第十一章 因果

愛や正義は人間の大好物ですからね。人を裁く時も判ずる時も、そこに愛や正義があれば、否、存在などしていなくてもそれを謳えば、どんな利己的な感情も合理的な凶器になる。そのことを君はわかっていましたね。わかっていて、利用しましたね。有効利用したんですよね。
いいえ、別に責めているわけではないですよ。僕は人を裁かない。決して判じない。そんな資格もないし、そんな心算もありません。ただ、導きが欲しいのなら与えましょう。君が望むなら、君の未来は僕の所有物です。

明日を、夢見ていたのでしょう。輝かしく他者から賞賛される未来を。
何故ですか? そのままでも「他者」の僕から見ればあなたは、十分『幸せ』に見えましたがね。
「他者、か……」
恭介、君の苦悩に歪む顔は、非常に美しい。
美しいか否か。正義か悪かは、それで決まると言っても過言ではありません。
そして君は自らの手で道を選び、僕のもとへ来た。
それが、君の答えならば……僕はただ、受け入れましょう。仮令、それが『罪』と呼ばれても。