短歌 雪

1 絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく 2 春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪降り注ぐ 3 雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も 4 「極寒の雪国生ま…

短歌 冬

1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である…

短歌 雪の日のラジオ

1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 …

短歌 箱庭

1 そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか 2 こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない 3 夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時 4 映画にもカフェにも…

短歌 ひと

1 まだ夢を見ているのって笑うひとびとは夢に見限られたひと 2 渋谷系のひとは「渋谷系」って書かれたシャツは着ないよたぶん 3 ああそうかほうちって法治じゃなくて放置のほうか(だからくるしい) 4 三…

今日の短歌 Fマイナー

1 おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる 2 枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目 3 優しさの意味を辞書引くことはない花のあふれる街に暮らして 4 叫べたら壊れるこ…

今日の短歌 いのち未満

1 綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り 2 開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう 3 「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く 4 医院から出てきた人と目が合っ…

今日の短歌 ぽけっと

1 音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える 2 ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて 3 ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ 4 プリーツに八…

今日の短歌 街宣車

1 助手席の寝言に合わせアクセルを強く踏み込むきみの企み 2 それでいい 風を目で追う夕まぐれなんとなくでも生きているなら 3 街はもう桜を忘れあまつさえ市外局番まで気にしない 4 めでたしの続きをず…

今日の短歌 プラネタリウム

1 (「半額」のシールを貼ってくれるひと)待ち人はあと三分で来る 2 落涙に汚れた頬を抱きしめるそれは地図になるため流れた 3 正しさはただの抑圧このぼくはコーラをちゃんと振ってから飲む 4 靴紐を結…