カテゴリー: 短歌
待合室
1 剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る 2 看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ 3 金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう 4 癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい…
灰
1 月蝕を隠した雲の優しさに気づいた人からほどかれてゆく 2 あの蝶があなたのような気がしては右から順に手にかけてゆく 3 動かない時計の針に触れているあなたのために水汲みにゆく 4 好きという呪いがとけてしまっても一緒…
短歌 東京
1 阿佐ヶ谷の次は荻窪 正しさはレールの上の幻想として 2 生き方のハウツー本を手に取って泣けてきたなら間違ってない 3 今踏んだ蟻にも命があったことちゃんと忘れて生きてゆきます 4 線路から飛び立った鳩 間に合った鳩 …
ソーダ水
1 土曜日は海を見に行く大丈夫大丈夫って波が鳴くから 2 好きなひとのいちばん嫌なところまで好きになるってありなんですか 3 更新が止まったサイトで何年も明滅をする「新着!」の文字 4 ソーダ水に指を埋めれば(そんなこと…
短歌 事件
1 あなたではない人だから遊園地なんて爆発すればいいのに 2 私さえ気にしなければこの式はとても素敵だ(あああ気になる) 3 落とし穴を作る人は悲しいね誰かが落ちるのが成果だもんな 4 他人事は他人事だけど対岸で火事がお…
短歌 あれ
1 罪のない嘘をついても嘘は嘘昨日の自分はいつもかわいい 2 メロン入りメロンパンってありますか?何か不都合がありますか? 3 現代に介錯人がいるのならあの子の部屋に届けてあげて 4 長文のLINEに既読がつかないそろそ…
短歌 静脈
1 ハミングをしても針に糸を通してもまだ永遠を編めないでいる 2 電車とは走る棺かもしれない 祈りを添えて朝が生まれる 3 眼球にきみが映ると寂しくて瞬きするの忘れてしまう 4 選択をしなかったほうの道にだけ咲く花がある…
短歌 街
1 細胞が分裂をするときの音に耳を澄ませて生きております 2 やめてって言えば言うほどお願いが叶うんだって知ってた?(やめて) 3 東京に特許許可局はないことを悲愴なこととして伝える土鳩 4 人びとはすでに桜を忘れたかス…
短歌 四月馬鹿
1 遊びではなかったと知り組んだ手がほどけなくなる児戯プレイング 2 結ばれず熟れゆく月が溶けるときうさぎの声でるるらと叫ぶ 3 きみはきみだけを信じていればいいなんて嘘なら私がついた 4 懐メロを口ずさむ私のとなりで壊…