1

はち切れる寸前の糸携えて一人ぼっちで微笑む真昼

2

屋根裏に取り残された人形が謙虚さを求められてぷっつん

3

サイレンが近づいてくるきみはまだ夢とうつつを彷徨っている

4

糸くずの存在価値はきみだけが傷の深さとともに知ってる

5

絹糸で吊るされている鏡の前で笑顔の練習をする

6

三つ編みをほどいたあとのウェーブは泡に還った人魚の名残

7

役割を失くした人形役割を失くした人とリビングに添う

8

絡まった糸ほぐすようきみからの「ごめんね」を待つ長閑な時間

9

意識とはか細い糸の集合体(だからきみのはほつれてるんだ)

10

運命の糸絡まってほどけないダブルベッドが海原をゆく