短歌 火へん

1
着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるもう後悔はない

2
孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい

3
窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね

4
灯火ともしびを絶やさぬように呼吸するきみの猫背が今はいとしい

5
もしきみが灰になるならそのそばで KONOYO NO OWARI 歌ってあげる

6
炬燵こたつまで住民票を移したい春になるまで籠城したい

7
禁煙を誓ったきみと十年目仕草は嫌いじゃなかったけれど

8
着膨れたきみを笑った爆発の数秒前と気づかないまま

9
「尋常性ざ瘡の炎症ができてさ」「…………ニキビって言え」

10
炒飯チャーハンのたまごをパラパラに作れるきみを尊敬できる幸せ