今日の短歌 いのち未満

1
綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り

2
開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう

3
「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く

4
医院から出てきた人と目が合った春陽がさして首を縦に振る

5
満月を待つベランダで仲直りきれいだねって月のほうかよ

6
喧嘩して仲直りして喧嘩してまた仲直りできるチャンスだ

7
一週間十日くらいはあっていい風・銀・花曜を休みにしよう

8
東風を我が身に強く抱き歩き出す痛みとともに優しいほうへ

9
生卵いのち未満と決めつけて割り掻くひとの細胞分裂

10
新宿へ向かう列車の最後尾 は、る、と口にし小夜風を待つ