短歌 くらし

1
カーディガン濡らす秋雨改札で二本の傘と待っていたきみ

2
水たまり輪っか浮かんで消えていくのを眺めてるきみを眺める

3
雨のこと悪天候というけれどそれならぼくは悪になりたい

4
ぼくはね、と言いかけたまま沈黙にふたり沈んで雨を見送る

5
読みかけの本に挟んだ枯葉にはいのちの先の物語がある

6
トーストが2枚ずつ減る毎朝のあくびはテナーとアルトの響き

7
ときどきは叱ってほしい優しさがかえってつらい夜もあるから

8
「ご自由に」そう言われると自由には決してなれないぼくを笑って

9
まっすぐに帰りたくない夜があるきみがいないとひかるコンビニ

10
コーヒーとラジオがあれば優しさの意味に近づくふたりのくらし