まんまる

私は浮かんだことがある 心を逃した先に居た 完全な球体と一緒に 美化されがちな夏アルバムの 読み飛ばされる一ページに 名前を与えられることもなく 極彩色のクレヨンで塗り潰された ちゃちな汚れ 神さまの…

今日の短歌 見殺し

1 考えてしまうここまで生きるためお前わたしは何を見殺しにした 2 気にしない人の噂もゴシップも落ちゆく砂が止められたなら 3 来年も旅行をしようそのために貯金をしなきゃまずは点滴 4 猫は猫スマホを…

今日の短歌 コンビニプリン

1 缶ビールひとつ分けあう連休にはだしになって夏待ち伏せる 2 カレンダーめくり忘れてループして四月に封じこまれたふたり 3 ピリオドを消し去りたくて加速する空も泣いてる夜のドライブ 4 昼寝するとな…

今日の短歌 錠剤

1 花束になれない花だけを集めるきみの帰りをベランダで待つ 2 紫陽花が雨を呼ぶ午後 日曜にディミヌエンドのペダルをかけて 3 「ただいま」をふたりの部屋に灯すため星のあかりを連れて帰った 4 錠剤に…

今日の短歌 史上最低

1 紫陽花の抱く雫が涙ならきみが泣いてるわけは問わない 2 月光にランプシェードが揺れる夜わかりあえないからそばにいる 3 まだ帰りたくない駅に続いてる信号機みな赤で壊れろ 4 留守電にいまだに残るき…

今日の短歌 くるぶし

1 この下になにが埋まっていてもいい月下美人が無事に咲くなら 2 短冊に書いた願いは「わがままはわたしにだけ言え」というわがまま 3 花火背に少し浮き出た頬骨をなぞると髪をなぜてくるきみ 4 半額のシ…

今日の短歌 予感

1 甘噛みのあとで目が合うカーテンを揺らす涼風だけが知ってる 2 火の揺れるのを見つめてる予感とはたぶんあなたのまばたきのこと 3 ろうそくの火を吹き消してさよならは夏に対してだけ告げたはず 4 水槽…

今日の短歌 ポルボロン

1 手放した風船高く消えてゆく傷よ痛みよ光に溶けよ 2 三連休しずしず過ぎるできたての口内炎もちゃんと愛しい 3 愛なんて口走ったらポルボロン奇跡も嘘も必然のうち 4 からっぽの金魚鉢にも茜さす香りの…

今日の短歌 おやつにしよう

1 寂しさに果てる夜もあるいちかけるいちが2になれないせいだろう 2 深爪は自傷行為かサイレンが近くで鳴る夜は迎えに来てよ 3 虫の音と奏でるきみのひとりごとうわごとねごと心臓のおと 4 ただ空が美し…