第二群  聖 夜

あっけなく更けていくクリスマスイブ。この日も、例にもれず消灯は夜9時だ。

「もうすぐ、面白いことが起きるよ」

晶子は麻衣子に言った。

「何が?」
「明後日になってみ。街中もテレビもネットも、一気にクリスマスを忘れるから」
「ああ……そうかもね。つまんないね」
「うん、つまんない」

二人は並んで歯を磨きながら、聖夜とは無縁の環境で、苦笑しあった。

「あーぁ、早く卒業したいわ、ホント」
「そうだね。できたらいいね」
「そうしたら、バイトして好きなもの買いたいな」
「何が欲しいの?」
「アレもコレも! 欲しいものが多すぎて困っちゃうわ」
「そうなんだ」

卒業できたら、の話ね。

「マックあたりでバイトしたいな。あ、でもあそこ制服が半袖だから無理か」
「そーだね」

つまんない。

そんな日常でも、愛しいと思える日が来るのだろうか?

少なくとも、箱庭にいる限りは、それはないだろう。ここはあくまで非日常であるべきで、安住していい場所などではないのだから。

ジングルベル、ジングルベル。鳴ったら鳴ったで、誰を待つ?