posted on 2024.7.25
まんまる
私は浮かんだことがある 心を逃した先に居た 完全な球体と一緒に 美化されがちな夏アルバムの 読み飛ばされる一ページに 名前を与えられることもなく 極彩色のクレヨンで塗り潰された ちゃちな汚れ 神さまのこと 打ち上げ花火の...
posted on 2024.7.10
垂れ糸
~注意事項という名のプロローグ~ ※これは、虚構を重ねる言の葉によって紡ぎだされる小説の『一考察』に過ぎません。 ~第一章~ 文字という文字に踊らされ続けた とある作家が 辿り着いた一つの真実、 あるいは狂信的な勘違い ...
posted on 2023.10.22
桜が咲いたんでしょう
各駅停車新宿行きが 善悪を轢いてくれたなら—— 蝶よ、蛹のまま溶け出でよ 艶めかしく地球へと 四肢を投げ出した女の あるいは黒猫の 若しかして寂しかったのか 特急新宿行きは 善悪正邪を無視して進む—— 雪よ、薄汚れて水に...
posted on 2023.10.22
る、る、る
彼の唯一の関心は素数である。 る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど) 私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており――遮断機がひどく疎...
posted on 2023.10.22
名前を呼ばれても
挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに まだ憂鬱は膝を抱えて...
posted on 2023.10.22
水草
加速度を上げたレッテルが 水槽の中ではち切れるとき 金魚どもの骨々は報われる 空——まだ数えるには足りない幻滅と 明滅するスマートフォンの広告たちが ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り 私の残滓の根本になってしまうとして...
posted on 2023.10.22
惰楽器
私はあなたに もう正論しかぶつけられないのだ 二度と過あやまつことさえもできないと 歌を歌っても 愛してるよりさよならの数の方が 多いことに気づいてはならなかった (後悔するために ……継続される呼吸) 正論としておめか...
posted on 2023.7.27
残響
抱きとめきれなかった 感情未満のずくずくたちが 何一つ許されることなく 宙空に反響している 見さだめられなかった 後悔未満の星のたまごらが どれ一つ相手にされずに 私のなかに還ってくる 温めるだけでよかった インスタント...
posted on 2023.6.29
名前を呼ばれても
挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに まだ憂鬱は膝を抱えて...
posted on 2023.4.17
水草
加速度を上げたレッテルが 水槽の中ではち切れるとき 金魚どもの骨々は報われる 空——まだ数えるには足りない幻滅と 明滅するスマートフォンの広告たちが ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り 私の残滓の根本になってしまうとして...
posted on 2023.2.15
リボン
食べる、そのときに 口が開くと歯が見える いのちを噛み砕くための しゃべる、そのときに 口を開くと言葉が出る 誰かを傷つけるための 黙る、そのときに 口を開けると馬鹿みたい 本当は馬鹿なんだけれど 食べる、いのちを繋ぐた...
posted on 2022.12.26
メタセコイア
私にとってメタセコイアは どこまでも悪辣な他人事で あなたにとってその大樹は 呼吸そのものだったとして 結局微笑むことを選ぶでしょう 危機を報せるジングルベルが あなたには只管 おめでとう おめでとう と聞こえるのは 夜...
posted on 2022.12.7
——
私の愚かさは例えるならば 血を吐く前夜の白羊 ミュートしたまま終わった 大演説のごとく虚しい 始まりのない終わりは何処 私に居座るよくない細胞 ついた嘘の数だけ分裂する 下がりきらない半音に ジムノペディを糾弾しても う...
posted on 2022.11.14
飛べばいいんだ
飛べばいいんだ 苦しいのならば ここ以外の空へ 飛べばいいんだ あなたは懲りもせず 素数を数え続けては 時折偶数に瞠目して 修正ペンを探し出す 飛べばいいんだ 可笑しいのなら ここ以外の地へ 飛べばいいんだ あなたは相変...
posted on 2022.9.6
ミラーボール
あなたの右目はミラーボールで だからいつもくるくる回って ママのご機嫌を伺っている 新聞のラテ欄には 今日も悲しみばかりが システム化されて掲載されている 「大人になったらぁ」 ミラーボールが逆回転する 「音を立てて倒れ...
posted on 2022.8.19
あうええ
むら雲が機嫌を損ねはじめた 夏の終わりのはじまりだ あうええ ときみの唇が動く 八月が今年も終わるそうか たすけてって言えずに 子どものふりをしたんだね なにもかも知っていながら きみのためにできたことといえば 風鈴とい...
posted on 2022.7.12
花と呼吸あるいは
知らないことが減っていくと 痛み止めを飲んでるみたいに 誤魔化すことが上手になれる 不都合な時は沈黙することが 何よりの特効薬だったりする 輝きを強制されて 笑顔の練習をして 最適解だけ選んで いつも正解をして 褒められ...
posted on 2022.4.16
鳥、温かい食卓
地図からきみを消して 温かい食卓が実現する 断末魔にしては随分と 楽しそうな表情だった パラレルワールドでは きみが私を消すために 夜空から水瓶座を奪い 肩で呼吸し続けている 白い箱に詰め込まれた 安売りされる絶望感が ...
posted on 2022.2.24
洋燈
洋燈を持ってきてくれた人 優しすぎて傷の数え方すら わからなくなってしまった あなたを心から誇りに思う 失くすものなどなにもない そう微笑って火を灯した夜 失くすものを探そうとして 探すものがないと気づいた 気づかなけれ...
posted on 2022.2.1
自転車——輪舞曲にのって
傷つくくらいなら 優しくなんてなくていいよと 伝えてくれた人が 襤褸を纏って笑っている 手垢のついた選民思想を 青い炎で燃やすと 楽譜が生まれる 傷つけるくらいなら 黙っていたほうがいいよと 教えてくれた人が 正気の狭間...
posted on 2022.1.23
がんばれもぐら
もぐら、その姿実にもぐもぐしい 穴掘って掘って埋もれて 夕暮れいつだかわからない 漢字で書けば土竜 強そうでしょう 強そうなだけなんです もぐら、小倉 おぐら さんちの庭に穴を掘る 土かいてかいて疲れて 夜明けが何処だか...
posted on 2021.11.11
私に手紙をください
見上げれば半月が もう半分の可能性を殺しながら ぽっかりとろりと孤独を浮かべて 見下ろせば人々が 内臓と骨と血と神経を運ぶため あうあうと喘ぎながら歩いている 位置情報をオフにして Wi-Fiから逃れて 野鳥の飛影に目を...
posted on 2021.9.2
万年筆
まるである日出会ったみたいに 甘く、甘く、溶ける、 それが木曜日でありませんようにと 目を、逸らし、叶ってしまう、 夜になりたいと泣いたあなたの 横顔こそが秋驟雨で 夜になれないあなたと あなたになれない私とが 手だけ繋...
posted on 2021.7.13
小夜風
地球儀を強く抱きしめて 失くした星だけを数えて から笑うあなたのことを 私はもう許せそうにない あなたを許せない私を あなたは許してしまう そうして無難至高にて 風を感じているフリと 生きている真似事とが 上手になってい...
posted on 2021.5.13
心優しい獣だけが識る
柔らかな裏切りを 生唇で受け止めて 虚しくなるだけで 上等だって笑えよ 風はまた吹くだろうか 遠ざかる記憶を手繰る 獣に堕ちたあなたの眼 もう一度くださいって 失うごとに欲しがって どこにもきっかけなど 落ちていないとい...
posted on 2021.4.7
傘を持たない人
雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることができる人でしょう その...
posted on 2021.3.30
点
コバルトブルーの夕暮れに凪いだ点 立ちくらみすれば許される気がして あなたもあなたもあなたも当然に点 染みといっても差し支えないだろう 真っ白なシーツを私が敷いたはずの 純然たる欠点といってもいいだろう あなたが目を閉じ...
posted on 2021.3.15
開花宣言宣言
値札さえ与えられず 都合の悪さを携えて 焼きたてのパンのことを考えている 春、魔物を産んでしまったから 古アパートでほどけた安い自我が フリースタイルで追われ果てた ずっと笑っていたのが私で そばで泣いていたのが私で 逆...
posted on 2021.2.8
春変
寝ぼけた顔して 幼い唇でぽろぽろと 退廃的なことを言うの 春だというのに 心臓くり抜くような 我儘ばかり振り撒くの きみは冬に眠っていたかったんだろうね 魚のような目をして 灰色の空を見ている 饐えた風の手土産を 嬉しそ...
posted on 2021.1.31
容疑者3名の円卓
論客R氏が腕試しに 青い瓶の中身を知りたがり 詩人D氏が立腹して それは野暮だと吐き捨てる 主宰W氏は円卓にて ほくそ笑みながら足を組む R氏が求めるのは日常からの脱出方法 D氏が詠うのは牛肉へ捧ぐ鎮魂歌 W氏はぺろりと...
posted on 2021.1.27
キャラメル売り
シナプスの存在しない場所に 私はいる 私がいる あられもない姿で (キャラメルを舐めながら) 横たわっている 銀紙をくしゃくしゃに 気の済むまで丸め終わった残骸が 私の心臓だったとして キャラメルを舐め終えた 甘ったるい...
posted on 2021.1.7
私の庭(という強制的沈黙)
遠くで破裂音がして 目が覚めた青い夜は 寂しくなってもいい 冷たい廊下を裸足で歩いて 自分の首を絞めようとして でもできなくて泣きました カチューシャが似合わなくなって 夢の国だけでワンピースを纏って どんどん静かになっ...
posted on 2020.12.12
ポインセチア
迷妄をさらけ出した空は 雲をさらって落暉を隠す 真冬に凍える部屋の隅で 漸くまぶたを開いたのに 光を求め扉を開けた途端 冷たく降り注いだ視線が 私の脳天をずんと直撃し 紅い徒花を咲かせるのだ 私の思考はやがて白濁し 流転...
posted on 2020.12.3
ラドリオ
息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止...
posted on 2020.12.1
ぴかり
沈黙はあまりにも美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花は散りました 夜空に煌めくぴかりお星さま 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的な音を立て 彼方へ沈んでいくのでしょう お願い置いてかないで ま...
posted on 2020.10.25
アトリエ
幼拙な傷は容赦のない絶縁体 六弦を抑える指がまだ汗ばみ 古ぼけた腕時計と一緒にいる 秋の空白(やり直しはなし) 孤独は足し算できなかったね 藍色のペディキュアをひどく 気にした日々が過ぎ去って今 アキアカネ舞う密やかな迷...
posted on 2020.10.8
ブギーサンセット
ガラス瓶を割って青春のノートを引き裂いて思い出の歌を燃やして、それでも無傷の世界を憎んだ。勝手に祝福されている季節が容易く流す光が乱反射して、有象無象の天使たちにウケている。 僕は命を度外視して、悲しいことがあると平気で...
posted on 2020.10.7
アイキャンフライ
アイキャンフライ、アイキャンフライ、どんなに唱えても悲しいだけなら、せっかく狂った甲斐がない。傷を負えば負うほど輝きを増すから、人のこころというのは厄介な仕組みをしているね。ときにその光に眩んで、大切なものを見落としてし...
posted on 2020.9.29
抹茶ラテ
混濁した季節に 清く正しく堕ちていく貴方は 只管に美しいね 埋めた傷なら芽吹いたよ 小学生に観察されているさ 錆びた悩みなら絡め取ったよ 中学生が興奮しているさ 浅はかな朝は そろそろ暴かれるでしょ 神様の逃げ出した視界...
posted on 2020.9.25
毒りんごのゆくえ
耐えて 耐えて耐えて耐えて 耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて ぷつん と ちぎれた糸は用無しになって ごみ箱に押し込められるけど 今のはあたしの神経ですから 編み直すので返してください (思い出は美化し放題! 二時間...
posted on 2020.9.19
経験値
私が飛散したあとの地に 曼珠沙華がわらわらと咲きました 笑顔の老婆がひとつ手折って 経験値、経験値と呟いて 一輪挿しに収めます それを窓辺で見ていた少女が ごくんと喉を鳴らしたなら 真っ赤な花弁たちは一斉に 彼女を撃ち抜...
posted on 2020.9.4
からから からん
からから からん からからからんからんからら つまらない音を立てて 私の骨が転がりました もの寂しい音を立てて からっぽのペットボトルの横に 私の骨は転がりました 名前を知らない蝶々が 私の心臓のふりをして ひいらひいら...
posted on 2020.7.21
ボート
僕はボートを漕ぐ 他に誰もいない湖面に 流行らない一艘を浮かべ 僕はボートを漕ぐ 他に誰も見ていないから 好き放題に漕ぐ 湖面を波紋が支配する 僕のオールで起こしたそれは いびつに整列をしていく 波紋はすぐに消えていく ...
posted on 2020.6.16
黒鍵
ピアノを食べたひとは ピアノが弾けない 幾何学模様の布の並んだ 小さな部屋に住んでいる蛾の 確信に満ちたうわごとである 面的に繙かれたアンビエントを 口の中でエゴと溶かしている 朝顔が咲き始めても ジムノペディは聴こえな...
posted on 2020.6.14
羊が凍る
生息域の考察は私に諦観を与え 大勢の前で偉人だった「彼」は 今や晒す恥や罪悪を探している 滴る筈の血は羊ごと凍り 私に妥協を教えてくれた 「彼」は時を見計らって 吐き捨てる科白を磨いて 銀の月に仕立て上げては 番号を与え...
posted on 2020.6.3
ケーキ
ホールケーキを等分にするためだけに アリスがナイフを振るう 縦に切って 横に切って 斜めに切って 反対側も斜めに切って ケーキは八等分になったけれど 春、夏、秋、冬、雨、雪、雷、風、アリス テーブルには九名座っていたから...
posted on 2020.5.26
Good-by chalon(dreaming forever)
街を歩いていると、ああ私ってほんとうに独りなんだなと思えるから好き。万が一もう一人、私が向こうの道からのたのた歩いてきてもちゃんと無視できるくらいには強くなりました。失うべき音が一つもないこの街の唯一の汚点が私。とても心...
posted on 2020.5.18
木を植える人
木を植えたいのです 誰のものにもならない場所に 誰にも識られることもなく もちろん誰のためでもなく これ以上眩しくないように これ以上騙されないために 独りでちゃんといられるように ああそれでも 僕の認識は否が応でも 大...
posted on 2020.5.14
アルバトロス
すべての痛みが 癒されるためにあればいいな すべての悲しみが 許されるためにあればいいな すべての傷という傷が 優しくなれるためにあればいいな 裂かれた皮膚は かさぶたを経て強く生まれかわるね 神様もあの世も知らないけれ...
posted on 2020.5.11
∞×
私ね、あっちで生まれたの。生まれただけでまだ誰も手にかけたことがないのね。だからうまく影を伸ばせないし、助けを乞われたらいくらでもいうことを聞いてしまうの。優しいねって? そんなの褒め言葉にも貶し言葉にもならないわ。 妄...
posted on 2020.5.10
メモリーカード
どこにもないはずの記憶がメモリーカードに保存されており私のいつかの嘆きも怠惰も独りよがりな悲喜劇もすべて残っておりました 誰からも忘れ去られた公園の錆びた遊具たちは互いにへつらうことをせず朽ちるのを黙って待ってただただ佇...
posted on 2020.4.26
トマト
怒りの正当化事由よりも 大切なものがあるはずで けれどそれらしい論説に いとも容易く踊らされる 耳障りのいい言葉たちは いつも私を騙すけれども 過ちを過ちと認めるのは とてもしなやかなことと 言い聞かせているけれど 萌ゆ...
posted on 2020.4.14
光の粒
1 私は昔小さな羽虫で あなたのベッドの裏についてた のたうちまわるあなたのため そっそそっそとへばりついてた 不機嫌なあなたの指で 潰されてしまったけれど 2 私は昔生意気なチャトラ猫で あなたの眠れない夜によく あな...
posted on 2020.4.11
ざん、
もし明日晴れたとしても いつかの雨を私は忘れない 確かに明けない夜はないけれど 手が小さくてセーハがとれず 容易く絶望した夜のことも 日記には残っているから 正しい紅茶の淹れかたと マイナーコードしか覚えられず 下手なギ...
posted on 2020.3.31
翻訳教室
どの辞書にも載らない過分に素敵な翻訳教室、三月分の生徒の皆さんの努力の結晶の発表です。どうぞ拍手を! 「I love you」 ・あなたを愛しています。 ・月が綺麗ですね。 ・月は綺麗ですね。 ・月が綺麗ですね、それより...
posted on 2020.3.27
のようなもの
剥き出しの記憶を眼窩からぶら下げ 気の済むまでぷらぷらさせたならば それが涙になるまで待ってひたすら ごめんなさいをリフレインしようか たくさんの手で解剖された認識が 優しい母の手で丁寧に調理されて 食卓へとスープとして...
posted on 2020.3.26
アパハアパハアナアオセオ
桜の花びら舞う下で「おめでとう」と言われて以来、私は常に桜の散ったあとのことを考えているのです。ちっとも似合わなかった制服をやっと捨てられる、とつぶやいたら少しだけ寂しそうな顔をしたアンパン。それが好きだからそう呼ばれて...
posted on 2020.3.15
おんなじ星座
林立の夢を刈り取った手で 優しく微笑むのはやめてよ 背の順が嫌いだったことや 前へ倣えを疑ったことまで よくできましたと言われて あなたは何を私に望んだの 最終バスが去った後で 喪服の女が口笛を吹く 馬鹿だなと笑うあなた...
posted on 2020.3.9
群れ骨
少し黄ばんだ表面に 容赦なく叩きつける 春の雨は優しくあり 群れ骨群れ骨群れ骨群れ骨 矮小な讃の残渣と赤血球が 反乱を起こした辛辣な春が 今年もやってきたのですね 群れ骨を掬う者も救う者も 其れに巣食うものもおらず 痛み...
posted on 2020.2.29
鳥と蔦はあなたを見ています
私の認識する小さな世界の中で 腐った五線譜が蔓延って 狂人の生誕を祝っている ディア Mr.ピーターパン 永遠の少年よ 肉体は老い易く尚 精神萎え易し ネバーランドに連れ去った 少女の私は今日もまた ケタケタ笑って水草を...
posted on 2020.2.28
おかえり、
飛び降りるには高すぎた歩道橋の 欄干は果たして優しさでしょうか 歩道橋の途中で手を伸ばしました 少しでもいいから近づいてみたい 月みたいに死骸となれば私だって ひかりをあててもらえるかもって そんなくだらなさに急かされて...
posted on 2020.2.27
ひなぎく
白煙のかもめ 何が悲しくて 闇夜の黒ねこ 何が悲しくて 血塗れのきみ 何が悲しくて 肌色の人びと 何が悲しくて 瑠璃の鳥たち 何が悲しくて ひかりの中で 何が悲しくて 生きる (……嫌いだ) 大切なものたち 大事にしまっ...
posted on 2020.2.25
アサシンが朝日に目を細めるとき、そのそばで私は何に涙するんだろう
あなたはひどくためらう。愛することも、愛されることも。愛を拒絶するほどの傷は、何年何月何日何時何分何秒につけられましたと証明する手立てがない。 心の底から、悔しいと思う。目に見えるものしかやはり人々は信じない。数字に、具...
posted on 2020.2.24
カセットテープ
なにもかもがわからなくなるときがある。わからないことがわからない、そんな瞬間に私はこれまで自分が傷つけてきた人々の脊柱を想う。中には同じような色のなにかが詰まっていて、同じような仕組みで動いて同じような感覚で痛みを覚えて...
posted on 2020.2.20
おとぎばなしに風は吹かない
命だったものの上に 累々と打ち捨てられた 流行りの正義(感)と ヒトナミの中で 私はようやく溺れました 何が悲しいって 見上げた星空の何処にも 約束が見つからなかったのです 孤独などもはや 詠うための言い訳に 変質して久...
posted on 2020.2.12
針と糸とを
テントの中で一番大切なことは 規則正しく生きること 高く飛んだり笑ったり 涙を星と見間違えてはいけない 口を開けていいのは歌うときと 「わかりました」と言うときと 「ごめんなさい」と言うときと みんな大好きと叫ぶときだけ...
posted on 2020.2.5
穴埋め問題
たぶん言葉をなくしてしまったんだろう 私はそんな彼を心の底から祝福をしたい 彼の胸元を広くひらいて小さな洋燈や ろうそくのともしびをわけてあげたい 私の愚かさだってそうしたなら 少しはましな遺産になれるんだ 足りないもの...
posted on 2020.1.31
踏んで勝つひと
おさげ髪をほどいたあとにほら ソバージュみたいになるでしょ 少しだけ可愛くなれた気がした 鏡の前でそれでも笑えない娘を 何処からやってきた女が突然に 言葉という恐ろしい武器を用い 未来人を自称しながら刺殺した おさげ髪を...
posted on 2020.1.21
モンブラン
あたしやっと ピカピカに光る モンブランを食べた ママが絶対にこれだけは 食べちゃダメだって しつこく言ってたから 食べた あたしがいつか 誰かから「彼女」と呼ばれて 知らない間につけられた名前を 遺棄できる瞬間が来る ...
posted on 2020.1.14
味蕾
どんなに大切に与えられた名前も 言葉ひとつで饐えてしまうから 私たちはとても絶望しやすく バランスを取ることを請求されて 結局あっけなく崩れていくのを 誤魔化すのがとても上手な生き物だ 指先が酸っぱくなっていく不愉快な ...
posted on 2019.12.27
pinta(糸電話のひみつ)
せっかく神様と糸電話してあなたの秘密を聞き出そうと思ったのに、耳に入ってくるのは痙攣しながら諧謔を弄する言葉ばかり。 たかが孤独です、糸電話で繋がったところで埋められるものではないし、そもそも孤独を癒してほしいなんて誰...
posted on 2019.12.17
ミラーボール
ぽつぽつと雨の降る朝 折れかけた魔法の杖と 鈴なりになった眼球と 三匹の蛇の頭を携えて あなたはお仕事へゆく ささやくように悲鳴をあげる 日記をすべて燃やしています もし無事に私が私を殺せたら どうか捕まえてくれませんか...
posted on 2019.12.6
スーパースター
私がいなくなっても 大丈夫だってことを 海馬の奥にまで思い 知らせてくれたのは 間違いなくスーパースター 誰よりも夢の味を知ってて 量産方法をばらまいてから 私にとどめを刺してくれた 何も変わっていないんだ 冬の始まる匂...
posted on 2019.11.20
反転
反転した! 何もかもが 私に断りもなく反転した! 敵だと思っていたミーコちゃんは猫だった 好きだと疑わなかったコーラは無害だった ヒットチャートが上から紹介されていき 無関心こそが愛であったと息を絶やして 神様から順番に...
posted on 2019.10.27
ラブレター
私が覚悟を決めあぐねているうちに、あなたは新宿駅の新南口からよく見える位置の植え込みで全身を電球と電線で巻き付けられて、寒くなれば空気の冷たいほうがイルミネーションがよく映えるんだよと付き合いたてのカップルが恥じらいなが...
posted on 2019.10.17
BCC: I love everything except “you“
なぜかしらあなたは私にあまねく了解可能な理由の明示を迫ってくる。そんなものは仮に存在してもおおむね嘘なので「冬か来る前にあなたへ手紙を宛てるんです、奥多摩の小さな美術館の隅に飾ってもらえるよう」と柔らかく抵抗すると、あな...
posted on 2019.10.10
アフタヌーンティー
悲しい時ではなくて 嬉しい時に叫びたい 嫌な時には嫌なんだと 嬉しい時には嬉しいと 心のままにころころと 幼いころなら全身で伝えることができたことを 臆病さの染みた鈍色の瞳が拒絶してしまうから 私はこのごろは鏡を見ること...
posted on 2019.10.4
遠燕
訳知り顔の自称友人たちが 同じアイスドリンク片手に 今日も群れなしてニコニコ みんな笑顔で良かったです その感情は転送でもされているのかな 一様に笑顔で楽しそうなものですから とうの昔にシステムエラーを起こして アップデ...
posted on 2019.9.30
いい子
あなたがどんな造形をしていても 私にはわかるから もう着飾るのはやめてください あなたがどんな憧憬を抱いていても 私にはわかるから もう浸るのはやめてください あなたにしか見えない姿を きちんと見せてみせましょう もちろ...
posted on 2019.9.27
檸檬
私がいなくなるときにはちゃんとあなたに報告します 手紙を書きます、かわいげのないくせ字になりますけど この前一緒に見た映画には風が全然吹いていなかったので あの館内のどこかには爆弾が隠されていたのでしょう 気づいたら破裂...
posted on 2019.9.20
白と黒
僕には夢がある この口からもうこれ以上 クロアゲハが溢れませんように 家に帰ってきた君に 「おかえり」を言えるように この口からもう二度と クロアゲハが溢れませんように 私には願いがある あなたがもうそれ以上 白い妄想に...
posted on 2019.9.19
謝辞
私が誰のことも笑わないのは 心優しいわけではなくて 誰かをあざ笑うときの自分の醜さを 思い知っているから きれいな言葉や 正しい行動ばかり求めていたら 臆病な自分だけが 水底に残ってしまいました 嘘つき。 嘘つき。 みん...
posted on 2019.9.10
僕のためのランパトカナル
今日はランパトカナルについて学びましょう。あなたのためであり、僕のためであり、みんなのためであり、誰もが地球にすべて帰するための貴重な手段の一つですから。 (英)lampatcanal (日)ランパトカナル (仏)la&...
posted on 2019.8.28
天使の遺言
笑えと言われたから笑ったの私いい子ですから 死ねと言われたから攣ったの私いい子ですから それで、いつ愛してもらえますか そんなことより頭が痛い 頭痛が痛いって誤用かな 本当の本当に誤用かしら 正しさの反対側を見たい ...
posted on 2019.8.17
角砂糖
どうしても隠しきれない本性を、隠さなくてもいいんだよって、君が目の前で笑っている。許されたいのは、誰も一緒なんだね。 抱きしめたら心の潰れる音がした。こときれゆく君は僕の腕の中で歌を歌う。ずっと聴きたかった子守唄のはずな...
posted on 2019.8.17
キラキラ
花壇に仰々しく設えられた花を見て、命がねじ曲げられているのを目の当たりにし、キラキラした街から取り残されたことを改めて思い知る。 人々が口々におめでとうというのを、耳を塞いでやり過ごしていた、夜がもうつらい。耳たぶに冷た...
posted on 2019.8.17
スープ
あなたの指先はいつもかすかに震えている 寒さのせいじゃないね 病気のせいでもないね いろいろが溶けたあたたかなスープのせい よくばりな私をどうか叱ってください 見守るばかりが優しさではないように いつか枯れるから花を愛せ...
posted on 2019.8.17
バイバイ、wi-fi
バスターミナルで誰かを待つふりをして 老婆が巧妙な罠を張る 家路を急ぐ人々が一人残らず 孤独に苛まれますようにと 願いを込めた売り物のマッチ バスターミナルは前しか見えない人だけ 老婆が何度も言問する 家路を急ぐ人々に一...
posted on 2019.8.17
一等星
うまく叫べなくて うまくないなって 月の上みたいって 指先ばかり雄弁で 招かれた交歓会で たくさんの屍肉を たくさんの人々が 嬉しそうに食んで うまく叫べなくて 刺々しい気持ちに 支配されてしまう 美しいせいだろう (怒...
posted on 2019.8.17
愛のみぞおち、青の記憶
君からの手紙を全部焼きつくし残った灰を愛と名付ける みんなが希求している愛とは、大抵が残滓なのだと思う。本来なら欲求のみで生きられた僕らが愛を求めるようになって、この星はおかしくなった。思い出は青い記憶となり、砂塵のごと...
posted on 2019.8.17
リジェクション
怒りは今ここに 血まみれのシクラメンとともに 鮮やかに咲いている 真冬のそっけない空に 赤赤と揺れる 恥知らずなシクラメン! 怒りは虚しさと悲しみと手を繋いでおり、同時に去来するが故に非常に厄介である。 身勝手さは刃か、...
posted on 2019.8.17
パンを焼く
春を探しに出かけた 彼は帰ってはこない 湖面に浮かんださかさまのボート 戻らないものというのは悲しいね 白々しく月が湖面を照らしていた 花束を手向けに来る人々は口々に 「綺麗ね」「綺麗ね」「綺麗ね」 まるで冬眠から目覚め...
posted on 2019.8.17
冬の街(否定)
「これ、あなたのですか?」 最後のひとかけらを零してしまった 世界に否定された気がした 左手首の傷が疼いた 気の早い風が春の香りを纏っていた 花壇に小指が埋まっていた 見つけたことを後悔した 全部寒さの所為にし...
posted on 2019.8.17
帰り道
コーヒーはブラックじゃないと飲めなくなった、それを大人になったと暫定的に定義すると、大人になるとは制約が増殖することなのかもしれない。 自由を剥ぎとられて裸になる時、肩書きが意味をなさなくなる時、背伸びをやめた時、大人に...
posted on 2019.8.17
君が見たまぼろし
悪魔が悪魔でいる限り 天使は天使でいられる 正しさが正しくある限り 狂気の境界線が引かれる (極めて恣意的に) 私はラベリングされる 私に名前が与えられる この世界のどこに、おかしくない奴がいるだろう。正しさはただの多数...
posted on 2019.8.17
我が青春のカリカチュア
ガラス瓶を割って ノートを引き裂いて 思い出の歌を燃やして それでも無傷の世界を憎んだ 勝手に祝福されている季節が 容易く流す光が乱反射して 有象無象の天使達に歓迎される 僕は命を度外視して 悲しいことがある...
posted on 2019.8.17
キルティング
夕闇に染まる帰り道で 汚れた十円玉と一緒に 小さな首が落ちていたもので 縫い合わせてみることにした 不器用なもので針で中指を刺してしまい ああ、と言ったきり言葉が出なくなった 窓越しに快速電車を見送ったあとで 誰かの悲鳴...
posted on 2019.8.17
darling
お願いまだ冥福は祈らずに 薄汚く居残らせておくれよ 今日も懲りずにまた 目を覚ましたんだよ 自問自答は放物線を描いて 私を拒絶し続けるけれども 生きるってさ 生きてくってさ 諸々食ってさ 腐ってくことか それでもやっぱ生...
posted on 2019.8.17
エコー
累々とした手と手と手と 滔々とした舌に飲まれて ─私はついに溺れました─ 誰も助けてくれなかった 誰もみなスマホを見てた 何が悲しいとは愚問です 見上げた星空の何処にも 約束が見つからなかったのですから 孤独は最早 詠う...
posted on 2019.8.17
カーディガン
人はたやすく過ちを犯すね 過ちを過ちと知っていながら 何度も繰り返し過ちを犯して それらを葬ってしまうのだね 人は簡単には変われないと 可能性の芽を摘み取るばかりの 愛と正義を自称する大合唱はやがて 足並みを揃え堅牢な合...
posted on 2019.8.17
シューゲイザー
饐えた銀河の隅っこでうずくまる 私の影を踏みつけて過ぎてゆく人々よ みんなの幸せを願っています 風邪をひいてしまったから 私、赤く腫れた両目で見つめるだけですが 青空のこと 黄色いクラシックカーのこと だいだい色のポピー...
posted on 2019.8.17
多摩川河川敷
僕には、自分が世界にとって異物であるという自覚をして以来、自在に記憶を捨てたり書き換えたりする癖がつきました。 例えば新しい靴を初めて履くときは左からという拘泥を、くだらないとわかりつつやめられなかったこと。モラルという...
posted on 2019.8.17
今日も風が吹く
こんな日はただひたすら閉じていたい このまぶたを かたくなに (誰々がお前を批判しているよ) (誰々がお前をネタに笑っているよ) (誰々がお前を誹謗しているよ) (誰々がそこかしこで) (誰々があちらこちらで) えー、そ...
posted on 2019.8.17
セルゲイの遺書
この世界には二通りの人間がいる 星を産む者と星を食む者だ 欄干のない橋のような人生を それでも懸命に歩き続けた君の 震える背中を遊び半分で押した 白々しい者たちへ 僕が贈るべきものとは何なのか 夜空に星が飾られる夜には ...
posted on 2019.8.17
年縛り
スマホを機種変したので アドレス帳を整理しました もう会わない名前たちを 一括で削除しました 未送信トレイに残っていた あけっぴろげな想いの残滓を 建前と共に飲み干しました 取り返しのつかないことだけが 今も私に苦悩を強...
posted on 2019.8.17
アナベル
気がついた時にはもう 血まみれではなかった しかしながら私もまた 命として立ち尽くして 何度も夕暮れを見送り 涙さえ流した夜もあり そのことをどうしても 忘れることは叶わない この街でこの星で 名前のない場所を 探してい...
posted on 2019.8.17
阿部礼二は僕らを殺し続ける
何が起きた あの日あの時 風が吹いた あの日あの時 それだけだ ただそれだけ アジサイも萎れてしまった (何も考えるな) 鼓動は徹底的かつ正直に脈打つ そんなことはわかっていたのに 何を喚いて叫び求めたところで 机の上の...
posted on 2019.8.17
リサイクル
あなたが教祖に転職したら 私が信者になってあげるね そんな冗談をケラケラ放ち 僕を慰めてくれたお母さん 何も信じられないから 信じられるものを自ら こしらえたいと願った たったそれだけの為に 舌を売り飛ばしました そうで...
posted on 2019.8.17
優しい窓辺に風鈴がひとつ
私は優しい世界しか知らない 仕舞い忘れられた秋口の風鈴みたいに 必要ないと笑われたものばかり両腕に 大切に抱えて暮らしています 夕焼けってあれさぁ 空は火傷してないの だってすごい赤だよ 空は痛くないのかな そんなことを...
posted on 2019.8.15
【断片】 <思いつき>
誰にとっても了解可能な言葉に呪詛は宿らない だからあなたの唇はいつも乾いていたのかしら /いくら舌舐めずりしたところで 満たされることなどなかったね/ だから私は(as 虚しい抵抗)「これ」を並べる ランパトカナル ラン...
posted on 2019.1.17
かけっこ
2019って素数だと思っていたから、ものすごく怖かったの。そこへ673で割れるって、だからあいつは素数じゃないって、教えてくれたのは通りすがりの三毛猫でした。語尾に「にゃあ」とか附いているのかと思ったら、それは流暢な日本...
posted on 2018.12.26
レインツリー
あなたはレインツリー 両手を広げて分裂する あなたはレインツリー 地球を抱きしめて干る なにもかも アイシテル のせいかな テールランプの明滅に 揺らぐ自我を投影して 脳内ではオルゴールが 逆再生でカノンを奏で 苦しいっ...
posted on 2018.12.22
深海魚
宇宙が広いだとか 地球が丸いだとか そんなこと知らない 深海魚は 空の色を知らない そよ風を知らない 満月がほころんでも なんにも見えないから 目覚めを忘れてる 太陽がゲラゲラ笑っても なんにも聞こえないから 安穏を失く...
posted on 2018.12.14
午前3時のスープ
優しいあなたの 心はいつも血まみれ 生きているんだね。 その匂い、私は好きよ 優しいあなたの 血まみれの心に触れ 生きていくんだね。 この味ごと、大好きよ 愛という言葉の正しい使い方を知らないから、とりあえず刻んで干して...
posted on 2018.12.4
出口
どこをどう見ても 出口しかないんだ まだ出たくはない 初めてピアスを開けた日の 鈍い痛みは耳朶が覚えてる 優しくなれない私に代わり 飾りを揺らして泣いている カーテンだらけの部屋に夜が 星を連れてやってきたけれど 誰も光...
posted on 2018.11.28
ギフト
あたかもそれが正当であったかのように貴方は傷だらけで笑う。トレモロを弾く指先に噛みつきたい私の破瓜、それを浅ましいと言い捨てたのと同じ目で。 あたかもそれが正答であるかのように貴方はかさぶたを磨く。いつ剥がれてもいいよう...
posted on 2018.11.27
新宿
みんなに嫌われているのが 新宿という場所だとしたら それ私と一緒だ みんな通り過ぎてくだけで 汚すだけ汚して去ってゆく それ私と一緒だ 街を彩るネオンは苦手だけれど 少しだけ前を向いてくれないか 疲れた顔がよく似てい...
posted on 2018.11.22
紅涙確率
雨はまだ降っていない 街の話だけれど 木枯らしのエチュードで 枯葉たちが踊っている 雨はまだ降ってくれない 心の話だけれど 涙を流せなくなってから 道化がずっと笑ってる 心を開けと人は言うけれども 開いたら開いたで傷...
posted on 2018.11.19
クリアトーン
透明な絶望に色を与えるよりも 既に血が赤いその理由を考える 幻と仲のいいあなたの抱く傷は 私には癒すことができないけど 透明な感情に意味をつけるより 一緒にいることを月並みだけど 運命とか決まりと呼んでみたい お互いの過...
posted on 2018.11.16
イルミネーション
優しさなんて表明しなくても 塩麹に漬けた鶏むね肉を 焼くだけで伝わる想いがある 愛なんて言葉にしなくても 一緒に洗濯物をたたむだけで そばにいる意味は成立する 疲れて帰ってきたら お風呂を沸かすし 喉が渇いていたら ...
posted on 2018.11.15
オリオン座
今年も会えたね、夜空には無常以上に官能的なオリオン座。あらゆる逢瀬を見守っている。あるいは睨みつけている。 どんなに燃やしても消えないのは無責任な恋心。落ちたらみんな馬鹿になる、そういう仕組みだ、今も昔もこれからも。 街...
posted on 2018.11.15
ルルのしっぽ
誰のための眼球か! 考えたこともないくせに 目に映る全てを憎むと 焦燥の中で言い放った君よ アキアカネは憐れむ 眼球のことを心から かわいそうな奴だと そして 君のことを本気で 無知蒙昧な存在だと 優しくなれないのなら ...
posted on 2018.11.15
万が一
万が一、どこかの偉い人が、 「明日は、月曜日です」なんて言ったら! 君は襟を正して出勤できますか? 万が一、どこかの偉い人が 「明日は、9月1日です」なんて言ったら! 君は宿題を片付けられますか? 万が一なんてことは、 ...
posted on 2018.11.15
アザミ
笑顔を売るのが得意な道化にきいた 幸せですか だとしたら それは正しいことですか 凛と咲くアザミの白々しさに 息を飲んだ少女の熟した胸元に ゆでたまご研究家が虫めがねを近づける お嬢さん お嬢さん 破瓜を望むお日様の願い...
posted on 2018.11.15
パンダの哲学
夕暮れの架線 連なる列車の陰に隠れて パンダが寝っ転がっていた 春風にひらひらと 落ちる梅の花びら見ながら アスファルトの上にごろんと これはもしかして非日常ってやつですか? 口当たりはやや偏屈だが 思ったよりドラマチッ...
posted on 2018.11.15
りるりる
りるりる エイプリルは嘘つきの 夜明けに奏でるドルセラ弾き 甘味はどうしたの もっと求めなさいよ 火星が燃える…! りるりる そんな響きと迂遠した湾岸通りに 夕暮れ夢見る死神ごっこ エイプリル君は 明日何人に愛でられるの...
posted on 2018.11.15
私が女の子だったころ
私が女の子だったころ 私にはなんでも空想できて その代りなぁんにも無かったのよ、と彼女は笑った。 彼女に言わせればこの世には 逆回りする懐中時計を 首からぶら下げてブランコを漕ぐウサギがいて いつも寂しい、寂しいとぼやい...
posted on 2018.11.15
あの海
目の前で息絶えた夏を あの海まで連れてった あの日君と見た あの海まで連れてった オレンジ色の車に乗って あの曲を聴きながら 一緒に途方に暮れた あの海は今、 夕凪に誘われて 思考停止中です 空蝉に身を焦がして 猜疑心を...
posted on 2018.11.15
金魚
例えば真白な紙を渡されて 「お好きに描きなさい」 などと言われたら私の右手は萎縮する また譜面を渡されて 「思うままに奏でなさい」 などと言われたら私の両手は萎縮する 泣くほどのことじゃないから そこで流す涙など欺瞞の塊...
posted on 2018.11.15
応答セヨ
変わり果てた声を 聞かせたくて歌っています 卑劣な貴方は耳を塞ぐでしょう その論法で何人葬ったの? 犬が果てている路傍で せっかちに盛夏を待つ青年の こめかみに棲みついた妄想は 彼に新しい刃を握らせた 「こちら、天国方面...
posted on 2018.11.15
夏の終わりとマリー
夏の終わりと君のエコーが 重なったときに蝉は逝く 猫はいそいそ秋支度 落ち葉の衣を探してる 澄まし顔した少女が 君のくしゃみに驚いた マリー、僕は無条件に悲しくなる 嘘をついたね また一つ 嘘をついたね とびきり優しく ...
posted on 2018.11.15
ミックスジュース
ミックスジュースを飲んでみる 悲しくなってグラス割る 1+1を間違える 悲しくなって酒を飲む モモイロペリカン旅に出る 悲しくなって 名前呼ぶ おお そこの君! 忘れものだよ ゴムボール 夜が来てまた朝が来て 期待の次に...
posted on 2018.11.15
ルルよ
愛猫のルルが旅に出たので 僕もそろそろ身支度を始めます 紫煙の向こう側をそろそろ知らなきゃいけないから 君には暗号だけ残しておきます グリル転置式で解けましょう 貴方からの手紙は 燃やしました 宝物しかない倉庫は 燃やし...
posted on 2018.11.15
クラゲ
ここから夢方面へ300kmにある 海には少女が浮かんでいます 水母という名前の あるいは海月という名前の ふよふよと 月夜の晩、ハサミを持った青年が 孤独を切り取り海に飛び込みました それは美しい光景でした と、主張する...
posted on 2018.11.15
「きれい」
ああ、雲が泣きます、怒ります いままでずっと 大切に持っていた 「!」 を白い包装紙と青いリボンでくるんで あなたに届けます 開けた途端に驚いてください いままでずっと 大切に持っていた 「?」 を黒い包装紙と赤いリボン...
posted on 2018.11.15
過去形の花嫁
その日は漢字テストで 初めて100点をとった日で ペシミストのお姉ちゃんが 仰々しく祝福してきた 100点なんてなかなかとれないよ 足の指でソナチネを弾くくらい とってもすごいことなんだよ 海老反りをしながら お姉ちゃん...
posted on 2018.11.15
星座になる
傷を見せ合って 時に舐めあって 浸る感傷にも飾りがついたら 帰るべき場所をやっと見つけた 二人、寂しかったよ 一緒にいても 足し算できない孤独が纏わり付いて 傷をきらびやかにさせたんだ 三拍子から変拍子へ 光の射さない方...
posted on 2018.11.15
予報外れ
心にも予報外れの雨が降ります するとわたくしは もう 孤独を知った気になって かさかさの肌の下で とろとろと血が流れているなんて 信じないことにするのです 母から始めて叩かれた日 父から哀れな目で睨まれた夜 わたくしは ...
posted on 2018.11.15
青と素数
女が感傷に浸り 手首の傷跡をなぞる夜 素数を数えていた男は ふうっと息を吐く それがとても白かったものだから すっかり冬ねとこぼしても 男はメルセンヌ数を逆さにして ひたすら暗誦しているばかり 私は2よ。 孤独の素数。 ...
posted on 2018.11.15
ケーキ屋
(1) ケーキ屋の隣に歯医者がある。僕はなんとなくそれを笑っていたのだけれど、君の住む街では病院の向かいに斎場があるらしいね。 (2) 斎場の隣に焼肉屋ができたと聞いた時には、「無神経」の意味を思わず辞書で引いてしまった...
posted on 2018.11.15
グリーンスリーブス
紅葉が燃えるような美しさに包まれる景色を見た。しかし彼はそれを「葉の色素が死んだ物質の沈殿」としか認識せずに、薄笑いながら鼻歌を歌う。それは確か、グリーンスリーブスだ。 私はその音色にギクリとして、ティースプーンをテーブ...
posted on 2018.11.15
オリオン座
沈黙は美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花 散りました 夜空に煌めくお星様 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的に 彼方へ沈んでいくのでしょう 置いてかないで 目を凝らしていて 明日まで待てる自...
posted on 2018.11.15
回転木馬を想え
容易く祈ってはならないと あれほど言ったのに お前はまた手を組んで 両目をきつく閉じている その隙に僕は薄氷の上で お前の影を盗むのだ お前がこれ以上何も望まないよう それを拒絶するならば 回転木馬のことを想え まわる ...
posted on 2018.11.15
輝き(命名権)
とぷん、とぷん、 君の心臓は面白い音がするね。 ぐらん、ぐらん、 君の自意識はすぐに揺らぐね。 今まで見てきた星の中で もっとも美しいそれには まだ名前がないんだっけ ぱちん、ぱちん、 どこかで何かの爆ぜる音がしている。...
posted on 2018.11.15
血管
こころに血管が通っていたら 私のそれはきっと 太く短くあり それでいて伸縮性に富み 時折ぐるんとうねっては ずどんずどんと感情を吐き出し ぶるると震えることでしょう 寒くて震えるわけではなく 悲しくて震えるわけではなく ...
posted on 2018.11.15
影よ
散々ないがしろにした おのれの影を抱くと そいつはしとしとと泣いており あらためて 可哀想なやつだと思った 鏡で自分を見るとき なるべく微笑むのは そうでもしないと 睨まれることを よく知っているから くたびれた我が影よ...
posted on 2018.11.15
神無月に添える詩
ボロボロと涙が降る夜は、神無月に居残る祈りを未練と呼ぼう。それだけで救われることもあるから、なんてね。 君は無力だ。青春のやり直しをスクリーンに求めてばかりで、性懲りもなくときめいている。それで満たされるほど単純で簡素な...
posted on 2018.11.15
秘密
あなたの寝顔を見るとき、それが真夜中のベッドの上だろうと京王線の中だろうと、私は願わずにいられない。 叶うのなら、もうあなたが苦しむことのないよう、そのままずっと夢の中にいてほしい、と。 伽羅の香りのする欲望は、この季節...
posted on 2018.11.14
citrus in the dark/waltz
私はあなたの傷のありかを知っている。あなたが一番痛がる場所を知っている。知っていながら、そこをえぐる。知っているからそこそ、そこをえぐる。三拍子でえぐる。それが罪になるのなら、もう恐れるものは何もない。失うものといえば太...
posted on 2018.11.14
月兎
「君を、抱いていいの」 まるで罪の告白、或いはあどけない脅迫。それは前奏のないポップスのように明け透けだ。 私は許しを与えるように首を縦に振った。 「本当に?」 疑心暗鬼に支配された言葉。信じられないということは一種の弱...
posted on 2018.11.14
マグカップ(All you need is…)
貴方が寝ぼけ眼で毎朝淹れてくれるコーヒーは、私にとって幸せの香りだ。駅前で買ってくるそれらは、専門店で挽かれてその場で真空パックされる。鮮度を保つために。 私は、たまに貴方を真空パックにしたいと思う。刻一刻といつかやって...
posted on 2018.11.14
プリンセスプロファイル
人魚のことなんだが あいつは嫉妬深くて 海の藻屑になって尚 眼球だけは漂わせて 王子様が老いてゆく その様を炯炯として 睨み続けているのだ 灰かぶりについては 極彩色の復讐を企て 新品のギターを買い しならせる特訓中で ...