第六群 奇 跡

「白田先生。川を見たことはありますか」
「川? は、まぁ、いくらでも」
「恐らく無いでしょう。先生は、生きているから」
「工藤さん、それ、もしかして三途の川の話ですか?」
「世界で最も淀んだ、魂の還る場所。美しき人の面影を映した川のことです」
「へぇ。そんな場所があるんですね」
「ええ。新宿区に」
「へ? そんな近場に、ですか?」
「近いのに、遠い。まるで俺とユイの様だ」