コーヒー

1 ブラックに口をつけたら短めのワンピを着てもいいと思った 2 溶けてゆくミルクを混ぜることもなくひとつになるのをじっと待ってる 3 いつも朝にきみが淹れる一杯は視界を明るく照らすルーティン 4 切り…

1 もしきみが降ってくるなら曇天も悪くはないな(傘はいらない) 2 新しい傘を買った日誰よりも雨に焦がれているワンピース 3 うろこ雲のしっぽ目で追う横顔をずっと眺めていようと誓う 4 もしきみが雨予…

ピアス

1 まだなにもわかっていないことだけはわかったそんな気がするだけだ 2 すごろくのあがりのマスのすぐそばにふり出しに戻るマスがある 3 コスモスの花冠に触れたくて触れたら朽ちるそんな関係 4 白鳩の羽…

沈黙

1 赤い羽根飾ったひとの何割が鳥の痛みを思うのだろう 2 いっせーの、でジャンプをしよう二分後に特急新宿行きが来るから 3 テーブルに並ぶナイフとフォーク見て「切って刺す」って呟いたきみ 4 花束と拳…

ドーナツ

1 ドーナツの穴をのぞけばその先にいつも通りに壊れてるきみ 2 食べかけのドーナツでいい差し出せるものはなんでもきみからほしい 3 腕時計だと思ってたよく見たらちっさなオールドファッションじゃないか …

恋人

1 きみの住む街へと進む各駅に乗り換えるとき降る三連符 2 特別じゃなくてきみにとっての当たり前になりたいだけです 3 秘密って甘いにおいがするんだね「ごめん」だなんて通用しない 4 なにごともなかっ…

わがまま

1 わがままを許してくれた夜のこと永遠にして胸に沈める 2 きみの目のなかの私はなぜかしらいつも寂しい顔をしている 3 トンネルを抜けてはじめて助手席のきみの涙の意味がわかった 4 秋風は出せずじまい…

唐揚げ

1 花ひらくそのモーションは容赦なくあたしを奪う 誰か助けて 2 優しさが崩れる瞬間(とき)に口走る「ごめんなさい」は脅迫として 3 朽ちた枝さえ必要とする虫がいる 生きるばかりのあたしよりもだ 4 …

蝶々

1 蝶々がひらりひらりと好き・きらい 占うためにむしりむしりと 2 命とは思えないほど美しく命とは思えないほどに儚い飛翔 3 翅があればどこでも行ける気がしてた虫かご埋める元いのちたち 4 薔薇さえも…

星くず

1 (さよならを忘れたみたい)奇遇だね僕もどこかに落としたみたい 2 曇天を裂いたひかりをこめかみにあてて神さまごっこする午後 3 いつの日か同じ家路につけたなら今日の痛みも記念としよう 4 コーヒー…