短歌 涙を借りる

1
曇天にこっそり添えた針の月きみに見つかる前に帰ろう

2
このどこを裂いても赤い血が出るのだからあんまり笑わせないで

3
日曜日なんて金魚は知らなくて医院の隅でいつも通りで

4
愛の鞭だろうが痛いものは嫌っていうか愛は後付けだろう

5
缶詰の鯖をカレーにぶちこんだ骨が溶け切るまでかき混ぜた

6
眼窩には隠しきれない透明な殺意が涙を借りるきみだろ

7
笑おうよ絶望をする価値もない世界だ意志を持って笑おう

8
期限切れなめたけ瓶が二つ出たごめん、ごめんよ(割とピンチだ)

9
沈黙が何秒続くかでわかるきみがわたしを嫌いか好きか

10
ハードルをとにかく下げる。手伝ってもらうのも手だとにかく生きる。