垂れ糸

~注意事項という名のプロローグ~ ※これは、虚構を重ねる言の葉によって紡ぎだされる小説の『一考察』に過ぎません。 ~第一章~ 文字という文字に踊らされ続けた とある作家が 辿り着いた一つの真実、 ある…

可哀想

情があるからこそ成り立つ舞台もあるでしょうに……。 情欲と情動の区別もつかなくなった憐れな貴方から昨晩、手紙が届きました。 以下、全文転載――――― 相変わらず飽きずに満たしていますか? 前提として「…

おともだち

カーテンでのみ仕切られた暗い部屋で、ある晩、ついに僕にお友達ができた。 彼はもじゃもじゃの金髪に赤い鼻、派手な水玉模様のサロペットに虹色のチョッキを着て黒い靴を履いていた。終始、楽しそうに笑顔を浮かべ…

Green sleeves

紅葉が燃えるような美しさに包まれる景色を窓から見た。しかし彼はその赤を「葉っぱの色素が死んだ物質の沈殿の結果」としか認識せずに、薄笑いをしながら鼻歌を歌う。それは確か、グリーンスリーブスという古い曲だ…

ふたり/中指

雪解けは終わりの合図、春 そしてきみは言うんだ 「はじめまして」って 笑顔が似てきたね、と藍子あいこに言われて以来、ときどき鏡に向かって笑ってみる自分がいる。よく夫婦は似るものだと言われるけれど、私た…

中指

より暗いほうを見ていたかった。闇の濃くて冷たい空間に視線だけでも逃してやりたかった。 LEDで照らされた京王線の車内、帰宅のラッシュアワーを少し過ぎた頃に、どうにか座席を確保し仕事で疲れた体を沈めると…

オリオン座と嘘と

オリオン座を寒空に見つけた。僕の中で、果たされない約束が白く凝固していく。日々は容赦なく流れていくし、時の波に押し流されて、若さとやらも既に失われつつあるようだ。 「愛情とは自らを定位置に投影するため…

ふたりの一週間 Colorful days go on.

ひとりとひとりとが出逢って、ふたりになった。孤独と孤独とを掛け算したかのようなモノクロの虚しさが、日々を重ねるにつれ、いつしか彩られていく。これはそんな、ささやかで、それでいてどこかが強烈にずれている…

虹を見たから

錠剤をヒートからゆっくりと取り出す。左手に載るのは、ラムネ菓子より小さな一粒。 彼は今、窓のない狭い部屋にいる。家族も恋人も友人も、皆が彼の自認を拒絶した。すなわち、「僕は神である」と。 当然ながら、…

花をちょうだい

花をちょうだい。貴方のかびろき胸に宿る、潮風に揺れる一輪を私に。 その昔、ここに人々が暮らしていたことを知る者は、もう私しかいないだろう。なぜ自分だけが取り残されたのか、そのわけを、私は今日も探してい…