今日の短歌 ゼリー

1
積読があふれる部屋の隅っこで文字に溺れるきみを見つけた

2
十年があっという間に過ぎてって十一回目の秋桜を待つ

3
ガラス戸にさしこむ夕陽つかまえて囚われているのはきみのほう

4
なにごともなかったように続いてる線路の傍に咲く曼珠沙華

5
神さまに宛てて手紙を書いたのにどうしてきみのもとに届くの

6
「スプーンじゃないほう取って」で通じるそんなふたりをパスタも笑う

7
馬鹿にするよりされるほうを選んだふたり向き合いゼリーをつつく

8
優しさはときに寂しい十六夜の欠けゆく様が無音なように

9
「うん、いいよ」そこで途切れたやりとりのとなりで揺れる曼珠沙華たち

10
若かったそれよりずっと馬鹿だった落暉を何度見逃したろう