紅葉よ燃えて散るとは生き様ぞ 傘の帆に連なる露のきらめきよ 勇ましさ秋刀魚がどんとある夕餉 芒まで手を振り返す帰り道 三日月よふくよかな闇抱きしめて

枯れてまで寄り添うすすき風に揺れ 名を呼んでなお一人きり秋の朝 秋澄んで大丈夫だと膝こぞう 秋色のシャドウ明日は旅立ちよ なり代わり泣いてくれるか秋の蝉

星月夜平和こそ世の宝物 映えるほど虚しくもある毒きのこ 深呼吸明日は明日流れ星 夜学するひとのため息風となれ 朝露と輝く悔し涙こそ

風鈴を鳴らすそよかぜ捕まえて 髪の毛を束ねて恋よソーダ水 七日目の蝉が喚いて日が暮れて 雷鳴よひととせ待つか想い人 虹を見た午後にとなりで笑うひと

金魚玉梳かれる髪のきらめきよ 公園に休符遊ぶか夏祭り 夏の星いのち巡ってまばたきよ 不可逆か月を睨んでアゲハ蝶 笹舟に託す吾子の灯ほたるとぶ 夕立がなぐさめとなる帰り道 三拍子最後の電話精霊馬 怪談か…

甲子園

球児たち勝ち負け越えよ甲子園 ひざの泥勲章として誇る夏 去る者を称えよここは甲子園 白球が運ぶ真夏の意地と意地 甲子園負けの味こそ財産ぞ

盛夏

蝉時雨どこに終止符置くべきか 祈りの日したたる汗のきらめきよ 後悔をしてこそ響く遠雷ぞ 夢さめて氷水飲む喉もとよ 午睡してバナナひとくち平和の世 手土産のメロン切る母の破顔よ

窓際でひとり手遊びレモン水 ラムネこそ恋のはじまり告げる味 サイダーを舐めて慄く三毛猫よ 陽光にゼリーを透かす茶色い目 手つなげばアイスも意地も溶けてゆく

初夏

プレリュード移ろいゆくか夏の雲 リグレットつばめよ高く飛んでゆけ 皮膚呼吸フットネイルで思い出す アミュレット摘まれる前に散るかりん アンテナが手折られていま入梅か

初夏

泣きぬれて色づいてゆく紫陽花よ 虹を待つひとに届くかラブレター 梅雨寒よ寂しさと手を繋ぐ夜 夏の風そろそろ前を向くときか トマトこそ恋をしている子の実り