第三章 さようならだけはいわないで

受話器越しにパン! という銃声を聞いた篠畑は、顔色一つ変えずにさらっと、

「聞こえました? 今の」

ミズに話しかけた。ミズは「遅かった」と舌打ちして、

「結局は、あんたの思う壺になったってわけね」

悔しそうに吐き捨てた。

「あの子を解剖することになるなんて、夢にも思ってもみなかったわ」

篠畑は、首を少しかしげ、とぼけた口調で、

「解剖? そんな必要ないでしょう」

「死因がいくら明らかでも、不審死には違いないわ」

「ふふっ」

「本当にとんでもない奴ね、あなた」

脱力して腕組みするミズに、篠畑はさらりとこんな事を言った。

「生きている人間は解剖できないんじゃないですか」

「なんですって?」