晩秋のカニ

1 コンビニで肉まんを買ういつもの儀式のように冬が近づく 2 道端に冷えたコインが落ちていて寂しくなっていいのだと知る 3 1プラス1が2になるとき0はレゾンデートルを探しはじめる 4 くちびるをくっ…

のど飴

1 のど飴をくれた人から幸せになれる仕組みを早く作って 2 口当たりのいい言葉を多用する優しい人を見たことがない 3 自己犠牲という言葉を知らずとも「みんな違ってみんな」がそれだ 4 誰かさんの機嫌の…

イルミネーション

1 まんなかにふたりの指が交差して寂しさ埋めるイルミネーション 2 街角のイルミネーションまた少し息が苦しい綺麗なだけで 3 明滅のイルミネーションに隠れて笑ったきみの出すSOS 4 広告によく知らな…

霜月

1 心にも花が咲くとはいうけれど根を張る場所を誰も知らない 2 踏切の赤いランプが明滅に溺れるたびに仔猫がよぎる 3 桜などモブでしかない霜月の街路にひとり佇む天使 4 そのままのあなたでいいと言われ…

きみのとなり

1 行き先を知らないバスに乗るようなきみのとなりで過ごす日常 2 いつかまたきみが壊れてしまったらリビングの薔薇を新しくする 3 美学には程遠い場所にある生き様をどうか笑っていつもみたいに 4 駅前の…

空が青すぎた日

1 青空はとうにふたりを見放して気づけば秋も過ぎ去ってゆく 2 泣いたなら強くなれるの仰ぎ見た空にひとつも雲はいなくて 3 いい天気あまりに今日はいい天気きみが堕ちても気づかないほど 4 すずかけの葉…

初冬

1 まだ指で疵を数えている人に初冬の風は容赦なく吹く 2 吐く息が白くなったら人々は大事な人を想うのだろう 3 あんまんを分けあう人がいたとして基本的には一人で食べる 4 泣くこともできずに心凍らせた…

晩秋

1 流行に乗り香水を買ったけど自分のせいにされたくはない 2 散り終えたあとの枝にもブランコの紐が括られ少女が遊ぶ 3 あたためたミルクに張った膜ひとつ曖昧なまま破る真夜中 4 金魚鉢ひとり寂しくない…

天気雨

1 いつの日かわかりあえると信じてもブルーブラックインクは滲む 2 私から嫌いになると思うからもう少しだけここにいさせて 3 おやすみがうまくいえないまた明日会えるはずだと信じられずに 4 ジュテーム…

コンビニ

1 このおかずあたためますか?と訊かれてお願いしますと涙ぐむ夜 2 新作のスイーツ登場またひとつ我の行手を阻む刺客め 3 同じ色同じカロリー同じ味 棚に並んだドリアの小海老 4 午前2時になるとひとつ…