今日の短歌 錠剤

1
花束になれない花だけを集めるきみの帰りをベランダで待つ

2
紫陽花が雨を呼ぶ午後 日曜にディミヌエンドのペダルをかけて

3
「ただいま」をふたりの部屋に灯すため星のあかりを連れて帰った

4
錠剤に向ける視線の邪魔をする きみが見るべきなのは私だ

5
ソーダ水こぼしたとたん「運命」を口ずさむきみ指揮するわたし

6
降り立ったホームでカーディガンを脱ぎ風に教わる夏への扉

7
金曜日「がんばりましたで賞」獲って笑ってかわすふたつのグラス

8
もし栞になれるのならそばにいてときどきふれてもらえるのにな

9
半袖のきみを見つけた改札で厳かにイヤホンを外した

10
はんぶんこしたコロッケの少しだけ大きいほうを牽制しあう