味覚

寝過ごして出会う高尾の山紅葉 台風はため息までも奪ったか 生秋刀魚 次会う時が百年目 銀杏が隣で爆ぜて緩む頬 焼き鳥が旨いお店の名が花鶏 秋桜と生き急ぐのを競いあう 冬支度 母となれない虚しさと

石榴

口つけて炭酸水と航海す  石榴より私を噛んで今すぐに  梔子も噂話が好きみたい  校庭を朧月夜に睨んでた  このままで終われるものか山あざみ

いじわるだ くしゃみの数を指で折る  約束はしない孤雁の過ぎる影  愛もまた檻に化けるか青蜜柑  声がするほうを向いたら居待ち月  蜻蛉の儚い夢が永遠か

うずくまる影に隠れる彼岸花  ときめきは割れた栗たち破顔する  秋薔薇も僕も笑っていいですか  かりがねを見送るだけの独り道  デートには死者に梔子の香水

カラス

しわくちゃの笑顔に結ぶななかまど 誰もみな孤独であるとカラス鳴く 蜘蛛の糸 夫婦の意味を問いかける ラグビーのルールを知らず酌み交わす 命日は忌念日らしい彼岸花

枯葉

しっかりと暑さを惜しむ棒アイス 古本の隅に見つけた私の名 肉筆がむかしむかしのひとの癖 オルゴール僕を彼岸に導けよ プラタナス並木に落とす影ふたつ