今日の短歌 温泉の素

1 白鷺が羽を休める空の下ぽーんと琥珀糖を頬張る 2 らしさってなんなんだろうモミの木に願いを書いた短冊は揺れ 3 正解はつまらないから満点のテスト用紙は折り鶴にする 4 かじかんだ指で画面を滑らせて寂しいよって伝えたか…

今日の短歌 ガラケー

1 新宿に向かう列車の沈黙をハイジの歌で破るガラケー 2 届かないメールをじっと読み返す誤字脱字がなくてさみしい 3 野良猫は忖度の対義語として尻尾ふりふり堂々歩く 4 猫の目を主治医に向ける診る者は見られる者と心得てお…

今日の短歌 背表紙

1 しねという二文字すべて「すき」にする魔法ならもう使えるはずだ 2 やっぱりね オカネで愛が買えなくて震えているのマナーモードで 3 青春の答え合わせをするふたり箱に潰されなくてよかった! 4 焼き肉の最後にガムを渡さ…

今日の短歌 無限キャベツ

1 「従順」は貶し言葉と気がついて飼い犬に名は与えなかった 2 「花束は枯れていくから嬉しいよ」無限キャベツを食みつつきみは 3 実験は成功したとされておりマリネにされたタコと目が合う 4 消えていく傷もあること新月の満…

今日の短歌 あ、ほら、

1 近いうち人工知能は失恋や死別を歌うがくしゃみはできまい 2 弾けたらオシマイだから風船を心に喩えるのはやめてくれ 3 食べるときじっと見てくるどうしたのって訊いてもたぶん気にしてなくて 4 昨日の灯がもう懐かしくフレ…

今日の短歌 そうですね

1 人類へ 終わりを識っているのならせめて美学は己で紡げ 2 拍手ってうるさいじゃないみんなして手を叩くのってうるさいじゃない 3 言い当ててしまえば終わる恋だから鳥籠だけは空にしておく 4 好きすぎておかしくなるのすご…

今日の短歌 サブスク

1 会いたいね そうでもないかサブスクでとりま細川たかしを探す 2 メントスとコーラで祝う誕生日あの子にもあったはずの誕生日 3 人間の都合など意に介さずに咲きたいときに桜は咲いた 4 あ、枝毛。あまりいろいろ気にしても…

今日の短歌 すべりだい

1 もう散るね とっても嬉しそうなきみ終わりってそう、救いだからさ 2 ピカピカの一年生かおめでとう今が一番輝いてるよ 3 すべりだい滑り落ちてく楽しさを大人になっても忘れていない 4 読まれずにほこりをかぶる美味しんぼ…

今日の短歌 たぶん犬

1 たぶん犬じゃないかなそうじゃなかったらあの鳴き声は通報案件 2 あの人はいずれ教祖になるだろう履歴書にそう書いてあったし 3 誰か見てきたんだろうか恐竜に水玉描けば修正される 4 定刻にわたし以外の声が沸く 喝采、喝…

今日の短歌 これは杖

1 結局はイオンモールに行くきみとヴィレヴァンがない街に住んでる 2 名言を残そうとしてうわすべる下心ってベンゼンくさい 3 ハトサブレ血走った目で睨んでも好きだから割る美味いから食う 4 「ゲームだよ」殺人犯の声色でぷ…