今日の短歌 遮断機

1 唯一になれなくなってそばにいるゆく夏の背に影を穿って 2 下を向く向日葵たちが淀みなく人間たちを睨みはじめる 3 上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言 4 のびすぎた前髪揺れるきみのことあなたって呼ぶ…

晩夏の五句

ひぐらしに歩を止め祈る友のこえ 受話器から泣き声がして夏の果 はしゃぐ児の影を目で追う夕凪よ 引き出しの出せない文が秋を待つ 天の川いずれだれもがかえる場所

アルペジオ

高校生になって創作をはじめた。「ことばのねいろ」という詩歌の投稿サイトに「翅音」名義で自作の詩を投稿しはじめて半年、はじめて自分の作品に「ポイント」がついた。ポイントは作品が良いと感じたときに、サイト登録者が付与できる仕…

あうええ

むら雲が機嫌を損ねはじめた 夏の終わりのはじまりだ あうええ ときみの唇が動く 八月が今年も終わるそうか たすけてって言えずに 子どものふりをしたんだね なにもかも知っていながら きみのためにできたことといえば 風鈴とい…

今日の短歌 屋台の金魚

1 マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ 2 チョベリグを連発してたパイセンの当たり前田になりたい ぴえん 3 The Beatles ならば死なない流行語墓場でかかる Let It Be 4 KYがつい…

今日の短歌 扇風機

1 懐メロの範囲が違う焼き鳥のたれ塩割れるそれでもふたり 2 アイスティーに注いだミルク溶けるのを黙って見てたふたりで見てた 3 手放した風船高く消えてゆく傷よ痛みよ光に溶けよ 4 差し出した傘を受け取るきみの手に触れよ…

その夜のシャワータイムは

神は細部に宿るといわれる。だとしたら、今朝発見してしまった枝毛にも、神は存在しているのだろうか。 帰宅して、スーパーで買った握り寿司を適当につまみ、そのまま惰性でシャワーを浴びる。ろくに磨いていない鏡に、ろくにケアしてい…

夏の五句

幽霊も踊るしかないフェスの夜 背伸びして後悔ののち夏休み 夕立ののちに手放す執着よ 青嵐それでも笑んでよいか問う 水玉を見つめる瞳もまた玉よ

今日の短歌 三連休

1 欠点を見つけるたびに嬉しくて流星を待ちわびてるふたり 2 「ぼく」じゃない一人称でうめくきみ すべて私のせいにしてくれ 3 三連休しずしず終わるできたての口内炎もちゃんと愛しい 4 ハーモニカ吹くみたく食むとうきびに…

拾い物

ついに蝉が鳴き出したようで、盛夏を告げる声が耳に入ってくる。彼はぎこちない挙動でベッドに横たわる青年の肩に触れた。 その手が胸元に滑りそうになるのを、彼は精一杯の自制心で堪えた。青年の寝息は穏やかで、よほどリラックスして…