけなんです もぐら、小倉 おぐら さんちの庭に穴を掘る 土かいてかいて疲れて 夜明けが何処だか…
見上げれば半月が もう半分の可能性を殺しながら ぽっかりとろりと孤独を浮かべて 見下ろせば人々が 内臓と骨と血と神経を運ぶため あうあうと喘ぎながら歩いている 位置情報をオフにして Wi-Fiから逃れて 野鳥の飛影に目を…
まるである日出会ったみたいに 甘く、甘く、溶ける、 それが木曜日でありませんようにと 目を、逸らし、叶ってしまう、 夜になりたいと泣いたあなたの 横顔こそが秋驟雨で 夜になれないあなたと あなたになれない私とが 手だけ繋…
地球儀を強く抱きしめて 失くした星だけを数えて から笑うあなたのことを 私はもう許せそうにない あなたを許せない私を あなたは許してしまう そうして無難至高にて 風を感じているフリと 生きている真似事とが 上手になってい…
柔らかな裏切りを 生唇で受け止めて 虚しくなるだけで 上等だって笑えよ 風はまた吹くだろうか 遠ざかる記憶を手繰る 獣に堕ちたあなたの眼 もう一度くださいって 失うごとに欲しがって どこにもきっかけなど 落ちていないとい…
雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることができる人でしょう その…
コバルトブルーの夕暮れに凪いだ点 立ちくらみすれば許される気がして あなたもあなたもあなたも当然に点 染みといっても差し支えないだろう 真っ白なシーツを私が敷いたはずの 純然たる欠点といってもいいだろう あなたが目を閉じ…
値札さえ与えられず 都合の悪さを携えて 焼きたてのパンのことを考えている 春、魔物を産んでしまったから 古アパートでほどけた安い自我が フリースタイルで追われ果てた ずっと笑っていたのが私で そばで泣いていたのが私で 逆…