今日、彼と井の頭公園に行きました。
彼は怯えていました。昔、この公園では花壇から小指が見つかるという事件があったからだそうです。どうも、バラバラ殺人だったみたいです。
せっかくのデートなのに、彼は小指のことを考えていたのです。どうにも私は嫉妬心を止められず、キスをするふりをして彼の小指に噛みつきました。すると、彼は一瞬だけ驚いた顔をしたものの、すぐに手をほどいて私の髪をなぜました。
散歩の途中、ベンチで座ったまま身動きしない男性を見つけました。死んでいるのかしらと冗談を言ったら、彼は首を横にふるふると振りました。その動作が動物園のペンギンに似ていたので、私もよちよちと歩きました。
公園を一周したころ、手先も冷えてきたので喫茶店に入りました。彼はマンデリン、私はアールグレイを注文しました。彼はしなやかな指先でスプーンを持ち、ミルクをかき回していました。私はそのミルクになりたいと言いました。
あなたにかき回されて、そのまま飲み干されたいと。
自分の嫉妬深さに呆れるばかりです。今夜は、私もポインセチアの隣に植わった小指のことを考えようと思います。そうしたならば、きっとよく眠れましょう。