卒業

1 卒業を脱出と呼ぶ傷だらけのきみを誇る人がいるから 2 「おめでとう」監獄からの卒業をみんなきちんと祝ってくれる 3 今どきは卒業証書もQRコードだといううわさを聞いた 4 振り向くなそこに希望など…

花る

1 もし花るという動詞があったなら視界はもっと色を知ってた 2 花れたら見えてる景色が違ってた近すぎるから枯れてしまった 3 教養の寡多を競った日々を抜けどれだけ花ることができよう 4 花としてあるい…

1 睡眠とスイミングとが似てるのはむかしむかしに魚だったせい 2 ぬめひかるうろこだらけのまるで春あれはためいきなんかじゃなくて 3 カーテンにきみの涙が遺ってて魚になったことの証明 4 左から振り子…

ひとりいちごつみ

1 カラマーゾフの兄弟の中巻だけを抜き取って夜に駆け出す 2 上巻の次は下巻と思ってたまさか中巻があるとは(春だ) 3 犯人は春風もじき盗むだろうわかれ道には梅の花びら 4 ついたてに阻まれていま僕た…

月明かり

1 月明かり寂しい人だけ乗るバスのエンジンになるあなたの涙 2 カーテンをはさみで引けば月明かりあなたの寝息聞こえてました 3 理由などあとからでいい今はただ月明かりのせいにしてさわって 4 曇天をと…

告白

1 干からびた蝶を燃やす火 忘れたら許されたのと同じことだね 2 カポエラかカポエイラかで揉めたよねシャペウ・ジ・コウロが告白だった 3 雨の日につけあった傷鮮やかに全治一生であれと祈る 4 (内緒だ…

共犯

1 観覧車ひりひり上がる 天国の一番近くで泣き出しそうだ 2 まだ誰も見たことがない症状を見せてあげますお部屋においで 3 セロテープを噛むと甘い 教科書に載ることだけじゃきみが見えない 4 テーブル…

か細い夏

1 ピアノ線よりもか細い夏でした 音階のない波を見ました 2 フロアからテナント去って白い壁 間違い探しの終わらない夏 3 犯人の名前かき消す蝉の声 悪くない人だけが泣いてる 4 PASMOには二十五…

速報

1 薔薇の咲くような笑顔でといわれてまずはまぶたをひっくり返す 2 プチプチを潰しています 世界から緩衝地帯を奪っています 3 靴ひもを結びなおしているうちに間を詰めてくる公園の鳩 4 (ラブソング)…

少女

1 ブランコを思い切り漕ぐ大人にはなりたくなかった つま先で蹴る 2 「ジュラ紀にもいじめが存在したらしい」「変わらない良さがありますねえ」 3 鉄くずが人工衛星だったころわたしもみんな大好きだった …