短歌 シナプスと猫

1
もう一度絶望したいリスタートしてこそ見える景色が見たい

2
心臓に近づける耳わたしにはわたしの生きる理由しかない

3
遮断機は規則正しく排除する生きる予定の人と猫とを

4
照らされたファストファッションの看板倒れるのならこっちにおいで

5
慌てる、を泡てるとしてふわふわとつらい気持ちを愉しみましょう

6
恋人と呼べないきみの食べ残し平らげてみる 少し泣きたい

7
「らーめん」の四文字と格闘して自炊を選ぶ 褒めてください

8
夜道ゆく一人ひとりのシナプスが微弱に照って猫が横切る

9
閉店を知らせる曲を口ずさむ今日も恋人と呼べなかった

10
図書館で迷子になれるふたりならどこにいたって旅行気分だ