1

何回も同じCMの流れるリビングの隅に浮く金魚たち

2

夏祭りあやまちさえも彩りを増すか夜空の打ち上げ花火

3

真っ白なシューズをおろした夜なのに月が視界に飛び込んでくる

4

叫んだら許されますか良いことと悪いこととが混ざる地平で

5

黒鍵を強く押すたび罪悪感だけがクレッシェンドする夏の夜

6

今どきは燃やすんじゃなく削除する 笑顔の写真はツータップで

7

ペディキュアが少し剥がれた夜だから思う存分泣いたっていい

8

僕たちはみんな誰かの子どもだと疑わなかったあの夜までは

9

抱きしめてなんて言えないリビングの隅で金魚が浮いているから

10

もうふたり月のかたちを失って傷を夜空に嵌め込んでみる