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梅雨

雨音のスタッカートに踊る恋

ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく

濡れそぼり仰ぎ見る天のモノクロ

蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴

雨傘をくるりくるりとゆるむ頬

葉の裏のカタツムリこそド根性

長電話すっかり雨もやんでおり

ふくよかな母のてのひら梅雨の雲

きみの顔ビニ傘越しに観察ぞ

大雨ののち訪れる初恋よ

目を閉じてそれでも灯る蛍火よ

子のいのち託した蛍去ってゆく

雨傘の柄に重なったふたりの手

紫陽花にスマホを向ける老いた父

結ばれず自由を知った夏の蝶

クーラーのリモコン権が火種とは

よく冷えた瓶に頬寄せ笑う子よ

扇風機若さも過ぎた穏やかさ

舞い込んで我を癒すよ迷い蝶

汗をかくグラスに残したきみの名

わたしの初夏

【行事】

後悔も思い出であるこどもの日

背伸びした柱の疵に父笑う

母の日に贈る笑顔の花束よ

【時事】

距離を取ることもあるまい蛇苺

自粛してひとりでに舞うドーナツ盤

麻マスク手垢の意味を問い直す

【恋】

水玉の覚悟を決めたワンピース

水しぶきかけあい笑う仲となれ

ベランダに洗いざらしの恋心

【街】

風薫る信号機まですべて青

新緑よ街は鮮やかなパレット

ワイシャツの白も映えるよ交差点

【自然】

初夏の陽が許してくれる過去もある

我が憂い拭う若葉の健気さよ

風よ吹け命はここぞつばめの子

小包をほどく笑顔に春が来る

書きかけの恋文にひとひらの花

思い出の隅に映えるよチューリップ

少年の道しるべたれ春北斗

帰りみち綿毛を吹けば歌になる

日めくりとともに顔出す葉桜よ

シクラメン三連符まで連れてくる

四月馬鹿いいえ年中無休の恋

花冷えを言い訳にして逢いにゆく

空の下だれもひとりで花が散る

花吹雪すべて忘れてしまおうか

叶わない恋ならいっそ蝶となれ

草の芽とともに天指す無垢な指

花として歩いてゆけと祖母のふみ

いさかいも花の下ではほどかれる

たんぽぽをたんぷぷという子がひかり

ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜

あの人も雁と帰って一人飲む

桃の顔いわれ嬉しい褒め言葉

いぬふぐり踏まれても地を彩って

花吹雪すべて忘れてしまおうか

叶わない恋ならいっそ蝶となれ

草の芽とともに天指す無垢な指

花として歩いてゆけと祖母のふみ

いさかいも花の下ではほどかれる

たんぽぽをたんぷぷという子がひかり

ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜

あの人も雁と帰って一人飲む

桃の顔いわれ嬉しい褒め言葉

いぬふぐり踏まれても地を彩って

鷺の巣に手を伸ばしたらそよぐ声

春雷よ私の恋をごまかすな

東風を知り戻れぬ日々にただ涙

放課後の口笛とける春の闇

厳しさは優しさだった春一番

芽吹きとは前を向くための道標

寄り添うとすぐにほころぶ梅ときみ

遠い自由に憧れるしゃぼんだま

前髪を乱して笑う風車

風船をねだった日々に添えるうた

ぷっくりとふくれる頬と梅つぼみ

梅の香が考えごとをさえぎる夜

生き急ぐこともあるまい花の兄

目覚ましに梅干しひとつ受験生

手のひらに梅の花びら母わらう

ペンネームの由来にした春便り

からころと楽しい梅の花の散る

冬の梅こころのみなも揺らめいて

春告げる風が吹くから前を向く

梅の咲くわけはあなたのその笑顔

クリスマス

ろうそくを吹き消してまだ残る影

児の期待踏みしめておけサンタさん

クリスマス百点満点として笑む

ハズレなし優しい夜を引き当てた

雪を待つ人に届いてほしい歌

鈴の音が幻でもなお嬉しくて

微笑みもオーナメントだ木々揺れる

おばけまで笑い絶えない夜の魔法

賑やかに世界の確信犯となれ

いろいろが許せてしまうプレゼント

やせがまん モンブランまで敵とする 

口笛を聞いてくれるよ秋の雨 

もうドアを閉じてしまうね吾亦紅 

突き詰めて結ぶりんどうの紫 

お願いよ海猫帰るまでここに 

さよならがなぜに尊い藍の花

愚かさに輪をかけてゆく夕化粧 

欠けてゆくことも楽しい居待月

味覚

寝過ごして出会う高尾の山紅葉

台風はため息までも奪ったか

生秋刀魚 次会う時が百年目

銀杏が隣で爆ぜて緩む頬

焼き鳥が旨いお店の名が花鶏

秋桜と生き急ぐのを競いあう

冬支度 母となれない虚しさと

石榴

口つけて炭酸水と航海す 

石榴より私を噛んで今すぐに 

梔子も噂話が好きみたい 

校庭を朧月夜に睨んでた 

このままで終われるものか山あざみ