短歌 二月

1
傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ

2
泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風

3
花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは

4
ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼくたちがいた

5
傷あとはまだ傷だったあの頃の二月因果を知って悶える

6
性格の悪さと見た目が反比例するという仮説が膾炙する

7
ブレーキの音がきゅるりとたぶんあれ間に合わなかったバレンタインだ

8
解剖のあとに二月の吹く刺激がほしい刺激がほしい

9
春はすぐそこに来ている指先を舐めたら甘いまだ疼いてる

10
チョコレート溶かすみたいに如月を口に含んで秘密を増やす