連鎖

1 ホームドアのない通過駅で固める決意ありデートに遅れるひとが増える 2 ホームドアのない駅に街宣車突っ込むみんなのことを守るためだと 3 猿から進化したにせよずいぶんと生きづらい形を選んだものだ 4…

朝と灰

(1) 皆川先生が亡くなった。その一報をLINEで受けた夜、僕はタブレットにダウンロードした「ニューシネマパラダイス」を観ていた。トトとアルフレッドの熱い友情に名作の呼び声高い映画だが、僕にはいささか…

水曜日の午後、喫茶白鳩にて

しとしとと雨の降る夕まぐれには、決まって彼のことを思い出す。彼はこういう日にこの喫茶店に来ると、いちばん窓際の席に座って、ずっと外を見ていた。雨だれがガラスに打ちつけるのを寂しげに、しかしどこか楽しそ…

傘を持たない人

雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることがで…

加工

1 スカートを揺らす花風 死んだってAIがいるからもう大丈夫 2 「新宿で人身事故が起きました」他人事としてアプリを閉じる 3 パスポート渡航予定に天国と書けば窓口のひとが微笑む 4 Facebook…

1 捨てられるだけの尾ひれがひらひらと彼岸で我を手招いている 2 この街にかもめはいない錆びた目をひっさげ歩く魚ならいる 3 包丁のせなで弾かれゆく鱗きらきらとしてああ生きていた 4 包丁でずんと切断…

開花宣言宣言

値札さえ与えられず 都合の悪さを携えて 焼きたてのパンのことを考えている 春、魔物を産んでしまったから 古アパートでほどけた安い自我が フリースタイルで追われ果てた ずっと笑っていたのが私で そばで泣…

如月

1 モーションはスローでエモーションはリピートで若さは早送り 2 勾配のきつい坂道下るひと「ああ人生ってこういう感じ」 3 残高の0が減るたび天国が近づいてくる(そういう仕組み) 4 きみの傷、憂鬱、…

「は」

1 白シャツでカレーうどんを食べるひとだから私は惹かれたのです 2 真夜中にきみの寝言で目覚めても首を絞めたりはしないからね 3 おやすみは優しい響き また明日目を覚ましてもいいなと思う 4 あなたに…