ピカピカ

ユニコーンを父に、ペガサスを母に持つアレクには、しかし角も翼も授けられなかった。兄弟たちはアレクを憐れみ、また疎んじた。しかし、父と母だけはアレクに惜しみない愛情を注いだ。そのおかげで、アレクはのびのびと育つことができた。

父母が神に請われて長い旅に出ることになって、アレクを取り巻く状況は一変した。守ってくれる存在がいなくなってしまい、アレクは兄弟だけではなく、他の神獣からも虐げられるようになったのだ。

青々としたものではなく、枯れかけた草を喰まされたり、水浴びの水に泥を混ぜられたり。それでも、父母の愛情が心の支柱となり、アレクはどんな目に遭っても、決して笑顔を絶やさなかった。

そんな姿を、見守っている者がいた。白い髭をふさふさにたくわえた老人の姿をした彼は、その日、神獣たちの暮らすオアシスに足を運んだ。

「じーさん、なんの用だい」

意地の悪い白鴉が老人に問う。老人は朗らかに笑いながら、「アレクに会いに来たのだよ」と答えた。すると、白鴉は「ケッ」と吐き捨てた。

「あんな役立たずにか。あんたもよっぽど暇なんだな」
「まあ、今時期はそうかもしれないね」

老人は、兄弟たちに囲まれているアレクの姿を見つけると、開口一番、「やっと会えたなぁ」と言った。アレクが戸惑っていると、老人はアレクのたてがみをそっとさすり、優しく微笑みかけた。

「わしは、お前を探していたんだよ」

美しい羽や鋭い角を持つ兄弟たちが、面白くなさそうに鼻息を鳴らした。アレクは小さな声で、「……どちらさまですか?」と尋ねた。するとその老人は、

「お前の新しい家族だ」

と答えた。アレクがぽかんとしていると、さらに老人は続けた。

「わしの名はニコラウス。神獣どもよ、わしは見ておったぞ。お主らがアレクにしてきた所業を」

兄弟たちも、白鴉も、黙り込んでしまう。

「年に一度、わしは世界中を駆け巡り、すべての子どもたちにプレゼントを配っているんだ

アレクはハッとした。

「え、それって……」
「暗い夜道はピカピカの、お前の眩しい笑顔が、役に立つのさ」

それを聞いたアレクは、ぽろぽろと涙をこぼした。

今年のクリスマスイブは、ぜひ夜空を見上げてほしい。トナカイに混じって、とびきりの笑顔で世界を駆け巡るアレクの姿を見ることができるだろうから。