posted on 2024.11.3

短歌 誘蛾灯

1 見守っているとあなたは仰るがそれは見張りとどう違うのか 2 パレットに黒と白しかないなんてその身に巡る血を思い出せ 3 素数より美しいものを知らないこの人生は上々である 4 誘蛾灯ぜんぶ折ってもいいですか許可されなく...
posted on 2024.10.25

今日の短歌 フォーマルハウト

1 靴下は片方なくすと気づくでしょ素足を寄せるこの音が好き 2 スイッチは軽い気持ちで押しましたまさか全員消えちゃうなんて 3 「愛だよね」確認された瞬間に愛じゃなくなるなら愛じゃない 4 鼻唄は洗濯機にも伝染し土曜の昼...
posted on 2024.10.18

今日の短歌 説明責任

1 万華鏡 説明責任から逃れ数字となった人々の夢 2 飼っているインコが死ねと言い出した取り返しっていくらでつくの 3 平準化された笑顔で渡される林檎を嚙る芯はへし折る 4 人の声じゃないといいねあの家はペット禁止のはず...
posted on 2024.10.18

今日の短歌 アルゴリズム

1 カレー屋の屋号が変わった気がしててチェックのためのバターチキンだ 2 新宿のエスカレーターのくだりに終わりがないと思わなかった 3 各停はだめなわたしをだめなまま古書とカレーの国へ導く 4 踊れないアルゴリズムはリズ...
posted on 2024.9.30

今日の短歌 二の腕

1 「守りたい」「壊したい」とで揺れているきみの二の腕なんか冷たい 2 殺されるならほっぺたにいい歳をしてケチャップつけたきみがいい 3 ライオンは生存のためだけ殺すいのちの価値を知っているから 4 カレー屋の屋号が変わ...
posted on 2024.9.15

今日の短歌 白鷺

1 許されていたと気づいてあの頃の自分にかける「大丈夫だよ」 2 嫌なことばかり目につく金曜は好きなケーキを買うべきである 3 「死にたい」と「死ぬ」の間に横たわる遥かな川を白鷺が征く 4 道端に落ちたザクロを踏んづけた...
posted on 2024.9.14

今日の短歌 ちゃんとすごいよ

1 美化されず今日まで共に在った傷こころははだかちゃんとすごいよ 2 反抗をしない者だけあたたかいスープが飲めるここは東京 3 真夜中にこっそりチョコをくれた女性ひと「早く出てきな」お元気ですか 4 正当化事由に貼った付...
posted on 2024.9.14

今日の短歌 猫の目

1 好きだから好きと伝えただけだからそんな無難な目を向けるなよ 2 猫の目に大した意味に映らない見た目ばかりが整ったもの 3 叫びたい衝動よりもそのあとの疲労について話しましょうか 4 間違えるのがそんなにも怖いのか深夜...
posted on 2024.7.30

今日の短歌 クラクション

1 クラクション 猫よりきみが驚いて非日常へと逸れる側道 2 ひどい雨ひどい青春ひどい傘 だってすべてが美化されるから 3 筆箱の隅にくしゃりとパンダの絵いつかどこかで使った切手 4  変なひとばかり周りに集うのはわたし...
posted on 2024.7.28

今日の短歌 お探しのページは削除されました

1 履歴書の特技の欄が埋められずますます自分が好きになった 2 「気車」じゃなく「汽車」なんだって知ってても「×ばつ」を書き足さないといけない 3 殺したいとすら思わず切先を滑らせてほら美味しい刺身 4 舌足らずな伝え方...
posted on 2024.7.27

今日の短歌 変わらない日々

1 コンビニでアイスを買ってダッシュしてふたりの夏はそれでも溶けた 2 ケンカしてそっぽを向いた夜なのにJUNKのせいで笑うしかない 3 前髪を切っても気づくきみじゃない目くばせしてもウインクされる 4 自転車のカタログ...
posted on 2024.7.20

今日の短歌 見殺し

1 考えてしまうここまで生きるためお前わたしは何を見殺しにした 2 気にしない人の噂もゴシップも落ちゆく砂が止められたなら 3 来年も旅行をしようそのために貯金をしなきゃまずは点滴 4 猫は猫スマホを捨てることがもう半身...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 コンビニプリン

1 缶ビールひとつ分けあう連休にはだしになって夏待ち伏せる 2 カレンダーめくり忘れてループして四月に封じこまれたふたり 3 ピリオドを消し去りたくて加速する空も泣いてる夜のドライブ 4 昼寝するとなりで雨を眺めてる す...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 アマエビ

1 はつなつの夜の休符よあとがきを恋文みたく指でなぞって 2 月のない夜になるから寂しさをコーンスープに溶いて分けあう 3 走り梅雨 いつか別れがくるなんてとっくにしってるよだいじょうぶ 4 ワイシャツがはためく午後にラ...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 錠剤

1 花束になれない花だけを集めるきみの帰りをベランダで待つ 2 紫陽花が雨を呼ぶ午後 日曜にディミヌエンドのペダルをかけて 3 「ただいま」をふたりの部屋に灯すため星のあかりを連れて帰った 4 錠剤に向ける視線の邪魔をす...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 史上最低

1 紫陽花の抱く雫が涙ならきみが泣いてるわけは問わない 2 月光にランプシェードが揺れる夜わかりあえないからそばにいる 3 まだ帰りたくない駅に続いてる信号機みな赤で壊れろ 4 留守電にいまだに残るきみのこえ消去ボタンが...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 缶チューハイ

1 泣きたくて泣いてるわけじゃないきみがまたそうやって笑ってるから 2 冷蔵庫に住民票を移したい暑いしんどいくるしい暑い 3 きみがまた下手な口笛を吹くから悲しみになど浸れない午後 4 ツユクサと揺れる風鈴うっとりときみ...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 くるぶし

1 この下になにが埋まっていてもいい月下美人が無事に咲くなら 2 短冊に書いた願いは「わがままはわたしにだけ言え」というわがまま 3 花火背に少し浮き出た頬骨をなぞると髪をなぜてくるきみ 4 半額のシールを狙い手に取った...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 ポルボロン

1 手放した風船高く消えてゆく傷よ痛みよ光に溶けよ 2 三連休しずしず過ぎるできたての口内炎もちゃんと愛しい 3 愛なんて口走ったらポルボロン奇跡も嘘も必然のうち 4 からっぽの金魚鉢にも茜さす香りの失せたミントガム吐く...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 それでもふたり

1 唯一になれなくたってそばにいるゆく夏の背に影を穿って 2 上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言 3 マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ 4 影送りきみがみていた幻は他者が狂気と呼びた...
posted on 2024.7.16

今日の短歌 予感

1 甘噛みのあとで目が合うカーテンを揺らす涼風だけが知ってる 2 火の揺れるのを見つめてる予感とはたぶんあなたのまばたきのこと 3 ろうそくの火を吹き消してさよならは夏に対してだけ告げたはず 4 水槽を覗くふたりは寂しさ...
posted on 2024.7.14

短歌 くらし

1 カーディガン濡らす秋雨改札で二本の傘と待っていたきみ 2 水たまり輪っか浮かんで消えていくのを眺めてるきみを眺める 3 雨のこと悪天候というけれどそれならぼくは悪になりたい 4 ぼくはね、と言いかけたまま沈黙にふたり...
posted on 2024.7.14

今日の短歌 おやつにしよう

1 寂しさに果てる夜もあるいちかけるいちが2になれないせいだろう 2 深爪は自傷行為かサイレンが近くで鳴る夜は迎えに来てよ 3 虫の音と奏でるきみのひとりごとうわごとねごと心臓のおと 4 ただ空が美しかっただけなのにきみ...
posted on 2024.7.14

今日の短歌 悲しい予感

1 背中から抱きしめてやるもう秋が去ってしまうと泣いているのか 2 青色のクリームソーダあなたとはわかりあえないぶんだけ甘い 3 昼下がり梨を剥きつつ眺めてる遠い世界の謝罪会見 4 何度でも壊れるきみを何度でも抱きしめて...
posted on 2024.7.13

今日の短歌 ぶらんこ

1 おかえりを言うためだけに起きているもうすぐ私ロボットになる 2 あんぱんの空虚地帯はカロリーを気にする者のああ免罪符 3 かわいいの最上級にきみの名を冠して辞書を編む秋の暮れ 4 カーディガン重ね着をして咳ひとつ心配...
posted on 2024.7.13

今日の短歌 判例

1 容赦ない季節ときの巡りに黙りこむコンロの炎とつとつ揺れる 2 おくれ毛にからみつく指ほんのりとみかんのにおい(きみだけだから) 3 カーラジオから流行歌「知らないね」と笑いあう午後たしかにふたり 4 満月にアクセル深...
posted on 2024.7.13

短歌 走る

1 ラブアンドピースを祈る指先の尖ったネイル(もう戻れない) 2 林立のハザードランプふたりには居場所のなさが心地よいこと 3 環七を滑り降りてくライトたち目を細めると笑ったみたい 4 助けてと言える強さを持つ人よ桜は寒...
posted on 2024.7.13

今日の短歌 Fマイナー

1 おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる 2 枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目 3 優しさの意味を辞書引くことはない花のあふれる街に暮らして 4 叫べたら壊れることもなかったと軋む吊...
posted on 2024.7.13

短歌 ミルクココア

1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし...
posted on 2024.7.13

短歌 あひるの玩具/カレイドスコープ

1 叫んでも届かないから沈黙と仲良しになる あひるの玩具 2 覗き込むカレイドスコープの眩しさ失望よりも暇いとまが怖い 3 明日には忘れてしまう中指で押したあひるの玩具の湿度 4 もう二度と出会えない気がしても目が離せな...
posted on 2024.7.13

短歌 シナプスと猫

1 もう一度絶望したいリスタートしてこそ見える景色が見たい 2 心臓に近づける耳わたしにはわたしの生きる理由しかない 3 遮断機は規則正しく排除する生きる予定の人と猫とを 4 照らされたファストファッションの看板倒れるの...
posted on 2024.7.13

短歌 羞らい

1 羞はじらいは心の溝に生える苔どうか触れずに育ててほしい 2 走れ、いまこの瞬間の羞らいはいつかの実り 心のままに 3 羞らいを忘れた人が集まると偏差値がどうとか言い出して 4 満員の電車に宿る数百の命と同じ数の羞らい...
posted on 2024.7.13

短歌 あの頃

1 胸深く埋うずめたはずの黒歴史優しい他人ひとが掘り当ててきた 2 教科書の隅のパラパラ漫画では上手にいったはずの告白 3 カニカマを蟹と信じて生きていた11歳は幸せだった 4 爪を噛む癖が治ったあの頃に確かに何か失った...
posted on 2024.7.13

短歌 日曜

1 目が覚めてトーストを焼く日曜日きみの鼻唄もメジャー進行 2 ラジオからふたりの好きなナンバーがフルコーラスでかかる日曜 3 宝物? ゆびわ、ともだち、きみ。プリン食べているから、うん、順不同 4 「太陽とちょうどいい...
posted on 2024.7.13

短歌 火へん

1 着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるもう後悔はない 2 孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい 3 窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね 4 灯火ともしびを絶やさぬように呼吸...
posted on 2024.7.13

短歌 すっぴん

1 すっぴんで街を歩けばなんとなくだけど心は百獣の王 2 アイブロウ上手くいったらそれだけでいい日認定したい明日は月曜 3 お化粧で隠れるものを数えてるわたしの後ろめたさの数を 4 すっぴんはたぶん最強に弱くて一番星の下...
posted on 2024.7.13

短歌 雪

1 絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく 2 春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪降り注ぐ 3 雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も 4 「極寒の雪国生まれ」寒さにはめっぽう...
posted on 2024.7.13

短歌 箱庭

1 そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか 2 こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない 3 夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時 4 映画にもカフェにも買い物にも行けず何を...
posted on 2024.7.13

短歌 ひと

1 まだ夢を見ているのって笑うひとびとは夢に見限られたひと 2 渋谷系のひとは「渋谷系」って書かれたシャツは着ないよたぶん 3 ああそうかほうちって法治じゃなくて放置のほうか(だからくるしい) 4 三月を待つひとの背に咲...
posted on 2024.7.13

今日の短歌 いのち未満

1 綻びはつまり終わりと笑うきみ拒絶できない桜の便り 2 開花待つ指を祈りの形にし春の日差しを零さないよう 3 「役に立つ」なんて定規は焼き捨てて回転しない木馬を磨く 4 医院から出てきた人と目が合った春陽がさして首を縦...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 はらり

1 春だから泣いてもいいと告ぐひとは泣く原因になっているひと 2 脚光を浴びることなく散っていく白木蓮の手向てむかう季節 3 雨粒がみんな音符に化けるなら泣いても歌に聞こえるはずだ 4 ベランダに花びらはらりきみからの便...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 ぽけっと

1 音階の隙間に遊ぶ雨粒がビニール傘を楽器に変える 2 ありがとうなんてやめてよあたりまえでしょういっしょにねむるのなんて 3 ワッフルの窪みに蜜を垂らすまだ許せないことだけ数えつつ 4 プリーツに八分音符をまとわせて風...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 街宣車

1 助手席の寝言に合わせアクセルを強く踏み込むきみの企み 2 それでいい 風を目で追う夕まぐれなんとなくでも生きているなら 3 街はもう桜を忘れあまつさえ市外局番まで気にしない 4 めでたしの続きをずっと紡いでく なんて...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 プラネタリウム

1 (「半額」のシールを貼ってくれるひと)待ち人はあと三分で来る 2 落涙に汚れた頬を抱きしめるそれは地図になるため流れた 3 正しさはただの抑圧このぼくはコーラをちゃんと振ってから飲む 4 靴紐を結び直してまた歩き出せ...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 綺羅星

1 ほっといてくれといわれてほっとくとなんでほっとくのっていわれる 2 髪切ったわけをきちんと質してよきみのせいだと糾したいから 3 「雨ですね」それきり口を開かずにふたりぼっちで遠雷を聞く 4 フィクションとノンフィク...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 きみとの暮らし

1 降り注ぐ陽光のなかほどかれる過去は過去だと捨て置けますか 2 舞い落ちるその一葉を目で追ってそのままふたり踊り続ける 3 終わりとは意味のあること秋楡に託す言葉を一緒にさがす 4 月までも凍える夜に寄り添ってホットミ...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 もういいかい

1 ペディキュアは夏へのとびらアスファルトを滑走路にして走り出す 2 きみでいい なんて真っ赤な嘘だったほんとはきみじゃなきゃだめなのに 3 横にしか首を振らない扇風機 冷えたゼリーにスプーンを挿す 4 もしきみが す ...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 酸性雨

1 カーテンが窓辺に遊ぶ日曜にカウントダウンしてゆくいのち 2 願いごとまみれの笹を携えた子らに注いでいる酸性雨 3 新宿で辞書に載らない寂しさを遺棄するために息する僕ら 4 頑かたくなに閉じたこころがほどけだす夏だひか...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 うつつのきわ

1 降り注ぐ火の粉を数えているきみ正常なんて野暮な季節だ 2 ゆりかごを胸に置きざり泣きかたもわからずきみは大人になった 3 打ち上がるたびにこっそり見つめてたまつ毛の長いきみの横顔 4 お土産は大事な人を数え買う片手で...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 ラムネ瓶

1 宿題をサボって海を見に行った夜のすべてを肯定したい 2 立ち止まる時があるからこそ前に進める意味を噛みしめる夜 3 砂の熱浴びて全力疾走で「後悔」なんて辞書にない夏 4 終わるまで手を繋いでてほしかったずっとそばには...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 津田沼

1 新宿を好きになれたら日没が早くなるのも許せるかしら 2 夏が逝く何か言いかけやめたきみが間違いだらけのパズルを解く 3 発つことになったと告げてきみ見れば真剣に納豆を混ぜてて 4 お隣に行くだけでしょう電話なら毎日す...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 (猫がいる)

1 解のない問題文を与えられ((大丈夫))って繰り返してる 2 ようこそ に愛を感じる画面には淋しがり屋の顔が映ってる 3 八月が終わる夜にはそばにいて「もういいよ」って私を呼んで 4 これは秋それはまだ夏きみだけにぼく...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 未明

1 打ちつける粒のひとつを指で追い泣き出すきみの背中を見てた 2 スーパーで買ったお寿司のサーモンを狙いあってる水曜の夜 3 明大前そんなに人を詰め込んでひとつひとつが尊いなんて 4 大雨の夜はなにかが目を覚ますそれより...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 傷つけたい

1 大丈夫われわれはみなポンコツだこの痛みさえいつか笑える 2 復讐の計画を立てるよりラジオネームを一緒に考えようよ 3 半分こしたどら焼きの少しだけ小さいほうを選ぶのがきみ 4 面取りはまごうことなき愛情だ大事なことは...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 レッドアイ

1 「愛してた」なんて過去形はいらないメタルまみれのプレイリストに 2 回転をやめないミラーボールああライブハウスに骨を埋めたい 3 鮮やかにぶたれるドラム昔から優しいだけじゃなかったんだね 4 東京は人がたくさんいるけ...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 トマトマト

1 沈黙は愛のかたちと気がついて微笑み交わす秋の訪れ 2 ウェブニュースコメント欄を消去してきみは優しい歌だけを聴く 3 情報化社会で弱者と呼ばれてもきみがしあわせならそれでいい 4 笑顔には二種類あって向けられて嬉しい...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 ゼリー

1 積読があふれる部屋の隅っこで文字に溺れるきみを見つけた 2 十年があっという間に過ぎてって十一回目の秋桜を待つ 3 ガラス戸にさしこむ夕陽つかまえて囚われているのはきみのほう 4 なにごともなかったように続いてる線路...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 なぞなぞ

1 窓辺には金木犀の香りまたきみがほどけるきっかけを生む 2 怖くてもほどけてもいいきみがすきそれより強い理由などない 3 予報にはなかった雨に濡れそぼり帰る家にはきみという謎 4 今どきはわかりやすさがウケるけどきみと...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 いつものラジオ

1 風呂上がり米を研ぎつつ聴くラジオいつもの声に励まされてる 2 叫ぶよりもう倒れたい夜だけど深夜ラジオが笑かしてくる 3 通勤のお供はラジオ満員の京王線で笑みかみ殺す 4 カーディガン脱ぐとききみが目をそらす Don&...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 猫は驚く

1 コンビニの冷食売り場に永遠がわりと安値で微笑んでいる 2 永遠が「ん」で終わることしりとりで使えないこと腹が減ること 3 永遠の終わりを告げるレンチンに涙するひとだけで食べてよ 4 ぎこちなく扉は閉まる人びとがもった...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 ランプ

1 推しじゃないチーム同士の試合でも息を飲むのが日本シリーズ 2 ドラキュラも魔女もミイラも渋谷には行かずzoomで集まる今宵 3 ドラキュラの仮装できみは拗ねていた惚れ直すにはじゅうぶん過ぎた 4 暗闇に洋燈ランプ枯れ...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 果実酒

1 分けあってはふはふ食べる揚げたてのポテトふたりはもう大丈夫 2 マックでもマクドでもなくマクドナと呼ぶのはたぶんきみくらいだよ 3 海を見に行こうときみはつぶやいてナビを無視してアクセルを踏む 4 満ちてゆく潮に足首...
posted on 2024.7.12

今日の短歌 ネイル

1 優しさがときどき怖いサイレンを無視してきみはスープをすする 2 溶けているものがなにかをよく知らずそれでも全部飲み干しました 3 あったかいスープがいいねケンカしたあとに最初に口にするのは 4 消印に知らない地名を見...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 パスワード

1 花を愛でときに毟って頬張ればおんなに生まれた意味しかわからない 2 パスワード管理ソフトのパスワード管理ソフトのパスワード管理 3 砂時計じっと見つめる二分間ちんもくもまたふたりの時間 4 ポケモンがドット絵だった頃...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 齧るも叫ぶも

1 焼き肉に連れていかれて泣いている場合じゃないしミノは焦げるし 2 つらかったはずなのにいま白米にのったカルビと真剣勝負 3 虹の橋を渡りたいと泣いた夜に大きな傘を差し出したきみ 4 虹の橋みんないつかは渡るからひとり...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 温泉の素

1 白鷺が羽を休める空の下ぽーんと琥珀糖を頬張る 2 らしさってなんなんだろうモミの木に願いを書いた短冊は揺れ 3 正解はつまらないから満点のテスト用紙は折り鶴にする 4 かじかんだ指で画面を滑らせて寂しいよって伝えたか...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 ガラケー

1 新宿に向かう列車の沈黙をハイジの歌で破るガラケー 2 届かないメールをじっと読み返す誤字脱字がなくてさみしい 3 野良猫は忖度の対義語として尻尾ふりふり堂々歩く 4 猫の目を主治医に向ける診る者は見られる者と心得てお...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 タイムマシン

1 ありがとう。ふざけてくれて。真剣にならずにすんでほんとよかった。 2 地に足がついてしまったもう少しわたし以外のわたしが浮遊 3 サイコロを三回振って六の目が三回出たら滅びる設定 4 みんなもうしあわせになれとこしえ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 カプセル

1 からだには戸惑うばかりあの星がほしいとねだった手に纏う闇 2 閉館を報せるカノン背表紙をなぞるばかりで果てた企み 3 お肉なら余ってるから持ってってどうぞどうぞどうぞどうぞ 4 おしあてるきみの鼓動を聴きたくて 冬が...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 背表紙

1 しねという二文字すべて「すき」にする魔法ならもう使えるはずだ 2 やっぱりね オカネで愛が買えなくて震えているのマナーモードで 3 青春の答え合わせをするふたり箱に潰されなくてよかった! 4 焼き肉の最後にガムを渡さ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 無限キャベツ

1 「従順」は貶し言葉と気がついて飼い犬に名は与えなかった 2 「花束は枯れていくから嬉しいよ」無限キャベツを食みつつきみは 3 実験は成功したとされておりマリネにされたタコと目が合う 4 消えていく傷もあること新月の満...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 あ、ほら、

1 近いうち人工知能は失恋や死別を歌うがくしゃみはできまい 2 弾けたらオシマイだから風船を心に喩えるのはやめてくれ 3 食べるときじっと見てくるどうしたのって訊いてもたぶん気にしてなくて 4 昨日の灯がもう懐かしくフレ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 そうですね

1 人類へ 終わりを識っているのならせめて美学は己で紡げ 2 拍手ってうるさいじゃないみんなして手を叩くのってうるさいじゃない 3 言い当ててしまえば終わる恋だから鳥籠だけは空にしておく 4 好きすぎておかしくなるのすご...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 サブスク

1 会いたいね そうでもないかサブスクでとりま細川たかしを探す 2 メントスとコーラで祝う誕生日あの子にもあったはずの誕生日 3 人間の都合など意に介さずに咲きたいときに桜は咲いた 4 あ、枝毛。あまりいろいろ気にしても...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 すべりだい

1 もう散るね とっても嬉しそうなきみ終わりってそう、救いだからさ 2 ピカピカの一年生かおめでとう今が一番輝いてるよ 3 すべりだい滑り落ちてく楽しさを大人になっても忘れていない 4 読まれずにほこりをかぶる美味しんぼ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 降る三連符

1 全自動タマゴ割り機で好きなだけ卵を割って暮らすのが夢 2 チロルチョコ23円。青春がそろそろ歴史の本に載る頃 3 「変ですよ、それ」と言い出せなかったし誤解のほうがたぶん平和だ 4 世の中はいつになったら慣れるんだミ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 たぶん犬

1 たぶん犬じゃないかなそうじゃなかったらあの鳴き声は通報案件 2 あの人はいずれ教祖になるだろう履歴書にそう書いてあったし 3 誰か見てきたんだろうか恐竜に水玉描けば修正される 4 定刻にわたし以外の声が沸く 喝采、喝...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 これは杖

1 結局はイオンモールに行くきみとヴィレヴァンがない街に住んでる 2 名言を残そうとしてうわすべる下心ってベンゼンくさい 3 ハトサブレ血走った目で睨んでも好きだから割る美味いから食う 4 「ゲームだよ」殺人犯の声色でぷ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 コンプラ

1 「私より先に死んだらぶっ殺す」せいいっぱいの愛の告白 2 勝たなくていい負けなけりゃそれでいいにこにこしてりゃご飯もうまい 3 コンプラを気にする体ていで笑ってるそんな奴らに救いが要るか 4 似顔絵を吉沢亮りょうに寄...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 鏡の値段

1 あちこちに劇場がある風が吹く思考停止を演じ続けろ 2 ほんとうを載せてくれない教科書を疑える奴だけ持つ翼 3 ファミレスで配膳ロボに喜ぶ児びびって道を譲るばかりの大人 4 熟れごろのトマトに宛てる包丁の力加減をなぜか...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 ピザ

1 道連れにしてくれないか側溝に吸われて消える不都合たちよ 2 潰したらだめって思うけど潰すニキビみたいにきれいな私 3 「平凡」は異常なほどに難易度のとにかく高い才能でした 4 屋根のない場所で待ってるもし雨が降ってき...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 ぽっぽっぽっ

1 砂浜で煌めくものだけを見つけてみてみぬふりを続けてた午後 2 口数が増えても助けてが言えない割れてはじめて風船だった 3 陰口を結束帯にしてたからほしくなかった友達なんて 4 十年後 人と人とを繋ぐのはご縁、忖度、黒...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 グロテスク

1 優劣はどこにもなくて人々はみんな「違い」を持っているだけ 2 陽炎のせいにできるね目が合ったときに殺意を抱いたことも 3 今日ひとつ嘘をついたよきみのこと嫌いだなんてすぐばれるのに 4 二の腕で空を飛べると信じてるそ...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 ばかだなあ

1 かくれんぼ西陽の部屋で首を振る扇風機にも見つけられない 2 「美しい」ほかに言葉が要るだろうか夕立のあとの改札のきみ 3 くだらないことだけをして公園でコンビニアイスを分ける夜が良い 4 わたしには泣いてるように見え...
posted on 2024.7.11

今日の短歌 疑問符

1 目玉焼きなんて名前をつけるからこの箸だって凶器になるね 2 知らなくていいことばかり知りたいしゲリラ豪雨はやまなけりゃいい 3 直接の死因ばかりを知りたがるこの方々に殺された友 4 死者がみな土に還るというのなら地球...
posted on 2024.7.10

短歌 戦っていた

1 種を吐くときの顔すら好きだからたぶん飽きてもまた風は吹く 2 蝉を見ろあいつらすぐに逝っちまう叫ばなければ生きてゆけます 3 気づいても言わないでおく傷ついたぶんだけ人が強くなること 4 この夏は地獄の蓋を開けたまま...
posted on 2024.7.9

なんとなく歌を歌えばそれとなくリズムを刻むきみとの暮らし

◈梅雨 雨のなか白い紫陽花を睨んで私の名前を呼ぶのはやめて とある日曜日、小雨のときは傘をささないきみが、ふと公園で立ち止まって「アナベル」という名前の白い紫陽花をじっと見ていた。 みるみる、きみの視線は鋭利になっていく...
posted on 2024.2.13

短歌 雪の日のラジオ

1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 まだまだだまだまだす...
posted on 2024.2.13

短歌 二月

1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼ...
posted on 2024.1.13

短歌 大雪

1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り...
posted on 2023.12.13

短歌 冬

1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である最強のかたつむりとは...
posted on 2023.12.11

今日の短歌 UFO

1 思ってたよりも楽しい毎日だ犯人はきみ、きみが容疑者   2 撤去されツリーはただの樹になって半額ケーキつつく納め日  3 ほのぼのと生きてゆきますこの世からポッドキャストが消えない限り 4 ぎゅっとして離れるときの一...
posted on 2023.12.11

今日の短歌 おしるこ

1 著作権切れたとたんに人々を襲いはじめたあの黒ネズミ 2 自販機の右端にいるおしるこはちゃんと私を見下している 3 好きだった好きすぎてもう苦しかった動機はそれでじゅうぶんだった 4 「『確かに』が『しかし』とセットな...
posted on 2023.10.25

今日の短歌 いつものラジオ

1 風呂上がり米を研ぎつつ聴くラジオいつもの声に励まされてる 2 叫ぶよりもう倒れたい夜だけど深夜ラジオが笑かしてくる 3 通勤のお供はラジオ満員の京王線で笑みかみ殺す 4 三叉路を過ぎればきみがいる/いない/別の誰かと...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 カーディガン

1 予報にはなかった雨に濡れそぼり帰る家にはきみという謎 2 今どきはわかりやすさがウケるけどきみという謎だけは解けない 3 正答のないなぞなぞを解いている気がするきみのとなりにいると 4 カーディガン脱ぐとききみが目を...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 溺れるきみ

1 十年があっという間に過ぎてって十一回目の秋桜を待つ 2 不器用はもはや伝統芸能かいっそ人間国宝になれ 3 一人称複数形ではや十年なんだかんだで今日も笑顔で 4 積読があふれる部屋の隅っこで文字に溺れるきみを見つけた ...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 スプーン

1 「うん、いいよ」そこで途切れたやりとりのとなりで揺れる曼珠沙華たち 2 若かったそれよりずっと馬鹿だった落暉を何度見逃したろう 3 沈黙は愛のかたちと気がついて微笑み交わす秋の訪れ 4 「スプーンじゃないほう取って」...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 喝采

1 耳朶に降る月の光を閉じこめたピアスはきみの声でささやく 2 蟻が征く覇道に垂れた汗ごめん悪気も意味も特にないんだ 3 ぷんすこはプリンの複数形であるってその嘘たまらなく好き 4 ただいまを二度と言えないあの家を遠く離...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 レモンスライス

1 私たち不器用だねと笑いあう月曜日って実は尊い 2 「うそつきは消えて」あなたの笑顔ごと沈めてしまうレモンスライス 3 スーパーで買ったお寿司のサーモンを狙いあってる水曜の夜 4 明大前そんなに人を詰め込んでひとつひと...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 檸檬爆弾

1 解のない問題文を与えられ((大丈夫))って繰り返してる 2 ようこそ に愛を感じる画面には淋しがり屋の顔が映ってる 3 今日未明檸檬爆弾未爆発無事故月曜超絶憂鬱 4 寂しさも自分の一部わかってる手紙を書くよ青いインク...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 無謀な星

1 (猫がいる)すれ違う人それぞれに悩みがあって秋へと向かう 2 新宿を好きになれたら日没が早くなるのも許せるかしら 3 夏が逝く何か言いかけやめたきみが間違いだらけのパズルを解く 4 わがままも貫いたなら道になるそこに...
posted on 2023.10.21

今日の短歌 ミラーボール

1 「愛してた」なんて過去形はいらないメタルまみれのプレイリストに 2 回転をやめないミラーボールああライブハウスに骨を埋めたい 3 鮮やかにぶたれるドラム昔から優しいだけじゃなかったんだね 4 消印に知らない地名はじま...
posted on 2023.8.25

今日の短歌 ああそうか

1 ああそうか星の見えない夜だからきみの涙が見たくなるんだ 2 真実はいつもひとつというけれどたまに複数あったりもする 3 なぞりつつ今日雨だねとつぶやいた窓枠がひしひしと軋んだ 4 落ちる砂見つめていれば三分は世界で一...
posted on 2023.8.1

今日の短歌 コンビニアイス

1 お土産は大事な人を数え買う片手で足りずじんわりとなる 2 真っ青な田んぼを鷺が堂々と羽ばたきもせず満足そうに 3 東京へ戻る列車はまたの名を現実行きと呼ばざるを得ず 4 降り注ぐ火の粉を数えているきみ正常なんて野暮な...
posted on 2023.7.13

短歌 年末

1 お便りは tasukete@アットgod.ne.jp まで 待ってるよ 2 傷跡のない人生はつまらない下味のないチキンみたいに 3 一晩で片づけられたクリスマスツリー 私は笑ってました 4 靴下に穴が開いたら縫えばい...
posted on 2023.6.14

今日の短歌 雨ですね

1 髪切ったわけをきちんと質してよきみのせいだと糾したいから 2 「雨ですね」それきり口を開かずにふたりぼっちで遠雷を聞く 3 リビングのカレンダーもまだ五月だしまた連休があったっていい 4 ほっといてくれといわれてほっ...
posted on 2023.5.1

今日の短歌 獣と同じ色

1 バス停で偶然会ったふりをするためまわり道した雨の夕方 2 いい人とどうでもいい人の狭間で白いポピーが小夜風に咲む 3 もう無味なチューインガムと過ごす夜 吐くタイミング掴めずにいる 4 新しいピアスをなくしどうやって...
posted on 2023.4.1

今日の短歌 でも春は

1 日々だった紡いだ息もあやまちも月がきれいと伝えるための 2 桜舞う夜に思い知るああ既にきみはきちんとぼくの傷あと 3 耳たぶに花びらの降るふれられてクラクションさえ無視し続けた 4 ベランダに花びらはらりきみからの便...
posted on 2023.3.20

今日の短歌 ああ、呼ばれた

1 火曜日のエンドロールにきみの名が焼きつけられて今日は満月 2 満月を言い訳にして仲直りきれいだねって月のほうかよ 3 薬局で分けてもらったサムシング毒か薬か知らないで飲む 4 コンセントにピンセット挿し感電し呻いた過...
posted on 2023.3.5

今日の短歌 吊り橋

1 めでたし、のつづきをみんな生きている罪の意識にリボンをかけて 2 「生きている」わざわざ口に出すようになって久しい春一番よ 3 叫べたら壊れることもなかったと軋む吊り橋の上できみは 4 枯れていく花束見つめ幸せを過去...
posted on 2023.2.16

二月

1 傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ 2 泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風 3 花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは 4 ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼ...
posted on 2023.2.10

短歌 雪

1 Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される 2 「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた 3 新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間 4 コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り...
posted on 2023.2.8

雪の日のラジオ

1 ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく? 2 大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る 3 眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう) 4 まだまだだまだまだす...
posted on 2023.2.8

短歌 箱庭

1 そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか 2 こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない 3 夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時 4 映画にもカフェにも買い物にも行けず何を...
posted on 2023.2.2

短歌 冬

1 UFOを見かけた夜の帰りみち白い息だけ捕まえ歩く 2 人材、と呼ばれるときに血と骨でできていますと答えたくなる 3 おでんではちくわぶが好き共感は別のところでお願いします 4 こたつとは要塞である最強のかたつむりとは...
posted on 2023.2.2

1 十年に一度の寒波メイクして街を歩けば頬に立つ霜 2 霜柱踏んづけ歩く朝のみち遅刻のわけを誰も責めない 3 晴れた日にこそ降りる霜出会いとは別れの合図(認めたくない) 4 しもやけになるまで待っていてくれた改札口のきみ...
posted on 2023.2.2

短歌 雪

1 絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく 2 春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪が積もる 3 雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も 4 「極寒の雪国生まれ」寒さにはめっぽう...
posted on 2023.1.22

短歌 うしろめたさ

1 すっぴんで街を歩けばなんとなくだけど心は百獣の王 2 アイブロウ上手くいったらそれだけでいい日認定したい明日は月曜 3 お化粧で隠れるものを数えてるわたしの後ろめたさの数を 4 すっぴんはたぶん最強に弱くて一番星の下...
posted on 2023.1.19

短歌 火へん

1 着火剤よりも苛烈なきっかけがきみであるなら後悔はない 2 孤独より孤立が怖い「助けて」が届かないなら声を燃したい 3 窓ガラスにイニシャルを指でなぞってぜんぶ夕焼けのせいにしたね 4 灯火を絶やさぬように呼吸するきみ...
posted on 2023.1.16

短歌 日曜

1 目が覚めてトーストを焼く日曜日きみの鼻唄もメジャー進行 2 ラジオからふたりの好きなナンバーがフルコーラスでかかる日曜 3 宝物? ゆびわ、ともだち、きみ。プリン食べているから、うん、順不同 4 「太陽とちょうどいい...
posted on 2023.1.16

短歌 あの頃

1 胸深く埋うずめたはずの黒歴史優しい他人ひとが掘り当ててきた 2 教科書の隅のパラパラ漫画では上手にいったはずの告白 3 カニカマを蟹と信じて生きていた11歳は幸せだった 4 爪を噛む癖が治ったあの頃に確かに何か失った...
posted on 2023.1.16

羞らい

1 羞はじらいは心の溝に生える苔どうか触れずに育ててほしい 2 走れ、いまこの瞬間の羞らいはいつかの実り 心のままに 3 羞らいを忘れた人が集まると偏差値がどうとか言い出して 4 満員の電車に宿る数百の命と同じ数の羞らい...
posted on 2023.1.5

シナプスと猫

1 もう一度絶望したいリスタートしてこそ見える景色が見たい 2 心臓に近づける耳わたしにはわたしの生きる理由しかない 3 遮断機は規則正しく排除する生きる予定の人と猫とを 4 照らされたファストファッションの看板倒れるの...
posted on 2023.1.5

あひるの玩具/カレイドスコープ

1 叫んでも届かないから沈黙と仲良しになる あひるの玩具 2 覗き込むカレイドスコープの眩しさ失望よりも暇いとまが怖い 3 明日には忘れてしまう中指で押したあひるの玩具の湿度 4 もう二度と出会えない気がしても目が離せな...
posted on 2023.1.4

短歌 ミルクココア

1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし...
posted on 2023.1.3

短歌 走る

1 ラブアンドピースを祈る指先の尖ったネイル(もう戻れない) 2 林立のハザードランプふたりには居場所のなさが心地よいこと 3 環七を滑り降りてくライトたち目を細めると笑ったみたい 4 助けてと言える強さを持つ人よ桜は寒...
posted on 2022.12.27

年末

1 お便りは tasukete@god.ne.jp まで 待ってるよ 2 傷跡のない人生はつまらない下味のないチキンみたいに 3 一晩で片づけられたクリスマスツリー 私は笑ってました 4 靴下に穴が開いたら縫えばいい が...
posted on 2022.11.18

今日の短歌 ビー玉

1 最低と口にするきみ凹むぼく天気の話とわかっていても 2 速報に耳を塞いで笑ってる愚鈍と安穏とは比例する 3 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱な表情をして土鳩が過ぎる 4 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱もかけがえのないあなたの一部 ...
posted on 2022.11.13

短歌 霜

1 十年に一度の寒波メイクして街を歩けば頬に立つ霜 2 霜柱踏んづけ歩く朝のみち遅刻のわけを誰も責めない 3 晴れた日にこそ降りる霜出会いとは別れの合図(認めたくない) 4 しもやけになるまで待っていてくれた改札口のきみ...
posted on 2022.9.24

くらし

1 カーディガン濡らす秋雨改札で二本の傘と待っていたきみ 2 水たまり輪っか浮かんで消えていくのを眺めてるきみを眺める 3 雨のこと悪天候というけれどそれならぼくは悪になりたい 4 ぼくはね、と言いかけたまま沈黙にふたり...
posted on 2022.9.18

今日の短歌 過去形

1 満月の下の問いかけくちびるは正答だけを避けて近づく 2 水槽を覗くふたりは寂しさが足し算できないことを知ってる 3 浴槽で金魚がひとりダンスするそう虚しさってこういう感じ 4 過去形にしたい痛みはきみのそれと同じ匂い...
posted on 2022.8.29

今日の短歌 遮断機

1 唯一になれなくなってそばにいるゆく夏の背に影を穿って 2 下を向く向日葵たちが淀みなく人間たちを睨みはじめる 3 上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言 4 のびすぎた前髪揺れるきみのことあなたって呼ぶ...
posted on 2022.8.16

今日の短歌 屋台の金魚

1 マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ 2 チョベリグを連発してたパイセンの当たり前田になりたい ぴえん 3 The Beatles ならば死なない流行語墓場でかかる Let It Be 4 KYがつい...
posted on 2022.8.13

今日の短歌 扇風機

1 懐メロの範囲が違う焼き鳥のたれ塩割れるそれでもふたり 2 アイスティーに注いだミルク溶けるのを黙って見てたふたりで見てた 3 手放した風船高く消えてゆく傷よ痛みよ光に溶けよ 4 差し出した傘を受け取るきみの手に触れよ...
posted on 2022.7.29

今日の短歌 三連休

1 欠点を見つけるたびに嬉しくて流星を待ちわびてるふたり 2 「ぼく」じゃない一人称でうめくきみ すべて私のせいにしてくれ 3 三連休しずしず終わるできたての口内炎もちゃんと愛しい 4 ハーモニカ吹くみたく食むとうきびに...
posted on 2022.7.14

今日の短歌 短冊

1 呼び捨てにしてぎゅっとなる文庫本めくる音さえすきと聞こえる 2 半額のシールを狙い手に取ったサラダになんて謝ればいい 3 三日月を逃した夜だ帰らなきゃきみがナイフを研いでいるから 4 くるぶしがきいんと冷えるサンダル...
posted on 2022.7.1

今日の短歌 住民票

1 ビー玉を狙ってラムネ瓶を割るようにまっすぐ欲しがってくれ 2 海を見に行こうと床のきみがいう約束じゃなく命令として 3 ベランダで夏の星座を探してるきみに缶チューハイを差し出す 4 きみがまた下手な口笛を吹くから悲し...
posted on 2022.6.17

今日の短歌 留守電

1 天井を見上げるふたり日曜は約束なしで手をつなぎたい 2 泣き出したゼブラゾーンを行くきみは無口なままで傘をささない 3 引き返すつもりがあれば愛なんて言葉を使うわけないだろう 4 留守電にいまだに残るきみのこえ消去ボ...
posted on 2022.6.4

今日の短歌 ベランダ

1 ソーダ水こぼしたとたん「運命」を口ずさむきみ指揮するわたし 2 錠剤に向ける視線の邪魔をする きみが見るべきなのは私だ 3 降り立ったホームでカーディガンを脱ぎ風に教わる夏への扉 4 もし栞になれるのならそばにいてと...
posted on 2022.5.20

今日の短歌 はんぶんこ

1 はんぶんこしたコロッケの少しだけ大きいほうを牽制しあう 2 コンロの火とろとろ見つめ手をつなぐ地球も星のひとつと気づく 3 ラッシュ越えきみ待っている家に着く一等賞はいつもわたしだ 4 ワイシャツがはためく午後にラジ...
posted on 2022.5.9

今日の短歌 ふたり

1 「ごめんね」を言い出せないで夕飯後渡すつもりのコンビニプリン 2 街あかり きみはあらゆる寂しさに若草色の栞を挟む 3 昼寝するとなりで雨を眺めてる すき の呪文はまた独り言 4 ピリオドを消し去りたくて加速する空も...
posted on 2022.4.24

甘い雨

1 まぼろしを見た帰り道待つ人のいる意味じんと踏みしめながら 2 窓辺にはなお泣きじゃくる少女わたしがいて四月の空に雨を呼んでる 3 抱きしめてあげたい人がいることが現うつつにも降る涙の理由 4 これ一生消えない傷だ笑う...
posted on 2022.4.22

短歌 球

1 寂しさのしっぽをそっと撫でてやる怒りに変化させないために 2 さよならは音も立てずにやってくる春だ春です春であるとき 3 我が家ではテレビは地球と同じで壊れかけても気づかれずいる 4 論破して浸る優越感よりもおつりを...
posted on 2022.4.19

短歌 虚

1 他人ひとのため傘を差し出すひとだけが濡れている街とても虚しい 2 傘さして待っていました穿たれた虚しさやがて光りだすのを 3 書きかけの手紙を破る さらさらと虚しさが遊びにやってくる髪 4 虚しさはAmエーマイナーが...
posted on 2022.4.16

短歌 耳

1 右耳にはじめてあけたピアス もう戻れないのが心地よかった 2 耳たぶの存在意義を問いかけて二の句失う缶チューハイよ 3 風の丘 耳にピアスを欠かしたら自分らしくはあれないだろう 4 二番目じゃダメなんですと涙声ゆれる...
posted on 2022.4.14

1 葉桜にレンズを向ける強がって目を背けてた日々にさよなら 2 燃えさかるつつじに両手突っ込んで「お前らを漢字でも書けるぞ」 3 愛という際限のない重力に負けてしまった路傍のポピー 4 菜の花は目に優しいし美味しいし体操...
posted on 2022.4.11

鯖(あああ/酸性)

1 a.k.a 笹塚心琴 自意識を溶かすため強いハイターを買う 2 「新宿は嫌い」って言う人にだけ酸性雨が降り注げばいいな 3 青色の肉じゃがピンク色の空 ヘッドフォンから真鯖の悲鳴 4 いっせーの、で息を止めたらどちら...
posted on 2022.4.10

四月

1 明るいとサーチライトに意味はない大至急なにか思い悩めよ 2 明るいとサーチライトに意味はないけれど四月よ油断しないで 3 四月には二種類あって新しい靴を履くのは幸せなほう 4 四月には二種類あって私のは深呼吸にも許可...
posted on 2022.4.7

短歌 葉桜

1 無ってほら蕪にとってもよく似てる草冠を編んであげるよ 2 頬撫でる春風は暗い思い出を捨て去るためだけに吹けばよい 3 あの人の好きな季節が巡り来てチューインガムを吐き出す舗道 4 金星に桜が咲くと信じてるきみと何度も...
posted on 2022.4.3

短歌 殺し屋

1 殺し屋の履歴書「特技」の欄に「箸を正しく使える」とあり 2 「お仕事は?」「殺しを少し」笑われる 人を笑顔にするお仕事です 3 唐揚げにするためにもも肉に包丁を立てる(練習がわりにもなる) 4 帰り道ちゃんと殺したは...
posted on 2022.4.1

1 やがて夜サーカス団の解散後ひとり花びら数えるピエロ 2 舞い落ちる花弁に気づくいのちとは終わるからこそ尊いのだと 3 壊廃ののちに見上げた花曇り部屋の隅っこの古い地球儀 4 テーブルの一輪挿しに薔薇がいて私の居場所を...
posted on 2022.3.26

リズム

1 虹を見るカニバリズムはリズムだと言い張るきみとまた虹を見る 2 空に虹となりにきみがいることと六切りパンの精緻な厚さ 3 生まれたら死ぬからねえと指先の羽虫に向けるあわいまなざし 4 ガーベラのまんなかにある黒、指を...
posted on 2022.3.22

まだ

1 多様性個性潰して整列の上達順に卒業してく 2 号砲を鳴らした人が先生と呼ばれてる(もう笑わせないで) 3 自尊心だったボロボロのサムシング引きずり笑いまだ生きている 4 振り向けばすべて思い出 美化されていなかったこ...
posted on 2022.3.19

かさぶた

1 かさぶたをゆっくり剥がす優しくはなれなかったと春雨の降る 2 薔薇風呂にお入りなさい美しくなりたいのなら傷つきなさい 3 綻べばもてはやされて枯れたならLEDを巻き付けられて 4 春雷を遠くみていた他人事としてかさぶ...
posted on 2022.3.18

短歌 傘とクッキー

1 曇りのち雨の街では誰しもが誰かに差し出す傘を持っている 2 平等はどこにもないとわかってて半分こする指先がすき 3 ラングドシャをランドグシャっていうひとの気持ちがどうか潰れませんよう 4 灰色が好きと伝えた午後に降...
posted on 2022.3.17

卒業

1 卒業を脱出と呼ぶ傷だらけのきみを誇る人がいるから 2 「おめでとう」監獄からの卒業をみんなきちんと祝ってくれる 3 今どきは卒業証書もQRコードだといううわさを聞いた 4 振り向くなそこに希望などはないし見て見ぬふり...
posted on 2022.3.14

短歌 花る

1 もし花るという動詞があったなら視界はもっと色を知ってた 2 花れたら見えてる景色が違ってた近すぎるから枯れてしまった 3 教養の寡多を競った日々を抜けどれだけ花ることができよう 4 花としてあるいは憂いを識る獣として...
posted on 2022.3.8

1 睡眠とスイミングとが似てるのはむかしむかしに魚だったせい 2 ぬめひかるうろこだらけのまるで春あれはためいきなんかじゃなくて 3 カーテンにきみの涙が遺ってて魚になったことの証明 4 左から振り子は揺れる 剥がされた...
posted on 2022.3.2

ひとりいちごつみ

1 カラマーゾフの兄弟の中巻だけを抜き取って夜に駆け出す 2 上巻の次は下巻と思ってたまさか中巻があるとは(春だ) 3 犯人は春風もじき盗むだろうわかれ道には梅の花びら 4 ついたてに阻まれていま僕たちのわかれ話が地球に...
posted on 2022.3.1

月明かり

1 月明かり寂しい人だけ乗るバスのエンジンになるあなたの涙 2 カーテンをはさみで引けば月明かりあなたの寝息聞こえてました 3 理由などあとからでいい今はただ月明かりのせいにしてさわって 4 曇天をともに憎んでいられたら...
posted on 2022.2.23

告白

1 干からびた蝶を燃やす火 忘れたら許されたのと同じことだね 2 カポエラかカポエイラかで揉めたよねシャペウ・ジ・コウロが告白だった 3 雨の日につけあった傷鮮やかに全治一生であれと祈る 4 (内緒だよ)(何が?)(それ...
posted on 2022.2.21

短歌 共犯

1 観覧車ひりひり上がる 天国の一番近くで泣き出しそうだ 2 まだ誰も見たことがない症状を見せてあげますお部屋においで 3 セロテープを噛むと甘い 教科書に載ることだけじゃきみが見えない 4 テーブルにレモンがひとつ 爆...
posted on 2022.2.21

短歌 か細い夏

1 ピアノ線よりもか細い夏でした 音階のない波を見ました 2 フロアからテナント去って白い壁 間違い探しの終わらない夏 3 犯人の名前かき消す蝉の声 悪くない人だけが泣いてる 4 PASMOには二十五円しかないから今日は...
posted on 2022.2.21

速報

1 薔薇の咲くような笑顔でといわれてまずはまぶたをひっくり返す 2 プチプチを潰しています 世界から緩衝地帯を奪っています 3 靴ひもを結びなおしているうちに間を詰めてくる公園の鳩 4 (ラブソング)誰のものでもないきみ...
posted on 2022.2.19

少女

1 ブランコを思い切り漕ぐ大人にはなりたくなかった つま先で蹴る 2 「ジュラ紀にもいじめが存在したらしい」「変わらない良さがありますねえ」 3 鉄くずが人工衛星だったころわたしもみんな大好きだった 4 雨の日の少女鏡に...
posted on 2022.2.15

短歌 早春

1 白壁にピンクの|花弁《かべん》春はすぐそこまで来てる(頭が痛い) 2 苛立ちは生ぬるさゆえ風さえも優しくなってしまう季節だ 3 ぎちぎちにイルミネーションを巻かれた桜が笑うまで、あと●秒 4 その地図に春は来るかい来...
posted on 2022.2.7

短歌 獣

1 鞭打てばいうことを聞く獣ども論理だててもむごいはむごい 2 消えかけの炎を愛でた日々があり強風の日は笑い続けた 3 のど飴を舐めているからヒトだろうそう簡単に殺してはだめ 4 幸せな日々であったとの証明 卒業式に檸檬...
posted on 2022.2.5

1 はち切れる寸前の糸携えて一人ぼっちで微笑む真昼 2 屋根裏に取り残された人形が謙虚さを求められてぷっつん 3 サイレンが近づいてくるきみはまだ夢とうつつを彷徨っている 4 糸くずの存在価値はきみだけが傷の深さとともに...
posted on 2022.2.4

短歌 揺れる

1 揺れている洗濯物を眺めつつ「明日あしたも生きていたいね」ときみ 2 久々に結った髪の毛(少女には戻れないこと承知の上で) 3 春を待つ前髪を切る咳をする優しすぎると苦しくなるね 4 にびいろのぶらんこに乗るそびえたつ...
posted on 2022.2.1

ドーナツ

1 ドーナツはみんなの事実 優しくて甘くてみんな否定できない 2 まなうらにドーナツ浮かべ傷つけた人のことなど思い出してる 3 ドーナツを2つに割ろうつらさとか悲しさがそうあれますように 4 なかんずくドーナツがよい仲直...
posted on 2022.1.29

1 「空あり」をそらありと読むきみがまた壊れかけてる土曜日の午後 2 ふうん、そう。黙りこむきみが何度も殺した虫を目で追いかける 3 もうじきに空は落ちるわその前にルーズソックス捨てておくわね 4 ピーナツの皮がするりと...
posted on 2022.1.26

1 サボテンを買ってきました僕たちの家は小さなオアシスでしょう 2 常識という名の棘を引き抜いて血まみれのまま笑いましょうね 3 冬薔薇のあかしろきいろ鮮やかに傷つく人の影だけ綺麗 4 忘れ物ってことにした腕時計つけ直し...
posted on 2022.1.26

1 気もそぞろなんでしょうねとレンズには何にもなびくことのない鳩 2 バラバラになる自意識!アスファルトを一雨ごとにえぐる徒花 3 原稿を読み上げるひと訥々とそれを見るひと(平和ではない) 4 似たような見た目としゃべり...
posted on 2022.1.22

寂しい倫理

1 倫理って風鈴の音からとったって嘘だとしてもなんか嬉しい 2 常夜灯消せない夜に寂しさを打ち消すために手に取るスマホ 3 ひまわりが咲んでた畑に寂しさがバレないように拍手を送る 4 倫理をろんりと読むのは間違いじゃない...
posted on 2022.1.21

カーテン

1 カーテンのふくらむ部屋で唇のカサつき舐めるきみだけの刻 2 鬼ごっこごっこのままで終われないぼくらの結節点を誤魔化す 3 遮断機の向こうで笑うきみを見た花束は死骸の寄せ集め 4 帰ったら熱いお茶でも飲みましょう何もな...
posted on 2022.1.18

宇宙

1 銀紙に銀河をひとつ閉じ込めてゴミ箱に狙いを定める夜 2 デニールのうすいつま先でいじくる果てるためあるあなたの宇宙 3 宇宙人だとしてそれが問題にならないくらいあなたが好きよ 4 口開けたままでは「む」って言えなくて...
posted on 2021.12.30

1 封筒の切手を丁寧に剥がすのは夢から覚めるのが下手だから 2 クッキーが焼きあがるまで起きないで銀世界だと気がつかないで 3 白線の外側へゆく人たちに手をふり返す冬の夕暮れ 4 イルミネーションの明滅きみがいま壊れゆく...
posted on 2021.12.28

短歌 花

1 風を受け素直に泣けた夜にだけ銀河の果てに咲く花がある 2 もう二度と会えない人にLINEするしゃぼん玉みな壊すつもりで 3 花束を贈りたい人がいることより重いわけなど知りたくもない 4 花びらを口に含んだ夜のこと忘れ...
posted on 2021.12.23

短歌 喫茶店

1 喫茶店 死にたくなると溶けかけの氷を口に含んだ二十歳 2 カウンター席の隅っこで目が合ってキーボードでunmeiと打つ 3 禁煙かどうか聞かれて「大丈夫です」ここでなら泣ける気がして 4 待ち合わせ時間まであと20分...
posted on 2021.12.22

短歌 鼓笛隊

1 背伸びして一口すするカクテルでちゃんと酔うから馬鹿にしなさい 2 見上げればコールドムーン ラジオから知らない人の結婚報告 3 知らないと知りたくないのあいだには八分休符が群生してる 4 笑い声泣き声悲鳴さまざまの音...
posted on 2021.12.13

短歌 あいらぶゆー

1 アルペジオ星を追った夜 切なさを携え息する獣が二匹 2 流星は儚いねって泣くきみの保障されない明日を想う 3 なぜ星が美しいのか(命から最も近い場所にあるから) 4 星がいまきみのなかでハレーションする それを人々は...
posted on 2021.12.6

短歌 満ちてゆく月

1 月明かり左手首の傷痕に名前を付けた 消えないように 2 偏差値が偏見差別の値だと気づいた人に満ちてゆく月 3 月のない夜にランパトカナルする いのち、いのち、いのち、いのち 4 搾取する/される関係 ハウツーのどこに...
posted on 2021.12.1

短歌 指先

1 送信を取り消しました の跡あり猜疑心さえあなたゆえなら 2 鎖骨からまぶたにかけて指先でなぞられたなら地球が止まる 3 唐揚げを持ち帰る夜ふたりして風になれたらいいね冬だね 4 流行語にはなれないと思うけどあなたの指...
posted on 2021.11.27

デート

1 楽しいね楽しいねって連呼して楽しいはずと言い聞かせてる 2 風船の割れる音までそそのかす あたしあなたを裏切るかもな 3 楽になるのと楽をするとの間の距離がまさしくあなたとのそれ 4 白ワンピ今宵あたしは本気です汚せ...
posted on 2021.11.25

少女

1 ブランコを思い切り漕ぐ大人にはなりたくなかったつま先で蹴る 2 「ジュラ紀にもいじめが存在したらしい」「変わらない良さがありますねえ」 3 鉄くずが人工衛星だったころわたしもみんな大好きだった 4 雨の日の少女鏡に懐...
posted on 2021.11.21

M

1 一滴の染みを気にする君なのに今宵笑って雨に打たれて 2 ボージョレを飲み下すのど動くたびグラスを割って溺れたくなる 3 許されるために上書きをしてゆく記憶(ずるいだけだよ) 4 塩味を涙の味と言い換えて感動的なポテチ...
posted on 2021.11.19

短歌 ニュース

1 「川はみなやがて海へと還るから寂しさからは逃れられない」 2 トレンドを気にする前に思い出を燃やすべきです深呼吸して 3 (いくら手を伸ばしたところで届かない)知りたくもないニュース速報 4 フェイクファーだと信じて...
posted on 2021.11.16

1 空も見ず中指ばかり舐めるひと悲しいことがあったのですね 2 モノクロの虹がかかった空に向け青く染まった舌を差し出せ 3 また空を飛ぶ夢を見た月曜日変なうさぎが隣で寝てる 4 唐揚げにレモンかけるか問題を解くため大空目...
posted on 2021.11.4

例外

1 いつか来る別れのために歯を磨くショートフィルムに収まりたくて 2 抱きあえて僕らよかったいつの日か別れが来てもこれは永遠 3 思い出になるくらいなら赤ペンででっかいばつをつけてください 4 たいていは「いい人だった」...
posted on 2021.10.27

短歌 叶

1 玉ねぎの皮を剥く手が止まらない流星群の夜のキッチン 2 サイレンは他人事として鳴り響く禁じられないシーソーゲーム 3 街宣車その勢いで火星までいってらっしゃいというさよなら 4 ツユクサの青をヒールで踏み潰す(公序良...
posted on 2021.10.24

短歌 目

1 水槽の鯵と目が合う天国の入口にいると自覚している 2 夜空には無数の目玉もうやめて気が済んだって破裂しないで 3 ランドルト環のぱっくりしてるとこに指を入れたらぶにゅっとしてる 4 眼球がごろごろ惑う手を取って踊り明...
posted on 2021.10.21

短歌 まつ毛

1 離れれば離れるほどに輝いてみえる故郷の最寄りのスタバ 2 頑張れは命令なんかではなくて代替不可な祈りの言葉 3 この爪も化石になれば誰かから求められると信じて舐める 4 触角も羽もしっぽも失ってそれを進化と呼びたがる...
posted on 2021.10.9

1 UFOがいない証明ができずに実りの秋だ誰を責めよう 2 天狗からもらったサイン本として神保町の東に隠す 3 星の降る街に暮らしてふたりきり 部屋は狭いほうがいいと笑う 4 宇宙にも終わりがあると信じたい終わるとしたら...
posted on 2021.10.1

1 ワイパーが動き出したら息を止めせめて時間を忘れさせてよ 2 シネマでは結ばれていたあのふたりブレーキペダル強く踏み込む 3 はじめからわかっていたよ花束は作り笑いを誤魔化すためと 4 味のないガムを噛むとき未練とはや...
posted on 2021.9.29

短歌 伝言

1 エラ呼吸できないぼくら輝きは確かにあの日失くしたうろこ 2 うろこ雲見上げて歩く帰り道 神さまがまた居留守を使う 3 そばにいてなんて言えない留守電に悲鳴を入れたなんて言えない 4 言の葉が紅葉したら逢いにゆくひとと...
posted on 2021.9.26

食卓

1 ふっくらと焼き上がったね僕のためだけに死んでくれた秋刀魚ラブ 2 それぞれの自宅に小さな火葬場がグリルという名で存在をする 3 おいアヒルお前の兄は目の前の丸焼きとして立派であるぞ 4 カブトムシ素手でさわれるみたい...
posted on 2021.9.24

短歌 羽

1 苦しくて金木犀を手折るきみ逃れられずにそこかしこ秋 2 冷凍庫の奥に隠した金魚たち人を恨むか夏を騙るか 3 満月は欠けてゆくのみ きみはまだ白紙の手紙燃やせずにいる 4 二つめの月は青色回転灯まちの上気を牽制している...
posted on 2021.9.15

短歌 すっぴん

1 すっぴんで葬った過去 果てしない季節の巡りに逆毛を立てる 2 ラジオからやっぱりきみのSOS 聞こえないふりして眠りたい 3 ワイシャツのボタンを掛け違えている 気づいたけれど教えてあげない 4 この街がパズルだった...
posted on 2021.9.12

短歌 パンケーキ

1 見つかった小指がとても嬉しくて落ち葉を好きなだけ蹴り上げる 2 深爪が疼く 秋には許される予定で道を間違えてきた 3 カナリアをお道具箱に閉じ込めた秘密わけあう少年ふたり 4 沈黙を分けあえるからきみとなら馬鹿のまま...
posted on 2021.9.8

短歌 カーテン

1 「天国をまだ知らないの」「そら、ええな」天使にも見るダイバーシティ 2 待合のアクアリウムをじっと見る きっと今ならショパンが弾ける 3 ポタージュが恋しくなれば記念日を忘れることも愛しさのうち 4 ルービックキュー...
posted on 2021.9.4

果実

1 私です、ブルーベリーをジャムにするつもりもないのに潰したのは 2 手紙には書けないけれどやりました 柘榴朽ちれば赤いじゅうたん 3 できるだけ早く助けてくださいね ジャムにするには甘すぎるから 4 甘栗の一番大きいの...
posted on 2021.8.31

短歌 爪

1 美男美女ばかり出てくる作品のエキストラにもなれないネイル 2 雨が降る 泣く人泣いてるふりの人 誰の罪かはまだわからない 3 ふわふわの鳥はかわいい羽ばたいて早くお逃げよ(きっと美味しい) 4 きみのため爪を切る夜 ...
posted on 2021.8.26

短歌 化物

1 稜線の向こうにはもう何もない 白い絵の具を買って帰ろう 2 ゆりかごを燃やすための火吹き消して胎盤を食む生き物のこと 3 化物と呼ばれるために100点のテストに全部火をつけようか 4 火をつけるために100点を探すが...
posted on 2021.8.25

事態

1 嘘でしょ、のあとに嘘だとわかったら嘘が嘘でよかったと嘘つく 2 バス停で行き先のないバスを待つ隣でオツベルが辞書を引く 3 鳥かごで意味を飼ってはいけないとつぶやいた人ちゃんとほどけた 4 階段を半音ずつ降りてくださ...
posted on 2021.8.22

仕組み

1 聞こえないふりを貫け嗤い声はやがて必死な声になるから 2 鉄線の上で身動きしない鳩の代わりに空を汚しにゆこう 3 ハート型の雲よ浮かぶな結局は消えてしまうとばれてしまうよ 4 彼岸との接岸点に立っている優しいひとが見...
posted on 2021.8.21

短歌 鱗

1 風上にきみがいるなら薔薇だけを選びはだしで走って向かう 2 鮮魚たち値引きシールが光ってる閉店間際のいのちの値段 3 無精卵ずらりと並ぶコーナーの裏で売られる生理用品 4 遺言が暗号で記されており遺族が誰も解けないで...
posted on 2021.8.21

1 凪を待つ蝶々みたいに呼吸する 明日いいことありますように 2 死にたさをまだ剥がれないかさぶたの下に生まれる皮膚は知らない 3 きみが今どこで誰と何をしているなんて知らない(西風よ吹け) 4 壊れかけ何もきかせてくれ...
posted on 2021.8.3

短歌 四月馬鹿

1 四月馬鹿八月もまた騙されて拍手の渦に身を潜ませる 2 どうしたらいいかわからずどうにでもなれと引き金に手をかけた 3 リュックから長ネギがはみ出している彼の日常に差す黒い影 4 特急が見逃してきた過ちをSNSに上げる...
posted on 2021.8.3

短歌 夜明け

1 日に焼けたポスターの赤誰のせいにもできないニュース速報 2 諍いの声が聞こえる誰のせいだろう夜明けがこんなに遠い 3 論破って名前を犬につけましたどこへ行っても素直な論破 4 ヒンメリの影を指先で追いかけあっひとりか...
posted on 2021.7.30

1 蝉時雨まだ許されていない午後伝う汗まで私を責める 2 わからないことがわかると宝物ひとつ失くした気持ちが実る 3 月まででいいから早く連れてって片道切符で構わないから 4 老いという現実はにび色をしてどこへ行っても視...
posted on 2021.7.22

1 何回も同じCMの流れるリビングの隅に浮く金魚たち 2 夏祭りあやまちさえも彩りを増すか夜空の打ち上げ花火 3 真っ白なシューズをおろした夜なのに月が視界に飛び込んでくる 4 叫んだら許されますか良いことと悪いこととが...
posted on 2021.7.11

短歌 迷子

1 冷暗所で爪を噛んだおかげで孤独を辞書で引かなくて済む 2 おかしいな規則正しく生きてきた規則正しく生きてきたのに 3 生まれたらカウントダウンがはじまるから泣きながら生まれてきたの 4 だれだれがどこどこでなにをして...
posted on 2021.7.6

短歌 喪失

1 手鏡に向かい笑顔の練習を毎夜しているひとの屋根裏 2 喪ったひとを捜して鋲を打つ 二度とどこへも行けないように 3 ひろしたちひろしたちひろしのショパンは犬のサイズがやたらとでかい 4 マリー・アントワネットが最期に...
posted on 2021.7.3

短歌 関係

1 終わったら虹をみようと約束をしたのにすでに虹を見た顔 2 唯一の接点だった虹の根を残らず燃やすために微笑む 3 水たまりアドリブでしか暮らせない僕らを嗤うものだけが棲む 4 関係を問いかける声/続柄欄に無関係とだけ書...
posted on 2021.6.21

きみ

1 眠りからさめてまもなく迷子だと気づいたきみの見事なターン 2 風呂上がり湯気たつきみのくちびるがオペラをなぞる夏至の夜更けは 3 きみと手を繋ぐスクランブル 卵は手軽に割れるいのちだ 4 きみの目に映る私が笑っててエ...
posted on 2021.6.19

連鎖

1 ホームドアのない通過駅で固める決意ありデートに遅れるひとが増える 2 ホームドアのない駅に街宣車突っ込むみんなのことを守るためだと 3 猿から進化したにせよずいぶんと生きづらい形を選んだものだ 4 神さまがおつくりに...
posted on 2021.6.17

呼吸

1 かさぶたを剥がし呼吸を止めるときにだけ生まれ変わりを信じる 2 首を振る扇風機のごと拒否権があるのかそうかもう泣きそうだ 3 角砂糖溶けてゆくのを待っているそのあいだにも燃え尽きる星 4 あめ玉を転がす舌に憧れた夏の...
posted on 2021.6.11

短歌 雨

1 雨に添う少女の影を庇うため紫陽花たちが深呼吸する 2 人知れず閉じた心を携えてただ梅雨明けを恐れて暮らす 3 怪物に食い破られたワンピース雨がやんでも脱げないでいる 4 雨上がり叫んでいいと許可されて羽虫を潰すしかで...
posted on 2021.6.10

写真で短歌

posted on 2021.6.5

待合室

1 剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る 2 看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ 3 金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう 4 癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい...
posted on 2021.5.29

1 月蝕を隠した雲の優しさに気づいた人からほどかれてゆく 2 あの蝶があなたのような気がしては右から順に手にかけてゆく 3 動かない時計の針に触れているあなたのために水汲みにゆく 4 好きという呪いがとけてしまっても一緒...
posted on 2021.5.23

短歌 東京

1 阿佐ヶ谷の次は荻窪 正しさはレールの上の幻想として 2 生き方のハウツー本を手に取って泣けてきたなら間違ってない 3 今踏んだ蟻にも命があったことちゃんと忘れて生きてゆきます 4 線路から飛び立った鳩 間に合った鳩 ...
posted on 2021.5.12

ソーダ水

1 土曜日は海を見に行く大丈夫大丈夫って波が鳴くから 2 好きなひとのいちばん嫌なところまで好きになるってありなんですか 3 更新が止まったサイトで何年も明滅をする「新着!」の文字 4 ソーダ水に指を埋めれば(そんなこと...
posted on 2021.4.30

短歌 事件

1 あなたではない人だから遊園地なんて爆発すればいいのに 2 私さえ気にしなければこの式はとても素敵だ(あああ気になる) 3 落とし穴を作る人は悲しいね誰かが落ちるのが成果だもんな 4 他人事は他人事だけど対岸で火事がお...
posted on 2021.4.25

短歌 あれ

1 罪のない嘘をついても嘘は嘘昨日の自分はいつもかわいい 2 メロン入りメロンパンってありますか?何か不都合がありますか? 3 現代に介錯人がいるのならあの子の部屋に届けてあげて 4 長文のLINEに既読がつかないそろそ...
posted on 2021.4.18

短歌 静脈

1 ハミングをしても針に糸を通してもまだ永遠を編めないでいる 2 電車とは走る棺かもしれない 祈りを添えて朝が生まれる 3 眼球にきみが映ると寂しくて瞬きするの忘れてしまう 4 選択をしなかったほうの道にだけ咲く花がある...
posted on 2021.4.15

短歌 街

1 細胞が分裂をするときの音に耳を澄ませて生きております 2 やめてって言えば言うほどお願いが叶うんだって知ってた?(やめて) 3 東京に特許許可局はないことを悲愴なこととして伝える土鳩 4 人びとはすでに桜を忘れたかス...
posted on 2021.4.1

短歌 四月馬鹿

1 遊びではなかったと知り組んだ手がほどけなくなる児戯プレイング 2 結ばれず熟れゆく月が溶けるときうさぎの声でるるらと叫ぶ 3 きみはきみだけを信じていればいいなんて嘘なら私がついた 4 懐メロを口ずさむ私のとなりで壊...
posted on 2021.3.26

短歌 加工

1 スカートを揺らす花風 死んだってAIがいるからもう大丈夫 2 「新宿で人身事故が起きました」他人事としてアプリを閉じる 3 パスポート渡航予定に天国と書けば窓口のひとが微笑む 4 Facebook 亡き人の誕生日 あ...
posted on 2021.3.23

三日月

1 曇天を割って光ったスマホには返事の返事みたいのが来る 2 触れた舌すら体温をいつの日か失うことがこんなにこわい 3 ペーストをしたら見たことない星座が春のシーツにるんと生まれた 4 三日月が目薬の邪魔になるから毎回口...
posted on 2021.3.20

バランス

1 遠雷を聞くコンビニのイートインぬるいうどんが今はおいしい 2 忘れ物しか忘れずに生きてきたからノーベル賞をもらってもいい 3 生まれ変わったらシーソーのまんなかでバランスをとる名人になる 4 名を呼ばれても振り向かず...
posted on 2021.3.19

短歌 他人事

1 ステータス「どく」のまんまで日の入りを待っている道もう歩けない 2 春雷に傘はいらないもう少しだけ罪人でいさせてほしい 3 傘さして雨粒にさえ拒まれて骨になるまでひとりでいたい 4 焼きたてのパンをちぎってくれたから...
posted on 2021.3.12

1 捨てられるだけの尾ひれがひらひらと彼岸で我を手招いている 2 この街にかもめはいない錆びた目をひっさげ歩く魚ならいる 3 包丁のせなで弾かれゆく鱗きらきらとしてああ生きていた 4 包丁でずんと切断した頭部にごめんと添...
posted on 2021.3.8

勾配

1 若さとはあっという間に過ぎるからせめて各駅停車で帰る 2 切り分けたケーキの小さいほう選ぶそういう人から幸せになれ 3 春、薄いブラウスをすぐ脱ぐときの罪悪感は酸味が強い 4 ポケットにあったプリクラ加工機能なんてな...
posted on 2021.3.5

短歌 声援

1 右上に赤い数字が灯るたび白い小鳥がぴこりんと笑む 2 切りすぎた前髪を誰も気にしない本日はよく晴れていますね 3 しゃぶしゃぶと2回言わなきゃいけないと道徳の時間に知りました 4 がんばれやごめんなさいが命令形なんて...
posted on 2021.3.1

短歌 雲雀

1 宝箱閉じるみたいに命日がいつになるかは触れないでおく 2 By the way , why were you the rain? ってなんで英語で遺言するの 3 編み物が好きでしたよねよくここで変な模様を編んでいまし...
posted on 2021.2.28

短歌 如月

1 モーションはスローでエモーションはリピートで若さは早送り 2 勾配のきつい坂道下るひと「ああ人生ってこういう感じ」 3 残高の0が減るたび天国が近づいてくる(そういう仕組み) 4 きみの傷、憂鬱、死にたくなる気持ち ...
posted on 2021.2.22

短歌 ねこ

1 フライパンのうえで色づく目玉焼きはいつも私をじっと見ている 2 合い挽きを合成獣と認識しハンバーガーを口にする夜 3 問)黒い帯が目元に描かれた履歴書を受け取る人の気持ちは? 4 渦巻きを眺めていると右側に首が傾いて...
posted on 2021.2.13

短歌 ゆれる

1 ゆれるゆれるゆれるゆれるゆれる(存在をさせていただいております) 2 おくすりをもらいにゆく日許可されてもう一ヶ月生き延びてみる 3 八月は今も苦手だ終わるとき左手首が疼いてしまう 4 あなたこそ雨 と走り書きされた...
posted on 2021.2.6

短歌 「は」

1 白シャツでカレーうどんを食べるひとだから私は惹かれたのです 2 真夜中にきみの寝言で目覚めても首を絞めたりはしないからね 3 おやすみは優しい響き また明日目を覚ましてもいいなと思う 4 あなたにはわかるはずない痛み...
posted on 2021.2.4

短歌 癖

1 風を呼ぶさかさまつげにマスカラを塗ったとたんにほころんだ春 2 苦しいと瞬きをする癖があり診断したがる人種がいる 3 大丈夫大丈夫って口癖は大丈夫じゃないときに出てくる 4 雨上がり間違いなんてなかったとスタッカート...
posted on 2021.2.1

1 ト音記号へし折ってから五線譜に愛を書き足したの誰ですか 2 ドップラー効果でしょうかついさっききみの口からしねときこえた 3 大嫌い 言った直後に口の中がひどく酸っぱくなるほど大好き 4 後遺症←自己責任原則転嫁〈義...
posted on 2021.1.24

1 大切なことは二度言う隠したいことは何度も言って誤魔化す 2 に、ん、げ、ん、は悲しい響き我慢して逃げないって言ってるみたい 3 獣から人に戻るときにまとうその切れ端でいいからなりたい 4 食べ物と暮らしています ぴー...
posted on 2021.1.24

短歌 ですとろい

1   夢をみる夢からさめて夢のなか わたしは火星探査のとちゅう 2   標識に〈人に注意〉の表示あり 確かに気をつけなければならない 3   体温を測るたんびに季節とはうつろいゆくとデジタル表示 4   神さまが来ない...
posted on 2021.1.21

歌集未掲載の歌

1 ハモニカが上手に吹けたそれだけであのころ呼吸も上手だった 2 さかあがりはじめてできた帰り道 お母さんの赤いマニキュアきらり 3 制服のポケットに隠したカッターを出せないままでもう三学期 4 夢 希望 みんな仲良く ...
posted on 2021.1.9

短歌 前日

1 いちご味といちごは違うそれだけで絶望できた頃に戻ろう 2 レモンを家の本棚に隠して本当に爆弾になる半年後 3 青春はビタミンCが過剰です風邪を引いても平気なくらい 4 くしゃみして一歩だけ死に近づいてすぐに離れてそれ...
posted on 2020.12.28

短歌 忘れ物

1 伸びすぎた爪を切るとき残酷になりきれなくて過去が居残る 2 パーフェクト百点満点ですあとは欠けてゆくのを待つだけの刑 3 月見そば最初に黄身を潰すきみ なにが大事かわかっているの 4 光こそすべてであれと祈るひとまぶ...
posted on 2020.12.27

1 はりつめたミルクの膜を破るときスプーンだけが知った背徳 2 飽きられたおもちゃを捨てるゴミの日に印をつけてあるカレンダー 3 クリスマス過ぎ去ったあと残されたサンタの脱衣を門松に刺す 4 平等は大切なこと死ぬことも生...
posted on 2020.12.26

短歌 日常

1 踏切の遮断機が好きあの世とはこの世の続きと教えてくれる 2 初恋は片側交互通行の道路みたいにすぐにつかえる 3 朝寝坊してもいいって気がついた朝に限って頭は冴える 4 助手席は特等席だアクセルを踏んだら消えるボーダー...
posted on 2020.12.21

三つ編み

1 いつの間に秋はどこまでいったやら知っている人は黙っている 2 三つ編みをほどいて笑う練習をするための部屋は虚無の在り処 3 鍵かけた日記の鍵を失くしたらあの日のことは永遠になる 4 冬だから飛び降りる場所も寒いしみか...
posted on 2020.12.16

片想い

1 クリスマスまでにかわいくなりたくてワンピに託す時限爆弾 2 何してもきみが思考の邪魔をする好きにならせた罪を償え 3 既読からはや1時間返信の来ないスマホと沈没したい 4 告白の練習をしてクッションを壁に打つのが上手...
posted on 2020.12.13

短歌 輝き

1 手に入れたとたん輝き失くすから大事なものは遠くから見る 2 苗字から下の名前になった日の胸の痛みを日記に残す 3 口ぐせを笑ってくれた人がいて冬の空にも虹が架かって 4 今度いつ会えるかなってLINEして既読を待てず...
posted on 2020.12.10

短歌 イルミネーション

1 まんなかにふたりの指が交差して寂しさ埋めるイルミネーション 2 街角のイルミネーションまた少し息が苦しい綺麗なだけで 3 明滅のイルミネーションに隠れて笑ったきみの出すSOS 4 広告によく知らない有名人 イルミネー...
posted on 2020.11.29

冬202011

1 まだ指で疵を数えている人に初冬の風は容赦なく吹く 2 吐く息が白くなったら人々は大事な人を想うのだろう 3 あんまんを分けあう人がいたとして基本的には一人で食べる 4 泣くこともできずに心凍らせたきみのとなりにストー...
posted on 2020.11.25

短歌 秋

1 流行に乗り香水を買ったけど自分のせいにされたくはない 2 散り終えたあとの枝にもブランコの紐が括られ少女が遊ぶ 3 あたためたミルクに張った膜ひとつ曖昧なまま破る真夜中 4 金魚鉢ひとり寂しくないのかと問うてもゆらら...
posted on 2020.11.20

文房具

1 叫んだら届くだなんて嘘でしょうボールペンさえ消せる時代だ 2 削るほど鋭利になってく鉛筆は心模様の代弁をする 3 落書きを消すためだけに使用する修正液が上塗ったもの 4 人を刺すことさえできる道具にてきみに手紙をした...
posted on 2020.11.18

短歌 風

1 木枯らしは過日のきみの歌声を遠く遠くへ連れ去ってゆく 2 スカートをめくる北風もしかして私は恋をしたんでしょうか 3 傾いて置かれたままの写真立てのなかのきみは風を知らない 4 落ち葉舞う朝を迎えて別れだけ必然である...
posted on 2020.11.16

短歌 カクテル

1 背伸びしてキールを飲んだ5分後にくたっと肩に寄りかかるきみ 2 新しいリップを買ったばかりでも別れ話に関係はない 3 ふられた日ブルームーンを飲み干して海を見にいく予定を立てる 4 リクエストソングにとことん励まされ...
posted on 2020.11.13

恋する星座

1 偶然が必然になる瞬間は辞書には「恋」と記されている 2 また会える約束だけがオリオンのとなりで今も瞬いている 3 綺麗事という必要悪があり今日もなんとか生きてゆけます 4 オリオンのいちばん右で光る子はあたしの好きな...
posted on 2020.11.11

短歌 晩秋のカニ

1 コンビニで肉まんを買ういつもの儀式のように冬が近づく 2 道端に冷えたコインが落ちていて寂しくなっていいのだと知る 3 1プラス1が2になるとき0はレゾンデートルを探しはじめる 4 くちびるをくっと上げたら虚しさに勝...
posted on 2020.11.8

短歌 のど飴

1 のど飴をくれた人から幸せになれる仕組みを早く作って 2 口当たりのいい言葉を多用する優しい人を見たことがない 3 自己犠牲という言葉を知らずとも「みんな違ってみんな」がそれだ 4 誰かさんの機嫌のために潰されるこころ...
posted on 2020.11.5

短歌 霜月

1 心にも花が咲くとはいうけれど根を張る場所を誰も知らない 2 踏切の赤いランプが明滅に溺れるたびに仔猫がよぎる 3 桜などモブでしかない霜月の街路にひとり佇む天使 4 そのままのあなたでいいと言われてもトゲが刺さったま...
posted on 2020.11.2

短歌 きみのとなり

1 行き先を知らないバスに乗るようなきみのとなりで過ごす日常 2 いつかまたきみが壊れてしまったらリビングの薔薇を新しくする 3 美学には程遠い場所にある生き様をどうか笑っていつもみたいに 4 駅前のネオンがちかり瞬いて...
posted on 2020.11.1

短歌 空が青すぎた日

1 青空はとうにふたりを見放して気づけば秋も過ぎ去ってゆく 2 泣いたなら強くなれるの仰ぎ見た空にひとつも雲はいなくて 3 いい天気あまりに今日はいい天気きみが堕ちても気づかないほど 4 すずかけの葉っぱも枯れて踏まれれ...
posted on 2020.10.27

短歌 天気雨

1 いつの日かわかりあえると信じてもブルーブラックインクは滲む 2 私から嫌いになると思うからもう少しだけここにいさせて 3 おやすみがうまくいえないまた明日会えるはずだと信じられずに 4 ジュテームの意味も知らずに愛犬...
posted on 2020.10.23

コンビニ

1 このおかずあたためますか?と訊かれてお願いしますと涙ぐむ夜 2 新作のスイーツ登場またひとつ我の行手を阻む刺客め 3 同じ色同じカロリー同じ味 棚に並んだドリアの小海老 4 午前2時になるとひとつの街明かりとなって孤...
posted on 2020.10.20

短歌 コーヒー

1 ブラックに口をつけたら短めのワンピを着てもいいと思った 2 溶けてゆくミルクを混ぜることもなくひとつになるのをじっと待ってる 3 いつも朝にきみが淹れる一杯は視界を明るく照らすルーティン 4 切りすぎた前髪にまだ気づ...
posted on 2020.10.18

1 もしきみが降ってくるなら曇天も悪くはないな(傘はいらない) 2 新しい傘を買った日誰よりも雨に焦がれているワンピース 3 うろこ雲のしっぽ目で追う横顔をずっと眺めていようと誓う 4 もしきみが雨予報なら大きめで丈夫な...
posted on 2020.10.17

ピアス

1 まだなにもわかっていないことだけはわかったそんな気がするだけだ 2 すごろくのあがりのマスのすぐそばにふり出しに戻るマスがある 3 コスモスの花冠に触れたくて触れたら朽ちるそんな関係 4 白鳩の羽ばたく姿をレコードに...
posted on 2020.10.15

短歌 沈黙

1 赤い羽根飾ったひとの何割が鳥の痛みを思うのだろう 2 いっせーの、でジャンプをしよう二分後に特急新宿行きが来るから 3 テーブルに並ぶナイフとフォーク見て「切って刺す」って呟いたきみ 4 花束と拳銃ならば花束を選んで...
posted on 2020.10.10

短歌 恋人

1 きみの住む街へと進む各駅に乗り換えるとき降る三連符 2 特別じゃなくてきみにとっての当たり前になりたいだけです 3 秘密って甘いにおいがするんだね「ごめん」だなんて通用しない 4 なにごともなかったみたく読書する文字...
posted on 2020.10.9

短歌 ドーナツ

1 ドーナツの穴をのぞけばその先にいつも通りに壊れてるきみ 2 食べかけのドーナツでいい差し出せるものはなんでもきみからほしい 3 腕時計だと思ってたよく見たらちっさなオールドファッションじゃないか 4 また一個余ってし...
posted on 2020.10.5

短歌 わがまま

1 わがままを許してくれた夜のこと永遠にして胸に沈める 2 きみの目のなかの私はなぜかしらいつも寂しい顔をしている 3 トンネルを抜けてはじめて助手席のきみの涙の意味がわかった 4 秋風は出せずじまいのお手紙の正しい弔い...
posted on 2020.9.26

短歌 星くず

1 (さよならを忘れたみたい)奇遇だね僕もどこかに落としたみたい 2 曇天を裂いたひかりをこめかみにあてて神さまごっこする午後 3 いつの日か同じ家路につけたなら今日の痛みも記念としよう 4 コーヒーに溶けたミルクをかき...
posted on 2020.9.23

短歌 唐揚げ

1 花ひらくそのモーションは容赦なくあたしを奪う 誰か助けて 2 優しさが崩れる瞬間(とき)に口走る「ごめんなさい」は脅迫として 3 朽ちた枝さえ必要とする虫がいる 生きるばかりのあたしよりもだ 4 「役に立つ」が礼賛さ...
posted on 2020.9.20

短歌 蝶々

1 蝶々がひらりひらりと好き・きらい 占うためにむしりむしりと 2 命とは思えないほど美しく命とは思えないほどに儚い飛翔 3 翅があればどこでも行ける気がしてた虫かご埋める元いのちたち 4 薔薇さえも朽ちるを知って手の中...
posted on 2020.9.17

短歌 パンタグラフ

1 まばたきを忘れてました目の前できみがアイスのふたを舐めてて 2 線路沿いすすきが群れて揺れておりそろそろ壊れていいと気づく 3 ななめったパンタグラフが通過したあとに居残るあの日のふたり 4 坂道の頂にいてこの手には...
posted on 2020.9.14

短歌 予報

1 今日はまだ一人でいたい気分なの豪雨予報はいつも外れる 2 予報には誰かが降ると書いてありたぶん私のことなんだろう 3 低気圧ばかりが胸に去来してしととまぶたを濡らしてばかり 4 涙よりしょっぱいものがあるものか人はそ...
posted on 2020.9.13

短歌 雨

1 さなぎから孵れなかった者だけが曇天の日に笑ってもいい 2 黄信号でアクセルを踏むきみだからひとのむごさをよく知っている 3 助手席で雨の予報に気がついて横顔見るともう降っていた 4 写真館にて留められた「今」たちが手...
posted on 2020.9.12

短歌 新宿再び

1 世紀末みたい金曜日の夜は(なかったことにできたならいい) 2 新宿にシンジュが隠れていることにもう意味がない すべてきらめき 3 西口のネオンサインの暗いとこ そういうふうに生きていけたら 4 本当は寂しいくせに「助...
posted on 2020.9.10

短歌 粉々

1 手のひらに星を閉じこめ大丈夫いつかいつかと言い訳をする 2 風船が割れてしまったと泣く子のサンダルの下にバラバラの蝶 3 すすきの穂だらんと揺れて手まねきと認識をするぼくの瞳孔 4 すずなりのぶどうひと粒もぎるあの感...
posted on 2020.9.8

1 骨だけの傘を広げ歩くきみのとなりでちゃんと泣いてる私 2 悪人(とされる)ひとが捕まってそれでも誰も救われぬ街 3 唇がそういう場所と知った日の麦茶の苦さを忘れられない 4 扇風機は居場所をなくしバラバラにされるとこ...
posted on 2020.9.4

短歌 theザ座

1 今はただ瞳を閉じていたいんだ 流星群は夜空の自傷 2 夜空にも居場所がないので寂しさをきみの隣に置いておきます 3 光から逃れ逃れて部屋の隅 水槽の中で笑う夜光虫 4 振ってからコーラを開ける冒険に出ようきみから開け...
posted on 2020.8.31

風鈴

1. ちりんちりんと軽やかな金属音が耳に心地よい。今日は少し風があるようだ。揺れる風鈴の姿こそ見えないが、季節が確実に巡っているのを感じることができる。風鈴はいつからあそこに飾ってあって、なぜ夏が過ぎても仕舞われないのか...
posted on 2020.8.30

短歌 自由

1 水槽がひとつ置かれた部屋にある「自由」を喧伝するポスター 2 夏末期ああ自由へと発つために屋上の鍵を早くください 3 つけっぱなしのテレビとスマホを消せたら自分の停止ボタンも押せる 4 酷似したくらげは同じラベルを着...
posted on 2020.8.28

短歌 包帯

1 夏が逝く ただそれだけを理由とし左手首の傷がふえてく 2 パスワード管理アプリのパスワードを忘れた 今日のお風呂はぬるい 3 もしきみが湯舟の底に沈んでも地球は回る 思い出として 4 美しいとはたぶんきみのこと/なら...
posted on 2020.8.27

東京

1 ずぶ濡れになった私をからかってもらうつもりで傘を忘れた 2 秒針に月明かり降る秋が来る 私も好きにしていいかしら 3 駅前のおにくやさんのコロッケが今も恋しい東京暮らし 4 「寂しいね」寂しくないといえなくて「うん寂...
posted on 2020.8.25

晩夏

1 正座してOasisを聴くひともいる 多様性って大事なんだな 2 ペンたてにネギ立てるのと泣き歌をほんとに泣いて歌うのやめて 3 「ベランダに蝉が突っ込みママが踏みました」絵日記でバレる凶行 4 光からお手紙ついた陰っ...
posted on 2020.8.22

そら

1 一歩ずつ進んでいけばそれでよい誰もが空に裁かれている 2 足もとに蝉が転がる 雷鳴と明滅するあなたの横顔 3 雨ののちまた雨が降ることを知り炎天下さえ信じていない 4 真っ白なシャツにぽつんとついた赤いろはたぶんあな...
posted on 2020.8.20

短歌 友だち

1 「私たち友だちだよね」確認をする時点で甚だ疑問 2 【友だちは多いほうがいい】学校で一番初めに教わる嘘 3 思春期に負った傷は絶縁体 六弦を弾く指が汗ばむ 4 トレンドやゴシップ記事より夕暮れに吹く陸風を肌で感じろ ...
posted on 2020.8.20

短歌 夏祭り

1 待ち合わせ浴衣姿のきみ探し高鳴る僕の鼓動とスマホ 2 ピンク色のひよこの可愛げにかしげる首の脆さは尊さ 3 うす紙に掬われた金魚ぱくぱくと呼吸と復讐を希求している 4 祭ばやしのせいで逃げてくヨーヨーがきみの気持ちだ...
posted on 2020.8.9

短歌 中央線

1 操車場にはオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる 2 終点に着いたところでこの僕に行き場がないことに変わりはない 3 各駅に止まる人生でよかった あの軒先には風鈴がある 4 蝉の声かき消してゆく列車たち 僕にだ...
posted on 2020.7.22

短歌 カナ

1 バタフライピーのピーは伏せ字という嘘を信じている夏休み 2 ブルーハワイ食べ終えたあと正体をべろんと見せて火星に還る 3 プレミアムフライデーって覚えてる? 馬鹿にしないで歴史は得意 4 シャボン玉 大きくすれば飛び...
posted on 2020.7.18

魔物

1 溶けかけの氷に棲んでいた魔物 誰も知らない夏の夕暮れ 2 熱発しようやくあえる人がいる 彼岸へ渡ったゆきちゃんという 3 コーヒーはブラックで職場はホワイトで見上げた空は曖昧なグレー 4 かたつむり両の耳朶まで顔を出...
posted on 2020.7.13

視野

1 Twitterアプリを消してトレンドを知らない午後に心地よい風 2 伸びすぎた前髪はでも切らないでフィルター越しがちょうど良い視野 3 第六次世界大戦の後くらい 大人がちゃんと謝れるのは 4 停車駅に選ばれなかったホ...
posted on 2020.7.10

短歌 中指

1 教科書を有害図書に指定せよ量産される「僕悪くない」 2 芽を摘んではみ出た枝葉を切り落としその仕上がりを「優良」とする 3 笑われぬために必死に笑っては自慰の途中で泣き出す娘 4 医師免許弁護士資格教祖様 チューイン...
posted on 2020.6.23

短歌 都会

1 雨やどりさせてくださいその胸は私のための空間でしょう 2 きいたことない曲ばかり再生し昭和生まれ!と誹りを受ける 3 野良犬を見なくなったねみんなよくいうことをきくいい子たちだね 4 Uの字のへちまを見つけたら新作の...
posted on 2020.6.14

短歌 未来

1 生まれ変わりがもしあるのなら九十九里浜の砂の一粒がいい 2 濡れそぼる後ろ姿を発見し声張り上げる「新しい顔よ」 3 永遠はその辺にある(まさか、え、まさか)そのまさかです 4 限界を越えて見せろというのならまずは手本...
posted on 2020.6.10

短歌 デート

1 ためいきのその先にあるほんとうを知るために今日ペディキュアをぬる 2 新しいスカートにキャミ合わせたら気づいてくれるなどファンタジー 3 耳たぶが厚いんだねと触れられて反則技を見逃すピアス 4 はちみつがなぜ甘いかを...
posted on 2020.6.9

短歌 カナ

1 うまそうにマック頬張る顔を見てどこに惚れたか検索をする 2 今買うと百万円のこのツボがなんと三日で壊れて消える 3 言い訳を考えている顔をしていること割とバレてますけど 4 分度器を売ってるコンビニを探して月の裏側ま...
posted on 2020.6.7

短歌 箱

1 矛盾しているってきみは泣くけれど色恋沙汰に論理は不要 2 うらおもてが許されるのは人生が野球にとても似ているからさ 3 リビングでムーンウォークの練習をしているきみ、たぶん捕まる 4 この部屋も宇宙の歴史の一ページと...
posted on 2020.6.5

短歌 恋人

1 と指チョコレート越しにあわせて買ったばかりのシーツに沈む 2 耳たぶに触れるときまだためらいがあるからきみをまた好きになる 3 屈服はきみにだけする もし明日世界が終わると脅されたって 4 きみが好きな味のポテチは売...
posted on 2020.6.1

1 真っ黒な雲を呼んだのきみですか 高確率で僕は打たれる  2 紫陽花をひとつ手折って差し出せどそれは死体と言い捨てるきみ  3 鉛筆をナイフで削る音がするごめんなさいを言いそびれてる  4...
posted on 2020.5.29

1 あなたから借りた詩集を開けずにうずくまってる金曜の午後 2 蝶々の不規則な軌道を追ううちやがてあなたにぶつかる視線 3 陽光のあたる窓辺でふたりして黙って揺れる雷を待つ 4 「深呼吸したほうがいい顔色があまりよくない...
posted on 2020.5.28

短歌 家電

1 扇風機に「あー」と向きあうきみをそろそろ火星人が迎えにくる 2 ペアリングできない機器ももしかして孤独なんかを知るのだろうか 3 前髪の分け目を変えた朝なのにきみは生きるのが下手なままか 4 花柄と水玉が好きだといえ...
posted on 2020.5.23

短歌 喫茶店

1 汗をかくグラスに遺るきみのあと たった二文字が言えなかった 2 頬杖をついて見つめる先にいる大きな蝿にさえ嫉妬する 3 本当は左利きだと知ってたらきみのひだりを支配したのに 4 曇天が晴れ空に化け何事もなかったように...
posted on 2020.5.22

短歌 部屋

1 音もなく暮れる小部屋の片隅で誰かの悲鳴に耳を澄ます 2 わからないことはスマホで調べようたとえばきみの好きな人とか 3 指先で燕の飛影おいかけてふちに当たって寂しくなって 4 どこかしらから聞こえくるサイレンはどこか...
posted on 2020.5.21

短歌 街

1 「飛べるはず」から「はず」だけが剥がれ落ち中央線の線路見つめる 2 他人事として過ぎてゆくカタコトン線路の温度に気づかずコトン 3 ふたりして夜に食べられそれからは街灯の蛾にさえ怯えて踊る 4 もし5月に雪が降ったら...
posted on 2020.5.19

短歌 色彩

1 太陽を赤色で描く子どもらの瞳に映るはじめての嘘 2 「本当に削除しますか?」の画面に選択肢が「はい」と「Yes」しかない 3 風を受けはためくTシャツの裾っこを触ってもいい季節ですよね 4 不安から恐怖に変わる瞬間の...
posted on 2020.5.17

短歌 許さない

1 頬杖をついて読書をしてるけどさっきのことは内緒なのかな 2 それ以上優しくしたら許さない本気で私を壊しにきてよ 3 わからないことほど面白いけれどきみを超える謎なんてない 4 よく熟れたいちごをひと口で食べ切る潔さな...
posted on 2020.5.16

短歌 打たれる権利

1 黒い猫として生まれて疎まれてそれでも雨に打たれる権利 2 街じゅうに傘の花咲く 正しさはどこにもないと数人気づく 3 銅像の濡れそぼっても堂々ともろてを伸ばす先の暁光 4 夜が明けてまだしとしとと降ってたら私たちきっ...
posted on 2020.5.15

短歌 風

1 ライオンもウサギもヒトもみんなして心臓ひとつ風にまかせて 2 ラジオから聞こえたきみのSOS ごめんradikoじゃ一分遅れ 3 扇風機ひとりぐるぐると回って虚しいところが私みたい 4 飛べるはず空ではなくて影のほう...
posted on 2020.5.13

短歌 魚

1 キラキラときれいごとほどよく光る死んだ魚のうろこみたいに 2 新鮮なうちに早めに召し上がれうらみつらみもねたみもすべて 3 痛覚がなくてよかったという人が舌鼓を打つあなたの残滓 4 泳がせていた筈のこいが消え去り幻を...
posted on 2020.5.12

短歌 ふたり

1 溶けてゆくバニラアイスを目で追ってなんだかんだで気持ちに気づく 2 包丁を握るその手がもし私のためにあるなら怪我はしないで 3 きみの目に映るわたしはかもめの目をしてきみのことだけ見ている 4 帰り際「楽しかったね」...
posted on 2020.5.10

短歌 ピンク

1 明け方にピンク・フロイド聴くきみを迷惑なんて思わない 好き 2 影踏みで勝ったことない紅組も白組もみな混ざりあってた 3 旅に出たモモイロペリカン捕まり居場所はここじゃないと泣いてた 4 好きな色はと聞かれてピンクだ...
posted on 2020.5.8

短歌 塩

1 他人事としてサイレンの声を聞くうちのスープはあったかいなあ 2 質問がないならこれで終わります(終わらせるのは何もかもです) 3 まぼろしの埋蔵金を見つけたらテレビクルーが来てくれるかな 4 闇堕ちは正規ルートの花道...
posted on 2020.5.7

短歌 白

1 雷鳴を受けて微笑むきみがまた万華鏡と手すさびをする夜 2 眠りより優しいものがあるとして信じないのは私の自由 3 また消して書いては消してまた書いて結局捨てたきみへの懺悔 4 みじん切りするとき添える親指の無事を願え...
posted on 2020.5.5

今日の短歌 ダンス

1 目くじらはどこにいるのかと問う子は大きな海しか知らないんだな 2 消したって無かったことにはできない消しゴムかすがすべて知ってる 3 へちまって役に立つからこのへちま!は確か褒め言葉だよ 4 日陰には日陰の良さがある...
posted on 2020.4.30

短歌 ミサンガ

1 傷つけるための強さは弱さだと教えてくれたきみも血まみれ 2 許せないことは大抵許さないことと気づけば薫風の吹く 3 葉桜が映える青空の下には忘れ去られたミサンガのくず 4 詳しくはWEBで続きはCMのあとでほんとのこ...
posted on 2020.4.26

短歌 朝

1 モーニングコールで起きないきみのため時計仕掛けのタライを吊るす 2 夢のなかで誰となにしていたのかと8年経っても嫉妬している 3 目覚ましににナンバーガールかけるきみの朝の不機嫌の理由はそれ 4 目玉焼きのかたさの好...
posted on 2020.4.22

短歌 旅

1 誰一人として噛み合うことのない歯車として朽ちてゆくのか 2 耳の中に海があったらひねもすに波音とだけお喋りできる 3 神さまはどこへいったか僕だけが知っていること秘密にしてね 4 疑心暗鬼を討ち倒したって嘘をつくまた...
posted on 2020.4.19

短歌 隣

1 懐メロを思い出として聴くきみの隣は歴史の勉強になる 2 背くらべて爪先立ちしても足りないその差が気持ちの距離だったなら 3 はんぶんこと呼べたならよかったな真っ二つにされ哀れなケーキ 4 真剣にタルト・タタンを食むき...
posted on 2020.4.18

短歌 宇宙

1 UFOを見たんだなんていうけれど土産がもなかなんてあんまり 2 金星が逆回転をしはじめた そんなことより外は土砂降り 3 もういない星の光が目に届く 隣に立つきみの袖を引っぱる 4 水たまり 月が半分だけ映る そうね...
posted on 2020.4.15

短歌 兎

1 もしもまた恋に落ちたら一番にハシゴ担いで来てくれますか 2 抜け殻を集めてまわる趣味のひと午後5時ごろのニュースになってた 3 眠らない眠りたくない眠れない いずれにしてもあなたのせいだ 4 水蒸気みたいに未練が消え...
posted on 2020.4.14

短歌 足し算

1 三つ編みを解いた後のうねうねで女神の気分 きみをさきたい 2 ライバルにオールドファッションをとられて不機嫌なのも了解しました 3 僕は雨降りの日にだけ現れて君の背中を潤すかもめ 4 難しい言葉を知っているんだねハレ...
posted on 2020.4.9

短歌 映画

1 ここまではフィクションですがここからをフィクションにするかはあなた次第 2 本当に白馬で来られたら困る甲州街道が渋滞するから 3 めでたしのその後が知りたくてパンフの裏表紙を陽光に透かす 4 シジミチョウ捕まえ瓶に詰...
posted on 2020.4.8

短歌 辞書

1 「雨が降る」と引くと「苦悩する」ことと同じと載ってる辞書がほしい 2 宇宙とはただの奇跡で偶然でそのくせ等しく必然らしい 3 真っ白なパレットに広げた白色の絵具の行方を知りたくて切る 4 なんだってわかるのスマホさえ...
posted on 2020.4.2

短歌 卯月

1 四月馬鹿五月凡才六月に本気出すからそこで待ってろ 2 天井の蛍光灯の明滅を数えて過ぎる青春もある 3 「ピカピカの一年生」がなぜマイナーコードなのかがさっきわかった 4 友達を百人作れというのならあなたが先に手本を見...
posted on 2020.3.25

短歌 言い訳

1 目的地まであと三歩届かずに三歩ごまかし過ごす生きかた 2 マジシャンの本気の恋は種明かしできないゆえにひどく不評だ 3 夜が天から階段を降りてきて夕焼け抱いたのが動機です 4 行先のわからないバスを降りられずふたりぼ...
posted on 2020.3.19

短歌 過去形

1 許可もなく生きてたカエル 許可を取り理科の時間に解剖をする 2 優・良・可じゃなく不可の奥にあるほんとのことを書いてください 3 物故者の欄に確かに載っている私の名前が10ptで 4 涙まで織り込み済みの「おめでとう...
posted on 2020.3.7

短歌 卒業式

1 書くことを探して結局「これからもよろしくね」って嘘を残した 2 黒板の右下に名が載るたびに笑われたからもう笑おうか 3 教室の窓ガラス一枚ですら割れずに過ぎる正しい青春 4 嘘をつき立ち回りよく空気読む 全部教室で学...
posted on 2020.3.3

短歌 ペンギンサラダ

1 不機嫌なきみの向かいで風水のせいにしてみるケンカの理由 2 お湯足せばまだ味が出るのに席を立つような人とは生きてゆけない 3 よく食べてよく寝て笑いお薬を飲んでいるけど苦しい 許せ 4 血を吐いたこともないけどつらい...
posted on 2020.3.1

短歌 弥生

1 おさなごの駄々こねる声なつかしくあの子も私に溶けるひかり 2 青春がうまく弾けないアルペジオだったと気づく視聴覚室 3 正答が正当化するプロセスのよこで首吊りしていたあなた 4 窓の外に顔つき出して見上げても如月なん...
posted on 2020.2.4

短歌 きみ

1 寝坊助のきみのほっぺをつねるとき我は稀代の悪者となる 2 もしきみが病める朝にはアラームを止めて私もそっと閉ざそう 3 ワイシャツの襟を直してあげるとき きみは黙ってペンギンになる 4 三日月を美味しそうだというきみ...
posted on 2020.1.31

短歌 穴

1 愛がもし海によく似たものならばなるべく広く深くありたい 2 使い捨てカイロに礼を言ってから捨てるあなたのあたたかいクセ 3 錆び付いて誰も乗らないブランコを揺らすみたいな愛の告白 4 秘密などなにひとつない愛しさがあ...
posted on 2020.1.31

短歌 ぬるい

1 どうしてもあなたのことが許せない なぜ目薬にわさびを混ぜた 2 入口が出口で入口が出口 人は自覚の足りない迷子 3 生ハムが生きたハムだと思ってたあの頃皿はまだ白かった 4 脳内に住むおっさんの口ぐせは「まぁいいじゃ...
posted on 2020.1.19

短歌 手

1 言い訳を並べるだけの「すみません」手にかけたくはなかったけれど 2 鉛筆をナイフで削る指先はおそらく誰も傷をつけない 3 レシピには載らないものを手に入れて料理サイトでエラーになった 4 幼い日ごつごつしてた父の手を...
posted on 2020.1.18

短歌 月

1 きみはまた私がすきだなどという そんなことより月がきれいだ 2 ピアノよりきれいな声で泣けるなら今すぐここで泣かせてあげる 3 春を待つきみのとなりで雪を知る たぶん私の早とちりかな 4 整った食器棚には嘘がある 短...
posted on 2020.1.9

短歌 ひみつ

1 君の横空いているなら1名で今すぐ予約させてください 2 言い訳を探してるうち春が来て夏去り秋に枯れ果てるひと 3 折る指も足りなくなって心臓を差し出しました きみに逢いたい 4 髪の毛も爪も裸もきみのため気を衒わずに...
posted on 2020.1.5

短歌 願いごと

1 首を吊るための道具と知っていてあなたに贈る手編みのマフラー 2 飴玉を転がす舌先を眺める 赤色3号はたぶん私 3 手を繋ぎおんなじ月を見上げても一つになれない 寒さのせいだ 4 道端に落ち葉に隠れ朽ちていた小鳥の死骸...
posted on 2019.11.8

短歌 挨拶

1 死にたさは生きたさですと教科書に載っていたから絶対に嘘 2 階段が天国にまで続いててああよかったなって一歩踏み出す 3 目の前を通過列車が過ぎてってあたしのこころだけ轢いてった 4 帰り道赤信号だけを選んで歩いたけれ...
posted on 2019.11.7

短歌 優しさ

1 ふりこって誰がどうあれあるがままふれているから羨ましいな 2 心臓の奥の奥より奥のほう 君が粗末に捨てたまごころ 3 優しさは流行らないから味のないガムを選んで渋谷を歩く 4 ふたりして爪を噛むからふたりしてひとりぼ...
posted on 2019.10.1

短歌 放置

1 断言が断罪になるというのなら早く私を馬鹿と貶して 2 この駅に快速列車が止まらないのも寂しさも私のせいだ 3 鈴虫に唆されて僕はいま誰も知らないソリストになる 4 メロディを重ねるたびに嘘がほらバレていくから早く歌お...
posted on 2019.9.26

短歌 悲観

1 こめかみがなんか痛むと思ったら背後で君が微笑んでいた  2 低気圧のせいにしようかなにもかも しばらく歩き出せそうにない  3 黒猫が忌み嫌われているように私が居ると薔薇も枯れます  4 苦しみをほどくことだけ考えて...
posted on 2019.9.16

短歌 妖精

1 番号の中に私の誕生日が隠れてるからスマホごと好き  2 「嫌いだ」と口に出せれば大丈夫 その素直さで生きのびてゆけ  3 石ころは磨けば光るわけじゃない 輝きなんてただの傷あと  4 行列のできる店です みんなして腹...
posted on 2019.9.11

短歌 恋

1 解像度低めの心携えて行けるところまで行くのが恋 2 スコールのあとあなたが降ってきて少しもできない共感が恋  3 恋のせい ヘッドフォンから洩れ聞こえてきた君の声を遺書にした  4 手のひらに人を何回書いたって喉を通...
posted on 2019.9.7

短歌 ひとり

1 言い訳を考えてたら朝が来てああこれだなと太陽を蹴る 2 光あるところの影が私です 必要悪と呼んでください 3 パソコンで「じしょう」と打つと「自らを笑う」と化ける我のスペック 4 事件簿に載らない私の喜劇にもちろん千...
posted on 2019.9.4

短歌 灰

1 我もまた少女だったというひとの思い出に載る灰のアルバム 2 悲しいと爪を噛む癖を叱ってくれたあなたの影を踏んでた 3 その人が絶対であり神であり愚者であったと気づくのが恋 4 大切を大切にして大切に抱えていたらグレー...
posted on 2019.8.30

短歌 クレヨン

1 偶然だ 血が赤いのもぬるいのもなかなか止まることがないのも 2 ブラウスのピンクのしみは確実に君に恋した盛夏の残滓 3 オレンジを食べた! 朝から君のこと早く壊してみたいと願う 4 たまさかに君の生存を知ったよ 鳥よ...
posted on 2019.8.28

短歌 カット

1 わたしもう自分からログアウトして言葉の嘘を撃ち抜きたいの  2 笑われてちょうどよかった過日の碑 解すことのない世界を嗅いだ  3 シンメトリだけが正義の造形か 愛の急所は歪んでいるぞ  4 整った車内アナウンスばか...
posted on 2019.8.25

短歌 晩夏

1 ひまわりが怖いとないたセミたちの悲鳴を耳にぶらさげる午後 2 結局は影になるのだ 星求め自分探しの旅に出たひと 3 苦しさを分けてあげます あなただけ笑ってるのはおかしなことだ 4 処世術 啓発本に生きるコツ ぜんぶ...
posted on 2019.8.17

短歌 占い

1 占いを信じるわりに私には現実的なことを言うのね 2 水瓶座と射手座の相性がいいことは僕たちがもう証明してる 3 唇をくっつけたそれは事実上キスと判定していいですか 4 この胸にドラムンベースが棲みついた 重たく深く鼓...
posted on 2019.8.17

短歌 ジュブナイル

1 本当にごめんなさいという君の心の声をよく確かめて 2 さよならは無駄がないから悲しくてWordの余白を拡げてみた 3 かくれんぼ 鬼ごっこ ままごと全部黒で潰した理由も知らず 4 手と手と手 真っ逆さまに落ちてゆく ...
posted on 2019.8.17

短歌 煌めきの赤

1 満たされるつもりなどない 愛情に底があるとは思えないから 2 私たち重ねた日々が鮮やかに広がってゆく影が愛しい 3 ゆく季節に柔らかなサヨナラを真白いベッドの上で告げるの 4 銀河系の隅っこでまだ泣いてるの 胸を裂く...
posted on 2019.8.17

短歌 誕生日

1 倦怠期をケンタッキーと間違えて今日も我が家は平和なのです 2 おめでとうが今更照れて言えなくて口を尖らせつぶやく「老けた?」 3 あなたからもらったピアスをしています 早く髪に触れそれに気づいて 4 サプライズがなく...
posted on 2019.8.17

短歌 ヒストリー

好きな色も知らない人にプレゼント 有馬記念より緊張する 本当にいいんですねと念押され急にためらう愛の告白 流行らないタバコなんかでごまかして微笑めるのは今のうちです 心にはしっかり棲みついているのに歩幅を知るとイライラし...
posted on 2019.8.17

短歌 ココア

1 窓際で眠るあなたに降り注ぐ柔い西陽に僕はなりたい 2 思い出がこれ以上美化されぬよう右のこめかみを強く押した 3 美しい季節になれと微笑んで秋を屠った君は変態 4 私よりゲームに夢中な君のこと攻略をするゲームに夢中 ...
posted on 2019.8.17

短歌 正しさ

1 理解してなんて言わない私たち輪廻の外で幸せだから 2 滲んでる境界線を引き直しもう一度だけ正気を保つ 3 終焉に向かう世界を泣き喚く貴方のせいにしてしまえたら 4 最後尾からの方が早い 閉じてゆく日を数えるならば 5...
posted on 2019.8.17

短歌 けもの

1 満たすことは乱すことと言い淀み強くなれない言い訳をする 2 ボサノバかボッサノヴァかを問うよりもそのボサボサの髪をなんとか 3 あの人がいなければ良いこの胸が泣くことがもうなくなれば良い 4 繋ぎ目がじんじん痛む日も...
posted on 2019.8.17

短歌 晩冬

1 芽吹いたら底を知らない恋心 晩冬の空に毅然とあれ 2 「ありがとう」と「愛してる」の言の葉はくすぐったさがとても似ている 3 灰色の冬を脱ぎ捨て街に出よ 小さな春を捕まえにゆけ 4 届かないことは同時に尊さを伝えるこ...
posted on 2019.8.17

短歌 不思議

1 突然に私の頬に雨が降る 過日に捨てた夢の破片だ 2 セイハロー、天国に向けセイハロー、そろそろ着いた頃だと思う 3 優しさはこころの果実と心得て熟れたらそっと左手でもぐ 4 北風に怯えた日々もあったけどジャズのリズム...
posted on 2019.8.17

短歌 卒業

1 へたくそな口笛だって構わない 今はひたすら声がききたい 2 桜色の袴が似合う人でした ほんとに淡く散ってしまった 3 嫌いとは愛の同義語 三月の空になびかぬ切りすぎた髪 4 アイシャドウなんてつけない 嘘のない瞳で君...
posted on 2019.8.17

短歌 アドレッセンス

1 頭からトマトスープに突っ込んで溶けたあなたの味が好みよ 2 あやとりの得意な人は手をあげて そこに神経を通しますね 3 危険だと早く逃げてと叫ぶ君のシルエットがもう笑ってる 4 なにもかも芽吹き始めたせいにして思う存...
posted on 2019.8.17

短歌 やわはだ

1 さよならを置き去りにした二人して永遠求めツツジを啜る 2 幼な子の黒目に問うてみるがいい ちゃんねるを見る背中はどうか 3 やわ肌についた傷ごとよろしくね あなたの爪が弾く思い出 4 省みることのできない阿呆烏 正義...
posted on 2019.8.17

短歌 猫

1 偉い人なんていないよ 偉そうな人なら街に溢れてるけど 2 黒猫で親指ぎゅっと隠したらぽつぽつ漏れる死にたい理由 3 終電を逃した猫の迷い子は夜が明けるまで罪を匿う 4 シグナルが点灯しても気づかずに踊り続ける人のプラ...
posted on 2019.8.17

短歌 初夏

1 ドローンは孤独を壊すためにあるという説だがやはりオバケか 2 ヒーローになれる方法があるなら三回払いで買わせてくれ 3 君だけがわかってくれたほろ苦さ 焦げたキャラメル食んで微笑む 4 水たまり飛び越え進む初夏の道 ...
posted on 2019.8.17

短歌 天使

1 きみ、天使に間違えられることはない? 僕の視力が落ちたのかしら 2 いくら手を伸ばしたとしても届かない君ならいっそ君ならいっそ 3 人びとの関心を集めた途端 立ち枯れていく淡いまぼろし 4 あれこれは全部むかしの出来...
posted on 2019.8.17

短歌 ピアノ

1 調律が必要みたい 少しだけ生きづらいのはたぶんそのせい 2 無理をしてキスをねだった日もあった 笑い話になりますように 3 形から入るタイプと連弾で触れた指から紡ぐナラティブ 4 口下手で不器用なのもちゃんと好き 理...
posted on 2019.8.17

短歌 梅雨

1 情報のソースを出せと責められてあなたを好きな理由が滲む 2 傘の花咲く街を行くふたりきり こうも雨では影も伸ばせぬ 3 特急の窓に打つ雨の滴がそれでいいよと囁いている 4 雨の夜に巣食った油断をこれから恋と呼ぼうか馬...
posted on 2019.8.17

短歌 中央線

1 街中のネオンサインを消し去って残る文字こそ私の名前 2 泣きながら生まれてきたしこの頃は笑ってみても咎められない 3 通過駅に懐かしい名を見つけて頭の中で絶叫をする 4 繋ぐ手に嘘偽りはありません 冷や汗動悸 いいえ...
posted on 2019.8.17

短歌 優しさ

1 優しさは真綿となってその首に巻きつくために存在してる 2 忘却はなだらかな線を描いてやがてあなたの鎖骨に刺さる 3 愛してる愛してたまだ愛してる 振り子の等時性を疑う 4 曇天でよかった私もう少し誰も呪わず生きてゆけ...
posted on 2019.8.17

短歌 無添加

1 この窓は君に続いているだろう 何があっても開けないだけで 2 三日月を飾ってみるとモミュの木は優しいほうへ輝きを増す 3 限られた命と知ってなお犯す過ちまでももはや愛しい 4 駅舎から海が見えると君は言う その水底に...
posted on 2019.8.17

短歌 抵抗

1 支配者の寝顔に油性マジックで綺麗な花を描いてあげたい 2 怒るべきときがあるから今はただは葦の隣でゆらり揺れてる 3 ステータスなんかできみを見ていない 学歴 お金 ぜんぶモノクロ 4 誰がどう言ってもがいいさこれか...
posted on 2019.8.17

1 鈴なりの柿をもぐ手の白い様 冬よ二人に早く来てくれ 2 読書する君の視線がたどる文字 それすら嫉妬する理由だよ 3 肺呼吸すら苦しいと頑なな君をこのまま抱いてもいいか 4 赤ペンを握るその手の体温を奪うことなど考えて...
posted on 2019.8.17

短歌 宝石

1 ターコイズなんだね君の両の目はどうりでひどく傷つきやすい 2 信号がエメラルド色に灯るとき人々の歩は二拍子になる 3 どこかにはダイヤのような輝きがこんな僕にもあるのだろうか 4 アメジストでよかった君の誕生石 二月...
posted on 2019.8.17

短歌 紅茶

1 耳たぶに穿たれている穴二つ誤魔化すように石がきらめく 2 路傍には鍵が落ちてて行き先をなくしたバスを猫が手招く 3 紅茶とはお湯がなければ枯葉だと憂うあなたのため息のクセ 4 飛ばされる駅の近くに住んでます あなたは...
posted on 2019.8.17

短歌 そわそわ

1 とりあえずキスでもしとく? 明日まだ呼吸してるか自信がないし 2 ドーナツの穴から君を覗いたら虚しさの意味を思い知った 3 人間の仕組みなんです寂しいと爪を噛むのも旗を振るのも 4 丁寧語なんてやめてよ言い訳が上手く...
posted on 2019.8.17

短歌 冬空

1 底冷えの街に暮らして明日もまた同じ夕陽を待ちわびている 2 街はもうクリスマスなどは置き去りそんなものさと笑うみなさん 3 から回る歯車抱いて星空を見上げ損ねる日々を重ねる 4 ほらここが孤独の巣だと指をさす左の胸の...
posted on 2019.8.17

短歌 灰色

1 これ以上嘘はつけない幸せになったところでそれ嘘だから 2 テーブルにとまった羽虫を潰してほんの小さな罪に溺れる 3 もう誰も思い出さない忌念日が私の手帳にシミをつけてる 4 笑うしかない僕らには嘆く暇なんてないからも...
posted on 2019.8.17

短歌 スイーツ

1 しゃぼん玉ぱちんと割れて独りきり冷めた紅茶の行く末を知る 2 カスタードプリンに宿る悪意とは甘い時点で君と等しい 3 マカロンの作り方より単純な私のこころ早くいなして 4 あかんべえザラメのような恋をした 甘ったるく...
posted on 2019.8.17

短歌 ピアス

1 カルーセル止まらぬうちに咳隠す くるくるくるって楽しいねって 2 難しい顔をして聴くJ-POP あたしひとりで死んでいくんだ 3 手を振って笑ってないで今すぐにロックスターとして突っ込んで 4 受話器から聞こえる声を...
posted on 2019.8.17

短歌 休日

1 mixiにつけてる君のぼやきなど今どき誰が読むというのだ 2 真剣な顔でスマホを操って今日この頃の愚痴を彩る 3 ぽつぽつと消えてゆく泡を含んで甘ったるいと文句をつける 4 ふたりして不機嫌な日は毛布から出ずにキャン...
posted on 2019.8.17

短歌 目

1 生真面目は褒め言葉ではありません そろそろ上着を脱いだならどう 2 目に映るすべて愛してみたかった かつてあなたがそうしたように 3 嘘をつくとき両の目がよるという癖に気づいた私はえらい 4 目薬を五階からさすチャレ...
posted on 2019.8.17

短歌 影

1 永遠という幻は芳しく多くの人を惑わす魔物 2 ひとはひと わたしはわたし それだけのことを解すのにきのこが生えた 3 横顔を射抜く真冬の夕焼けがずっとあなたを責め続けてる 4 もう今日は帰らないでね いつもよりたくさ...
posted on 2019.8.17

短歌 青春

1 輝きを強制される僕たちは合言葉まで上書きされる 2 苦しいと笑ってしまう癖なのに礼賛されて真似までされて 3 風を受け微笑んだこと馬鹿にされいつの間にやら馬鹿にする側 4 真剣な悩みを友に打ち明けた 友であったと誤認...
posted on 2019.8.17

短歌 赤血球

1 醜さの喩えに使うためだけに私に合鍵なんてくれたの 2 私たち一緒の部屋で呼吸することさえ今や疑っている 3 なにもかもどうでもいいと言うのならその指輪から外してみてよ 4 骨として去っていく者 「思い出」と「平等」の...
posted on 2019.8.17

短歌 凝視

1 だれひとり僕を知らない街にいて「こどく」の意味を僕は知らない 2 輝けと命令するな僕はまだ正しい呼吸もわからないのに 3 夢を見て初めて気づくこともある 今日も明日も燃えるゴミの日 4 カラカラと軋み続ける僕の骨 ど...
posted on 2019.8.17

短歌 動機

1 夢を見て夢が破れて夢のなか夢にまでみた夢の世界よ 2 夏空を誰も見上げず笑ってる ノートの隅が日のあたる場所 3 あの夜を小瓶に詰めて朝が来ることを嫌がるまぶたに塗った 4 鐘の音が響いていると君は泣く カーテンだけ...
posted on 2019.8.17

短歌 バス停

1 ゆりかごは遠くにあって手を伸ばす理由もなくて夏が去ってく 2 セミたちの声にまぎれてから笑う そんなあなたがやっぱり好きだ 3 木陰から顔を突き出すバス停よ 優しい街に連れてってくれ 4 光から逃れるために明日など何...
posted on 2019.8.16

短歌 花火

1 新しいファミマが街に増えるたび居場所をひとつなくすのは誰 2 容疑者と呼ばれた夏も青空で入道雲が威張っていたな 3 斎場の灯りがついた夜にだけ許しあうこと許してほしい 4 ビブラートできない鳥は殺してもいいんだよって...
posted on 2019.8.16

短歌 仮説

1 間の抜けた顔で剥き出しの惰性をかじる君のまつげに浮く汗 2 「星座って孤独を繋げてできてるの」君の仮説を葬り去ろう 3 舌の根も乾かぬうちに発車ベルが聞こえたから旅に出ましょう 4 シャボン玉は壊れるためにあるという...
posted on 2019.3.17

短歌 春待ち

1 嘘つきは美しい花になるはず四月ごろには桜が咲くし 2 萌芽とはつまり悪意の目覚めだという仮説なら否定しておく 3 缶コーヒー片手に君を待っていた路地の氷がみたび張るまで 4 クリスマスソングが世界を急かすから自転速度...
posted on 2018.11.15

短歌 わがまま

1 ドキドキはもうしないかもしれないが安定感は誰にも負けない 2 決断をするときいつも背を押して風さえ吹かしてくれるから好き 3 口下手もここまでくれば芸術で冬が来るのは貴方のせいだ 4 枯れ葉舞う日に貴方がそばにいて微...
posted on 2018.11.15

短歌 (非)日常

1 幼な子の見上げる空を飛ぶ蝿の祝福の辞など誰も知らない 2 瞳から落つる涙を受け止めるためだけに傘を持ってきました 3 生きている間限定の感覚に溺れぬわけが見つからないわ 4 左手の薬指には約束が血管を殺し巻きついてい...
posted on 2018.11.15

短歌 萌芽

1 ともし火の揺れるほうへと進んだらあなたが飾ってある植物園 2 たどり着く場所に双葉が生えていて間違いないと確信をする 3 手のひらの上で踊った枯葉ならつい先だって地球になった 4 あなたたちいつか地獄へ堕ちるわよ ス...
posted on 2018.11.15

boo!

1 似たような顔をしているあなたがた 個性という字を書いてみなさい 2 笑うより笑われるほうがよほどいいことに気づけぬ愚かなbabe 3 ヴォージョレの解禁を待つ者たちがすでに倉庫にしまったハロウィン 4 ジャケットに黒...
posted on 2018.11.15

短歌 肌

1 柔らかい熱持つ肌に触れるのが罪になること伝えておくね 2 好きな色の花を探しているけれど手に入ったらば枯らしてしまう 3 憂鬱はお湯をかけると白くなる 冬の吐息がそうあるように 4 身勝手をちゃんと叱ってほしいのに微...
posted on 2018.11.15

短歌 寒い日

1 雨降りを知らぬあなたのあどけなさ 守り抜けると信じた過日 2 心ない言葉には耳を貸さないでどうぞ私の歌に浸って 3 街路樹が見届ける秋 美しさは寒さのことと知っていたのか 4 青になり誰も渡らぬ交差点 もう歩けない ...
posted on 2018.11.15

晩秋の傘

1 のど飴の優しさを知る晩秋にほんのりと死に近づいてみる 2 思い出よ 積もれ積もれよ落ち葉より軽いからなお悲しさも増す 3 嘘つきも人が恋しくなるらしくぬくもりのためまた嘘をつく 4 雨やどりしていいですか今日きっとあ...
posted on 2018.11.15

短歌 秋の残滓

かけっこは今も苦手だ欲しいものに手が届きそうで届かないから 友達と一緒にされて立つ腹も恋の一部とわきまえなさい 夢なんてもう見れないと泣く君の手を温めることを夢見る アイルビーバックと残して去る人にアイドンウェイトの走り...
posted on 2018.11.15

短歌 ゆるす

1 簡単に愚か者は牙を剥くけど君は微笑み全てを許す 2 この先は静かにしてて二番線で特急列車が泣いているから 3 赦しとは傷を手放しあやすこと 痛覚さえも我が物にして 4 結ばれる糸の色がなんで血と同じなのか考えてみよ ...
posted on 2018.11.15

短歌 未来

1 さかさまの夕焼けを見た帰り道 たぶん僕らは無敵だったね 2 小さな手 握り返したぬくもりを忘れてしまう仕組みが憎い 3 手放した記憶たちがまた居座って青春のやり直しをさせる 4 退屈な質問をしてすみません 私のどこが...
posted on 2018.11.15

短歌 ホットココア

1 繰り返しお伝えします この僕は君の前では嘘がつけない 2 寂しいと呟くことが寂しいとホットココアに溶けてく言葉 3 ため息も白くなってく霜月のドアの向こうに君が待ってる 4 いつのまに育った気持ちだったのかわからない...
posted on 2018.11.15

短歌 贈り物

1 思い出が美しいなんて決めないで 今から汚すつもりでいるの 2 最近の流行をよく知らなくて「今どき?」なんて言われ嬉しい 3 街路樹にコートを掛けてあげたいと言ったあなたにくるまれたいよ 4 初めての夜がはらりと遠ざか...
posted on 2018.11.14

短歌 ほっと

1 いい加減私の気持ちに気付いて そして隣で天気を当てて 2 未来ならフリーハンドに描くから軌道に貴方を必ずのせて 3 暗闇の中にいるからこそ光る君の絶望は宝物だ 4 目を閉じてひとりっきりのフリしてもまぶたの裏であなた...
posted on 2018.11.14

短歌 冬のはじまり

1 寒いより寂しいが勝っているとまだ貴方には伝えられない 2 強がりは積もれど雪にならなくて遠くで白が手を振っている 3 背中から羽が生えても安心だ 君が残らず毟ってくれる 4 いま君が隣で風邪をひいていることが実は嬉し...
posted on 2018.11.14

短歌 吐息

1 二番目じゃだめなんですと涙声 掴んだ袖に嵐の予感 2 告白がまるでこれでは告発だ 誰が君の心を踏んだ 3 時ぐすりが効いてきたから大丈夫 私あなたと眠っていたい 4 ただ一人を信じる勇気が生まれて師走の空も笑ってくれ...