短歌 感じるために

1
あの鳩も夢を見ている飛べるはず飛べるはずって叶わぬ夢を

2
親指の爪に灯った三日月を噛んでふくめてきみを見上げる

3
未来から来たと言い張るおじさんが駅のホームで鳩に追われる

4
それで今あなたは飯を食えている私の傷に値段をつけて

5
味噌汁は毎朝つくる約束だきみが起きない土曜がきても

6
頬に風そのあと桜ああそうだ感じるために生きてきたんだ

7
夕暮れに風に誘われ遠回りいつもの街がダンジョンになる

8
この先に役に立たない記憶でもきみの寝言を忘れられない

9
唐揚げは冷めてもうまいできたてと遠い場所でも笑顔になれる

10
スプリングコートも邪魔になるような鼻歌交ぜて花を見送る