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ポインセチア

迷妄をさらけ出した空は
雲をさらって落暉を隠す
真冬に凍える部屋の隅で
漸くまぶたを開いたのに
光を求め扉を開けた途端
冷たく降り注いだ視線が
私の脳天をずんと直撃し
紅い徒花を咲かせるのだ

私の思考はやがて白濁し
流転する感情が目の前で
あられもない迷彩を映し
色彩を失った掠れた声で
何度目かも知らない幻と
虚無が支配する夕まぐれ
窓ガラス越しの風景には
訥々と存在する街の灯り

競合し続ける歪んだ視界
目 目 電球 星 目目
モノクロだけが正しさだ
かりそめこそが真実だと
教えてくれた人が今もう
新宿駅南口でぐるぐると
電飾を全身に巻きつけて
烏兎を睨め付けては踊る

もう楽しいことしか起こらないのだ
私の脳天に咲いた花にさえ名があり
都営新宿線のなかでカップルがふと
ポインセチアは綺麗だねとこぼした
綺麗だけれど綺麗なだけは嫌だねと
微笑みあった交情を見届けた私には
喪心の証明がどうしても必要なのだ
神さまの過ちを心待ちにする資格が
免許が権利が筋合いが私にあるなら
それらすべてを焼却炉に放り投げて
何事もなかったように手を合わせて
さようなら、の言葉を添えて脳天の
ポインセチアごとメリークリスマス

心優しい人から踊りだす
電飾まみれの阿呆として
通りすがりの烏兎たちは
綺麗ね 綺麗ね ああはなりたくないね
目 目目 真実なんて何処にも 電球目
どこにもいない私のポインセチアを見て
なんなら幸せだなんて自称さえするのだ
頭賢しい人だけが居残る
地球はどんどん鈍麻する
誰も烏兎の姿を知らない

綺麗ね 綺麗だね
でもそれだけだね
誰でもいい 早く
私のポインセチア
否定してください