今日の短歌 Fマイナー

1 おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる 2 枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目 3 優しさの意味を辞書引くことはない花のあふれる街に暮らして 4 叫べたら壊れることもなかったと軋む吊…

今日の短歌 いのち未満

1 綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り 2 開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう 3 「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く 4 医院から出てきた人と目が合った春陽がさして首を縦…

今日の短歌 ぽけっと

1 音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える 2 ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて 3 ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ 4 プリーツに八分音符をまとわせて風…

今日の短歌 街宣車

1 助手席の寝言に合わせアクセルを強く踏み込むきみの企み 2 それでいい 風を目で追う夕まぐれなんとなくでも生きているなら 3 街はもう桜を忘れあまつさえ市外局番まで気にしない 4 めでたしの続きをずっと紡いでく なんて…

今日の短歌 プラネタリウム

1 (「半額」のシールを貼ってくれるひと)待ち人はあと三分で来る 2 落涙に汚れた頬を抱きしめるそれは地図になるため流れた 3 正しさはただの抑圧このぼくはコーラをちゃんと振ってから飲む 4 靴紐を結び直してまた歩き出せ…

今日の短歌 きみとの暮らし

1 降り注ぐ陽光のなかほどかれる過去は過去だと捨て置けますか 2 舞い落ちるその一葉を目で追ってそのままふたり踊り続ける 3 終わりとは意味のあること秋楡に託す言葉を一緒にさがす 4 月までも凍える夜に寄り添ってホットミ…

今日の短歌 もういいかい

1 ペディキュアは夏へのとびらアスファルトを滑走路にして走り出す 2 きみでいい なんて真っ赤な嘘だったほんとはきみじゃなきゃだめなのに 3 横にしか首を振らない扇風機 冷えたゼリーにスプーンを挿す 4 もしきみが す …

今日の短歌 酸性雨

1 カーテンが窓辺に遊ぶ日曜にカウントダウンしてゆくいのち 2 願いごとまみれの笹を携えた子らに注いでいる酸性雨 3 新宿で辞書に載らない寂しさを遺棄するために息する僕ら 4 頑かたくなに閉じたこころがほどけだす夏だひか…

今日の短歌 うつつのきわ

1 降り注ぐ火の粉を数えているきみ正常なんて野暮な季節だ 2 ゆりかごを胸に置きざり泣きかたもわからずきみは大人になった 3 打ち上がるたびにこっそり見つめてたまつ毛の長いきみの横顔 4 お土産は大事な人を数え買う片手で…

今日の短歌 (猫がいる)

1 解のない問題文を与えられ((大丈夫))って繰り返してる 2 ようこそ に愛を感じる画面には淋しがり屋の顔が映ってる 3 八月が終わる夜にはそばにいて「もういいよ」って私を呼んで 4 これは秋それはまだ夏きみだけにぼく…