セルゲイの遺書

この世界には二通りの人間がいる 星を産む者と星を食む者だ 欄干のない橋のような人生を それでも懸命に歩き続けた君の 震える背中を遊び半分で押した 白々しい者たちへ 僕が贈るべきものとは何なのか 夜空に…

年縛り

スマホを機種変したので アドレス帳を整理しました もう会わない名前たちを 一括で削除しました 未送信トレイに残っていた あけっぴろげな想いの残滓を 建前と共に飲み干しました 取り返しのつかないことだけ…

アナベル

気がついた時にはもう 血まみれではなかった しかしながら私もまた 命として立ち尽くして 何度も夕暮れを見送り 涙さえ流した夜もあり そのことをどうしても 忘れることは叶わない この街でこの星で 名前の…

阿部礼二は僕らを殺し続ける

何が起きた あの日あの時 風が吹いた あの日あの時 それだけだ ただそれだけ アジサイも萎れてしまった (何も考えるな) 鼓動は徹底的かつ正直に脈打つ そんなことはわかっていたのに 何を喚いて叫び求め…

リサイクル

あなたが教祖に転職したら 私が信者になってあげるね そんな冗談をケラケラ放ち 僕を慰めてくれたお母さん 何も信じられないから 信じられるものを自ら こしらえたいと願った たったそれだけの為に 舌を売り…

優しい窓辺に風鈴がひとつ

私は優しい世界しか知らない 仕舞い忘れられた秋口の風鈴みたいに 必要ないと笑われたものばかり両腕に 大切に抱えて暮らしています 夕焼けってあれさぁ 空は火傷してないの だってすごい赤だよ 空は痛くない…

【断片】 <思いつき>

誰にとっても了解可能な言葉に呪詛は宿らない だからあなたの唇はいつも乾いていたのかしら /いくら舌舐めずりしたところで 満たされることなどなかったね/ だから私は(as 虚しい抵抗)「これ」を並べる …

かけっこ

2019って素数だと思っていたから、ものすごく怖かったの。そこへ673で割れるって、だからあいつは素数じゃないって、教えてくれたのは通りすがりの三毛猫でした。語尾に「にゃあ」とか附いているのかと思った…

レインツリー

あなたはレインツリー 両手を広げて分裂する あなたはレインツリー 地球を抱きしめて干る なにもかも アイシテル のせいかな テールランプの明滅に 揺らぐ自我を投影して 脳内ではオルゴールが 逆再生でカ…

深海魚

宇宙が広いだとか 地球が丸いだとか そんなこと知らない 深海魚は 空の色を知らない そよ風を知らない 満月がほころんでも なんにも見えないから 目覚めを忘れてる 太陽がゲラゲラ笑っても なんにも聞こえ…