オリオン座

今年も会えたね、夜空には無常以上に官能的なオリオン座。あらゆる逢瀬を見守っている。あるいは睨みつけている。

どんなに燃やしても消えないのは無責任な恋心。落ちたらみんな馬鹿になる、そういう仕組みだ、今も昔もこれからも。

街灯に群がる虫たちを見て、あなたはそれを綺麗だと言った。美的センスを疑ったけれど、すでに滅びた星の光を礼賛する神経のほうがどうかしている、と。

優しいママがシチューを作って待っている、なんて食卓はもう二度と戻ってこない。木枯らしが容赦なく吹きつける愚鈍な体には、命未満のサムシングが歌を歌う。オールユーニードイズ、ブロークンコンテクスト。

もし私が死んだら、と言いかけた私の首を全力で絞めてくれたね。嬉しかったよ。

オリオン座が全部見ているから、安心していい。どこでなにをしようと、なにもかも見られているから。

私が死んだら、間違ってもあなたではなくてオリオン座の隣に添えてほしい。そうしてずっとあなたを見守ることができたなら、その時私はようやく幸せになれる。

なんだ、泣いてるの。堕ちきってしまえばもう、這い上がるしかないでしょうに。馬鹿なんだね、本当に。

カタン、コトンと星があなたに降り注ぐ。あなただってそれを望んでいる。欠けたオリオン座だったそれは、新しい名前を与えられて、結局新しい星座図鑑に載る。

もし誰かが星になったら、そのことだけを条件に、愛されるのだ。人びとが滅びた光を称えるように、いいひとだったよねって。

いいひとだったよねって。