夜明け

1 日に焼けたポスターの赤誰のせいにもできないニュース速報 2 諍いの声が聞こえる誰のせいだろう夜明けがこんなに遠い 3 論破って名前を犬につけましたどこへ行っても素直な論破 4 ヒンメリの影を指先で…

1 蝉時雨まだ許されていない午後伝う汗まで私を責める 2 わからないことがわかると宝物ひとつ失くした気持ちが実る 3 月まででいいから早く連れてって片道切符で構わないから 4 老いという現実はにび色を…

1 何回も同じCMの流れるリビングの隅に浮く金魚たち 2 夏祭りあやまちさえも彩りを増すか夜空の打ち上げ花火 3 真っ白なシューズをおろした夜なのに月が視界に飛び込んでくる 4 叫んだら許されますか良…

喪失

1 手鏡に向かい笑顔の練習を毎夜しているひとの屋根裏 2 喪ったひとを捜して鋲を打つ 二度とどこへも行けないように 3 ひろしたちひろしたちひろしのショパンは犬のサイズがやたらとでかい 4 マリー・ア…

1 凪を待つ蝶々みたいに呼吸する 明日いいことありますように 2 死にたさをまだ剥がれないかさぶたの下に生まれる皮膚は知らない 3 きみが今どこで誰と何をしているなんて知らない(西風よ吹け) 4 壊れ…

1 風上にきみがいるなら薔薇だけを選びはだしで走って向かう 2 鮮魚たち値引きシールが光ってる閉店間際のいのちの値段 3 無精卵ずらりと並ぶコーナーの裏で売られる生理用品 4 遺言が暗号で記されており…

馬鹿

1 四月馬鹿八月もまた騙されて拍手の渦に身を潜ませる 2 どうしたらいいかわからずどうにでもなれと引き金に手をかけた 3 リュックから長ネギがはみ出している彼の日常に差す黒い影 4 特急が見逃してきた…

関係

1 終わったら虹をみようと約束をしたのにすでに虹を見た顔 2 唯一の接点だった虹の根を残らず燃やすために微笑む 3 水たまりアドリブでしか暮らせない僕らを嗤うものだけが棲む 4 関係を問いかける声/続…

きみ

1 眠りからさめてまもなく迷子だと気づいたきみの見事なターン 2 風呂上がり湯気たつきみのくちびるがオペラをなぞる夏至の夜更けは 3 きみと手を繋ぐスクランブル 卵は手軽に割れるいのちだ 4 きみの目…

連鎖

1 ホームドアのない通過駅で固める決意ありデートに遅れるひとが増える 2 ホームドアのない駅に街宣車突っ込むみんなのことを守るためだと 3 猿から進化したにせよずいぶんと生きづらい形を選んだものだ 4…