1
春だから泣いてもいいと告ぐひとは泣く原因になっているひと
2
脚光を浴びることなく散っていく白木蓮の手向てむかう季節
3
雨粒がみんな音符に化けるなら泣いても歌に聞こえるはずだ
4
ベランダに花びらはらりきみからの便りと気づき仰ぐ曇天
5
耳たぶに花びらの降るふれられてクラクションさえ無視し続けた
6
桜舞う夜に思い知るああ既にきみはきちんと僕の傷あと
7
日々だった紡いだ息もあやまちも月がきれいと伝えるための
8
のびすぎた前髪ゆらす春風にああ、呼ばれたと侵されるきみ
9
失ったものを数える指先で首筋のあと花びらに沿う
10
ターミナル駅の静けさそれぞれの帰る道々照らす夜桜