短歌 あの頃

1
胸深くうずめたはずの黒歴史優しい他人ひとが掘り当ててきた

2
教科書の隅のパラパラ漫画では上手にいったはずの告白

3
カニカマを蟹と信じて生きていた11歳は幸せだった

4
爪を噛む癖が治ったあの頃に確かに何か失ったはず

5
皮肉って皮と肉だと思ってて今でも飲み屋でよく口にする

6
近ごろの若いもんはと言われても若くないから困ってしまう

7
湯豆腐の良さがわかってしまったらピアスホールはもう増やせない

8
太陽も月も地球も我が物と知らずに光っていたスコートは

9
口笛がうまく吹けた日嬉しくて誰にも言えず秘密が増えた

10
あの頃は、なんて語れるほど生きてきたんだふたりほら笑い