短歌 いつものように

1
車両内全員がスマホを見ていて突然きみに会いたくなった

2
あの月が落ちてくるから大丈夫 今さら謝罪なんて要らない

3
花束のなかで最初に枯れるのが一番好きな花なのは何故

4
愛工大名電に似たアレなんだっけほらその昔使われたやつ

5
星がよく見えるこの街ならきっとふたりの地図を描けるだろう

6
雨上がり前を向き出す人々の間隙にいて閉じられぬ傘

7
悪口は言ったもん負け紫陽花が変な色でも好きになりたい

8
グッピーを真正面から見てしまいトラウマとして脳が処理する

9
ふたりではいられなくなる秋のことアンリ・マティスの絵に影がさす

10
梅雨入りかどうか気にする窓辺にはいつものように閉じているきみ