1
唯一になれなくたってそばにいるゆく夏の背に影を穿って
2
上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言
3
マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ
4
影送りきみがみていた幻は他者が狂気と呼びたがる愛
5
アイスティーに注いだミルク溶けるのを黙って見てたふたりで見てた
6
扇風機に向かい声を発しててたぶん私の名を呼んでいる
7
懐メロの範囲が違う焼き鳥のたれ塩割れるそれでもふたり
8
蝉しぐれ耳を塞げど降り注ぐ夏の悲鳴に立ち尽くすきみ
9
夜風受け揺れる前髪を気にするふりをしながらきみ盗み見る
10
差し出した傘を受け取るきみの手に触れようとして轟く光