短歌 足し算

1 三つ編みを解いた後のうねうねで女神の気分 きみをさきたい 2 ライバルにオールドファッションをとられて不機嫌なのも了解しました 3 僕は雨降りの日にだけ現れて君の背中を潤すかもめ 4 難しい言葉を知っているんだねハレ…

ざん、

もし明日晴れたとしても いつかの雨を私は忘れない 確かに明けない夜はないけれど 手が小さくてセーハがとれず 容易く絶望した夜のことも 日記には残っているから 正しい紅茶の淹れかたと マイナーコードしか覚えられず 下手なギ…

春202004

小包をほどく笑顔に春が来る 書きかけの恋文にひとひらの花 思い出の隅に映えるよチューリップ 少年の道しるべたれ春北斗 帰りみち綿毛を吹けば歌になる 日めくりとともに顔出す葉桜よ シクラメン三連符まで連れてくる 四月馬鹿い…

短歌 映画

1 ここまではフィクションですがここからをフィクションにするかはあなた次第 2 本当に白馬で来られたら困る甲州街道が渋滞するから 3 めでたしのその後が知りたくてパンフの裏表紙を陽光に透かす 4 シジミチョウ捕まえ瓶に詰…

短歌 辞書

1 「雨が降る」と引くと「苦悩する」ことと同じと載ってる辞書がほしい 2 宇宙とはただの奇跡で偶然でそのくせ等しく必然らしい 3 真っ白なパレットに広げた白色の絵具の行方を知りたくて切る 4 なんだってわかるのスマホさえ…

短歌 卯月

1 四月馬鹿五月凡才六月に本気出すからそこで待ってろ 2 天井の蛍光灯の明滅を数えて過ぎる青春もある 3 「ピカピカの一年生」がなぜマイナーコードなのかがさっきわかった 4 友達を百人作れというのならあなたが先に手本を見…

翻訳教室

どの辞書にも載らない過分に素敵な翻訳教室、三月分の生徒の皆さんの努力の結晶の発表です。どうぞ拍手を! 「I love you」 ・あなたを愛しています。 ・月が綺麗ですね。 ・月は綺麗ですね。 ・月が綺麗ですね、それより…

しゃぼん玉

卯月の手前の日曜日、珍しく雪の積もった私たちの住む街は、少し怖いくらいにしんと静まりかえっていた。マンション四階の窓から外を眺めると、はらはらというよりはぼたぼたと雪が落ちて窓に打ちつけていた。 「うわー、季節外れ」 私…

のようなもの

剥き出しの記憶を眼窩からぶら下げ 気の済むまでぷらぷらさせたならば それが涙になるまで待ってひたすら ごめんなさいをリフレインしようか たくさんの手で解剖された認識が 優しい母の手で丁寧に調理されて 食卓へとスープとして…

アパハアパハアナアオセオ

桜の花びら舞う下で「おめでとう」と言われて以来、私は常に桜の散ったあとのことを考えているのです。ちっとも似合わなかった制服をやっと捨てられる、とつぶやいたら少しだけ寂しそうな顔をしたアンパン。それが好きだからそう呼ばれて…